第27話-2 奇人伯爵②
『これは彼がシオン王国を建国する前の――僕との出会いの話さ』
『彼は元々ブリタニア王国に住んでいたらしいんだけどとある理由で国にいられなくなってね。国を出ようとしていところで僕とあったんだよ。』
『えっ?何で僕がブリタニア王国に住んでいたのかって?それは僕が静かに暮らしたくてね。静かな森を見つけたから、そこにしたのさ』
『話に戻るけど、彼らは僕の家を覗き込んでいたんだ。恐らく森の中にポツンとあることを不思議がったんだろうね。そして、2人ともちょうど狩りで帰ってきた僕を見るなりまるで不審者でも見るような目を向けてきてね。あの顔は傑作だったよ!』
『だから家の中に入れることにしたんだ。……何でそういうことになるのか?だって、変な奴って思われたままなのは嫌だったし、久しぶりに人と話したかったからね』
『そこでクッキーと紅茶をご馳走したんだけど凄く美味しそうに食べてくれてね。あの時の2人の顔は年相応の無邪気さがあったよ。当時の彼らの年齢かい?確か15歳くらいだったかな?』
『でも、僕には彼らがとても過酷な道を進もうとしているのが分かったんだ。何か顔つきが明らかに年齢に見合ってなくてね。それはお茶の時も変わらなかった。だから、少しでも彼らの力になれるようにって僕の作った魔道具や魔法液薬、史料を渡したりしたんだ。彼らの未来が少しでもよくなるように……ってね」
『でも、後にあの時もっと彼らにしてあげれたんじゃないかと思い悩んだよ。そうすれば……彼らはあんな目に遭わずにすんだのに……ってね』
「さて、今日の話はここまでだ!」
皆が息を呑み、集中力がピークに達したところでセイントジャーマンは手を叩き、話を終わらせた。
集まった貴族達は口々に「続きは?」と言うもセイントジャーマンは話そうとしない。
「え〜っ、ここで終わんのかよ」
いつの間にか話に聞き入っていたグレンが残念そうに洩らすと横にいたジョナサンもうんうんと頷いた。
「それがあいつの手法だ。興味を最大引かせたところで終わらせる。そして、相手をモヤモヤさせる」
「タチ悪いっすね……」
グレンのボヤきにグレイシアは笑った。
「でも、あの話本当何でしょうか?」
エデが悩ましげな顔で言った。まんまと奴の術中に嵌っている。
「それはあいつにしか分からないな」
「だが、それを知る術はないだろうな」とグレイシアが付け加えて言うと頰を膨らませたエデが手に首を回して顔を近づけてきたが、分からないものはどうしようもなかった。
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その後も舞踏会は続き、グレイシアは有益な商談をすることが出来、エデ、アリス、グレン、ジョナサンも楽しめたようだった。
舞踏会が終わり、屋敷へ帰ると疲れた顔のシド、ライオネル、アーロン、シルヴァーナが出迎えに来た。
財務部隊の手伝いは大変でシド、ライオネル曰くアーロンが足を引っ張り大変だったと言ってきたのでこれ以上手間を取らせるなら屋敷でひたすら家事をしてもらうと言っておいた。
ちなみに派遣されてきた財務部隊員は先程帰り、明日別の隊員が来るそうだ。
シルヴァーナには学校での監視を終えた後、襲いかかってきた刺客の動向を警邏庁にカラスのフギン、ムギンを送って調べてもらったが暗殺の天使の一員で間違いないようだった。
その後はミーティングで明日の方針を決めると全員早めの眠りについた。
任務初日にも関わらず様々な事があった1日だった。
こんな調子で先の見えない任務を続けれるのだろうか?
グレイシアは溜息を吐くと目を瞑った。
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翌朝、起床し、朝食を食べると各々は仕事に取り掛かった。
グレイシア、グレン、ジョナサンは制服に着替えると鞄片手に通学路に就く。
道中、マリアンヌと嫌そうな顔をしたディオンに会ったのは偶然でなく、事前に2人の通学時間を調べ上げ、時間を合わせた結果だ。
そして、周囲の注目を集めながら登校し、マリアンヌより後ろの席で授業を受けた。
授業中、窓の外にも目を光らせたがマリアンヌを狙う目は感じなかった。
1限目、2限目は昨日と同じく座学の時間だったが昼休み前の授業となる3限目は実戦的な授業内容だった。
「じゃあ、今からここで実際に魔術を使ってあの動き回る自動人形に攻撃を当てた後、各々ペアを組んで実戦対決をしてもらう」
次の授業現場は教室ではなく、下が土でできている観戦場のトラックのようになっている場所だった。
そこで動き回る自動人形を如何に早く倒すかを競っていくらしい。
ちなみに平均は30秒ほどのようだ。
1人目の番が始まった。
1人目の生徒は魔術詠唱に時間がかかっているせいで自動人形に照準を合わされておらず結果、倒すのに40秒かけてしまった。
その後も授業は続くがほとんどが並の実力で目立った生徒はいなかったが、ドビュッシー、ディオンの実力は中々で共に10秒台の記録を叩き出していた。
そして、グレイシアの番が来た。
グレイシアは落ち着いた様子で前へ出ると自動人形を見据える。
背中に一同の視線を感じるがそんなものは気にはならなかった。
何せ逃げ回る敵を殺すのはいつもしている事だからだ。そこに距離なんて関係ない。
「では……始めっ!」
カミュの合図と共にグレイシアは手を自動人形に向けるとその指から電撃が迸った。
第三階位魔法雷撃系魔術追雷撃。速攻性の高く、目に見える敵ならば一瞬で到達するほどのスピードと追尾性を兼ね備えた攻撃魔術だ。
威力が弱いのが難点ではあるがグレイシアはこれを無詠唱の状態でも即死級の威力に上がるほどの腕前を持っていた。
結果、自動人形は追雷撃を一撃受けると沈黙し、倒れた。
倒すのにかかった時間は3秒。
その驚くべき速さに全員が目を見開くもグレイシアは何てことのないように踵を返した。
そして、これはグレイシアの能力の一端に過ぎなかった。




