第22話 前国王との会食
ルートヴィヒが現れた瞬間、グレイシアとエデは椅子を引きバッと立ち上がった。
7人は一瞬狼狽えるも座ったままでは無礼にあたるということに気付き、続くように立ち上がった。
「ルートヴィヒ14世殿下。本日はこうして御拝謁の機会を賜らせて頂いたことを……」
「そんな堅苦しい挨拶をしなくとも良い。前にも言うたと思うが朕と其方の中じゃないか」
その言葉にグレイシアは頭を下げたまま何か言いたげだったが「殿下の御心のままに」と言うと顔を上げた。
「では、席にかけたまえ」
グレイシアは再び一礼すると席に座ると一同もその真似をして席に着いた。
「こうして其方と会うのも随分と久しぶりに感じるな」
「はい。私も中々時間が取れずこのような形になってしまいました」
グレイシアは申し訳なさげに頭を下げた。
「そう気にしなくとも良い。こうして早急に参上してくれただけで嬉しいものだ」
ルートヴィヒが柔らかな笑みを浮かべた。
「そう言えばエデ嬢と会うのも久しぶりだが、少し見ない間に美しい淑女に成長したものだ」
「お褒めの言葉光栄にございます」
エデが微笑むとルートヴィヒは深く頷いた。
どうやらいきなり本題には入らず前話から始めるようだと察した。
そして、7人が恐れていた事態が起こる。
「ところで革命軍に所属したということを聞いたのだが、彼ら7人は君の部下ということで間違いないかね?」
「ええ、そうです」
ルートヴィヒの興味が7人に向いてしまったのだ。
知らぬ間に無礼を働いて気を悪くさせたりしないだろうか?不敬罪にならないだろうか?など様々な不安が脳裏に渦巻き「しゃべりかけないでくれ!」と声に出そうになってしまうくらいには緊張していた。
「中々元気そうな子達だね。名前を教えてはくれまいか?」
ルートヴィヒが7人の方を向き、話しかけてきた。
目でグレイシアに助けを求めるも「自己紹介くらいしろ」という視線を向けられてしまう。
「はい!私はっ!革命軍遊撃部隊にて副隊長を務めさせて頂いているシド・サクリファイスと申しますっ!」
ガチガチに緊張し、早口で捲し立てるように言ったシドは傍目から見れば大変滑稽に見えるに違いないが少なくとも6人にはそれを笑えるほどの余裕がなかった。
「シド君だね。では、君は何故革命軍に入ろうと思ったのかな?」
「へっ?」
続いての問いにシドは硬直した。すっかり自己紹介だけで終わるだろうと思っていたからだ。
「……私はっ!シオン王国の豪農の息子だったのですが、昔から騎士道物語が好きで騎士になるかことに憧れていました!ですが、この国の在り方は私の理想とする騎士道に反していると思いそれを正すために革命軍に入りました!」
しかし、すぐ硬直を解くと思いの外、流々と話すことが出来ていた。
それを聞くとルートヴィヒはフムと頷いた。
「ちゃんと目的が明確だ。明確な目的を持つということは己の原動力にもなるからね。これからも頑張りたまえ」
「……はい!」
シドは頭を下げると席へ着いた。
その後もルートヴィヒは自己紹介を聞いた後、各々に違う問いかけをしてきた。
一同は緊張しながらも返答し、ルートヴィヒはそれに対し、年長者としてのアドバイスで返していた。それらはどれも的確なものでこれらはきっと7人にとって良い経験になっただろうとグレイシアは感じた。
その後、前菜、メイン、デザートと運ばれてきたので普通に食事を堪能した。
グレンは貴族出身とだけあってテーブルマナーに問題はなかったが残りの6人は予想通り四苦八苦している様子だった。
そして、デザートを食べ終わった頃にルートヴィヒは本題を切り出した。
「今回の依頼についてだが、我が孫娘を狙う暗殺の天使という集団から長期に亘って護衛するということというのは理解しているかね?」
「はい」
「そのために君には学生として学校に通ってもらうことになるのだが……」
ここでルートヴィヒが気まずそうに目を逸らした。
「出来るだけ護衛ということはバレないようにすることは勿論、普段付いている護衛の者とも協力するようにしてほしいのだ」
「普段付いている護衛……ですか?」
今まで聞かされていなかったことだが、相手は王女なのだからそれくらいいて当然だとすぐに思い直す。
「しかし、何故そのようなことをわざわざ仰られるのでしょうか?そのような者がいるなら私は友好な関係を築きたいと思っていますが」
「いや、実はその護衛の者がこの件に激しく反発していてな……」
グレイシアの科白にルートヴィヒは気まずそうに言った。
「正直彼……1人では孫娘を守りきれないということもあるやもしれないと君に依頼を頼んだのだがその者にも代々王女の護衛してきた家系としてのプライドがあるのか中々納得してくれなくてね。半ば強引に事を進めてしまったのだ」
そういうことかとグレイシアは溜め息をつきそうになった。
恐らく王女の護衛を務めるからには名家のお坊ちゃんなのだろう。プライドも高く王女に敬愛もひくは恋愛感情を抱いている可能性もある。そんな間に踏み込むのは龍の逆鱗に触れるようなものだ。
グレイシアは新たな任務が一つ増えたような気がした。
「畏まりました。何とかしてみせましょう」
グレイシアにはそう言うしか選択肢はなかった。
ルートヴィヒは「頼んだぞ」と言いカップに口を付けようとしたところで思い出したように言った。
「そう言えば誰を連れて行くのかは決めているのかね?」
「はい、大丈夫です」
その会話に7人は何か不穏なものを感じるとグレイシアがこちらに時間を向けてくる。
「言い忘れていたが、俺が通う場所は貴族や王族しか通えない学校でな従者を2人ばかり連れて行くことになっている。だから、グレンとジョナサンは俺の従者としてついてきてもらうぞ」
「「えっ?」」
その科白に2人は固まってしまう。
「それと他の者も各々仕事についてもらうが俺はいない。精々頑張れよ?」
グレイシアは不敵な笑みを浮かべると同時に7人は押し潰されそうになりそうな程のプレッシャーを胃に感じた。




