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第1話 彼岸の死神

 「ハァハァハァ……」


 とある邸にて男が走っていた。


 豪壮な服を身に飾った一目で貴族と分かる男だ。


 もちろん、ただ走っていたのではない。逃げていたのだ。迫り来る()から。


 「死んで……死んでたまるものかぁ!」


 だが、男は突如として足を止め、絶望の表情を浮かべ、ただ前を見ていた。


 男の視線の先には、彼が逃げていた存在がいた。


 身長は170cm前後、黒いローブを纏い、顔には長い角をうねらせた獣の頭蓋骨の仮面に自身の身の丈よりも大きい鎌を手に持っていた。その風貌は死神と表現するのが相応しい。


 「くっ……死ねえ!―我が焔よ、煌々と……」


 男の背後に魔法陣が浮かび上がる。


 この世界には魔法と呼ばれる神秘、奇蹟を体現する業がある。魔法はそれを起動させるための要素である魔力を用いて行われる。


 男が起動しようとしているのは魔法の一ジャンルである魔術だ。

 

 だが、男の詠唱は最後まで続かなかった。


 男が呪文を詠唱し、魔術を発動するのに十分なほどの距離を死神は一気に詰め、その喉を鎌で切り裂いたのだ。


 声にならない悲鳴と共に男は膝から崩れた。声の代わりに血の泡が際限なく吹き出る。


 もがき苦しむ男の顔を確認すると死神は興味を無くしたように背を向け早々に去っていった。


 その背に男は手を伸ばし声にならない声で呟いた。


 「彼岸の……死神……」


 ………………………………………


 見渡すとそこは港街だった。


 港街の名前はアストウィック。


 シオン王国東部に位置し、漁業や貿易業が盛んである。町自体はそれほど発展していないものの輸入品や魚が卸業者を介さず売られるため物価が安く、さらにこの地を治めているグレース伯爵の優れた治政によって国内でも住みやすい町の1つとなっている。


 「しばらくはここでゆっくりしていきたいな」


 そう口にしたのは鍔が雪結晶の形をした刀を脇に差し、首にも同じ雪結晶の形をした首飾りを付けた美しい白髪に線が細く、女性と見紛う顔立ちの美青年だった。地面に付きそうなほど長いコートに股下の分かれていない裾が輪になったゆったりとしたパンツ、そしてブーツを履いており、色は上から下まで黒色に統一されている。


 「取り敢えずどこかで美味しい物食べようか」


 青年は飲食店を探し始めた。辺りを見回すとどこも活気づいており、市場にはあらゆる海の幸、野菜、日用品が揃っていた。


 「色々あるな。あとで見て回ろ」


 そして青年は港近くの酒場に入ることにした。


 店の扉を開けると店主と思われる男の「いらっしゃい!」という威勢のいい声が響いた。テーブルはどこも満席であり、昼間だというのに漁夫たちが酒を片手に騒いでいる。


 「えっと、兄ちゃんだよな?」


 「はい、男ですよ」

  

 店主の尋ねに青年は微笑みながら答えた。


 「すまねえすまねえ、綺麗な顔してたもんだからよ」


 「いいんですよ、よく間違われるので」


 言外に女みたいだと言われても本人の言う通り慣れているのか青年は機嫌を損ねた様子はない。


 「で、何食べる?」


 「じゃあ、フィッシュパイと魚介の酒蒸しにムニエルをお願いします」

 

 「ウチの結構量あるけどそんな3つも大丈夫か?」


 「はい、結構食べる方なので。あとお酒も一杯頂きます」


 「あいよ、って兄ちゃん成人なのか?」


 「もう18なので大丈夫ですよ」


 「そうか。じゃあ、少し待っててくれ」


 店主は食材を取り出し、調理に取りかかった。


 「兄ちゃん、隣いいか?」


 待っていると先客である漁夫が話しかけてきた。少々酒の臭いがキツい。


 「どうぞ」

 

 男はよっこらしょと隣に腰掛ける。


 「兄ちゃんはここは初めてか?」


 「ええ、とてもいい町ですね暫くは此処に滞在していきたいです」


 「だろ~?王都なんかに比べたらまだまだ田舎町だがメシも美味いし、安い!住むにはもってこいだぜ」


 「俺もそう思います。俺、各地を旅してるんですけどその中でも5本の指に入りますね」


 「だよな!グレース伯爵の治政で悪い噂も聞かねえし……っと悪い噂で思い出したんだが隣町で彼岸の死神が出たって知ってるか?」


 「彼岸の死神が?」


 彼岸の死神。それはシオン王国を中心に要人や貴族の暗殺を行っている殺し屋のような存在だ。五代英雄の1人である彼岸の魔術師ダンテ・ポルティナーリが所有していた失われ神具デスサイズを扱い、その強さは万の軍勢にも匹敵するという。


 殺された者は数多いるがその殆どが黒い噂しかり、権力を傘に平民を苦しめていた者が多いため、彼岸の死神を英雄視する者も多い。


 そしてその正体については様々な噂が飛び交っている。


 死霊術によって生み出された屍人(アンデッド)だと言う者。


 本物の死神だと言う者。


 初代所有者であるダンテ本人だと言う者。


 そのダンテの子孫だと言う者。


 まあ、ともかく常人でないことは間違いない。

  

 「隣町治めていた子爵様一家、護衛や使用人含め皆殺しだとよ」


 「それはまた派手にやりましたね」


 「最近この近辺で彼岸の死神の殺しがやたら多いからな。もしかしたら次はこの街に来るんじゃねえか……なんて思ったりしてんのよ」


 「しかし、彼岸の死神の暗殺対象はどれも悪人だと聞きます。グレース伯爵はそれには当てはまらないのでは?」


 「まあ、あの方はそんな噂は聞かねえよな。表向きはな……」


 「どういうことですか?」


 漁夫の思わせぶりな発言に青年は疑問符を浮かべる。


 「いや、何でもねえよ。いい顔した奴でも裏の顔を持っていたりする奴もいるだろ?だからもしかしたらと思っただけだよ」


 「はあ……」


 「悪いな辛気臭い話しちまって。まあ、アストウィックを楽しんでいってくれや」


 男はそう言うと席を離れていった。


 「お待ち遠さん」


 ちょうど注文していた料理たちが運ばれてきた。


 「はい、あと酒」


 最後に酒が置かれたところで青年はナイフとフォークを手に摂った。


 まずはフィッシュパイ。パイのサクサクとした食感が大変こおばしく、そこへ魚の油が溢れ、食欲を掻き立てる。フィッシュパイを3分の1ほど食べたところで魚介の酒蒸しの皿を寄せる。こちらは魚介のエキスがよく出ており、余計な味付けをしていないので旨味がより感じられた。これは酒が進む一品だと感じつつ、酒を呷る。そして、次はムニエルをナイフで切るとフォークで口へ運ぶ。バターの味がしっかりしていながらもしつこくなく、魚の淡白な味わいが楽しめる一品だった。


 僅か10分で完食すると美味しかったと代金を払い店主に見送られながら青年は店を出た。


 ………………………………………


 その後は市場を回ったのだが思っていたより魅力的な物が多く気がつけば夕暮れになっていた。


 「少し買い過ぎたかな?」


 青年は大きな袋を手に抱え呟いた。

 

 「そろそろ宿を探さないとな……」


 青年が袋を抱え直し、歩き出そうとしたその時。

 

 「止めて下さいっ!」


 突如、女性の叫び声が聞こえた。


 声の聞こえた方へ走って向かうとそこには1人の少女を柄の悪い3人の男が取り囲んでいる光景が目に入った。


 「こんなトコで女の子が1人でいちゃいけないよ~?」


 「俺らと一晩遊んでくれよ」


 「ほら早く行こうぜ~」


 見て見ぬ振りなど出来るはずもなく、青年は荷物を置くと「おい」と声をかけた。


 「これは警告だ。その子から離れろ」


 一瞬、男たちは警戒態勢に入ったが青年の姿を見るとニヤニヤと笑みを浮かべた。


 「何だコイツ?一瞬女が来たのかと思ったぜ」


 「それだったら良かったんだけどな」


 男たちは緊張感のない様子でゲラゲラと笑った。


 「もう一度言う。その子から離れろ」


 「聞こえねえな!」


 1人の男が青年に殴りかかった。


 だが、青年は男の拳をかわすとその腕を掴み、両足を蹴り上げると勢いよく腕引っ張った。男の体は青年の頭上を一回転するとそのまま地面に叩きつけられた。


 「がはっ!」


 2人の男は驚愕の表情で青年を見ていた。何せ自分より一回り大きな男を苦もなくねじ伏せたのだから。


 「手加減はしてやったが大丈夫か?生きてるか?」


 「なめんじゃねえ……まだ終わらねえぞ……」


 男は苦悶の表情を浮かべながらも青年を鋭く睨み付ける。


 しかし青年は意に介した様子もなく「そうか」と呟いた。


 「なら眠れ。―痺れろ」


 次の瞬間、男は断末魔と共に体を激しく震わせ意識を失った。


 「な、何しやがったテメエ!」


 「まさか……魔術!?」


 青年が使用したのは第一階位魔法雷撃系魔術、雷電(サンダー・ボルト)。触れた相手に電気を流し込む魔術である。殺傷性はないが主に護身用として使われる。


 「チッ、覚えてろよ!」


 男は捨て台詞を吐き、背を向けて走り去ろうとする。


 「ガ……」

 

 爆音と共にもう1人の男が吹き飛んだ。その様子を最後の男は状況が飲み込めないといった表情で見ていた。


 「第二階位魔法火炎系魔術、火球(ファイア・ボール)。だが、安心しろ。火傷なんかして見た目はボロボロだが気絶してるだけだ」


 「おま……何してんだよ……」


 「何って、悪いことした奴らへの授業料の取り立てだが?それともお前、このまま逃がしてもらえるとでも思ったか?」


 嘲笑うように青年は言った。


 そこにいたのは愛想良く漁夫と談笑し、料理に舌鼓を打ち、市場ではしゃいでいた青年とはまるで別人だった。


 「でも、まだ何もしてねえじゃねえか!」


 「未遂って知ってるか?やってなくてもやろうとした時点で駄目なんだぞ?それにこれが初めてという訳でもあるまい?」


 「クッ……頼む!許してくれ!もうしねえからさ!」


 男は座り込み地面に頭を擦り付けながら許しを乞うが青年は変わらずゴミでも見るかのような目を向けていた。


 「おいおい。何も命まで取るとは言ってないじゃないか。寧ろこの程度で済むことを有り難く思えよ。大人だろ?」


 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」


 「じゃあ、ちゃっちゃと済ませるか。怖いことはすぐ終わらせた方がいいだろ?」


 青年は男に手を向けた。


 男は目に涙を浮かべ「あっ……あっ……」と渇いた声を上げるだけで逃げようともしない。正しくは腰が抜けて逃げられないだけだが。


 「さあ、授業料の取り立てだ。―爆ぜろ」


 次の瞬間、男は爆発と共に宙を舞った。


 宙を舞った体は勢い良く地面に叩きつけられピクリとも動かなかった。


 哀れな男の一部始終を見届けると青年は興味を無くしたような目になり、クルリと背を向けた。そして、座り込んでいる少女に歩み寄る。


 「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」


 青年は先ほどの冷めた表情とは打って変わり、優しい笑みを浮かべながら少女に手を差し伸べた。


 「は……はい」


 少女が恐る恐る青年の手を取る。そして青年は少女をゆっくりと立ち上がらせた。知り合い以外と話すことに慣れていないのか落ち着かない様子である。


 「あの……危ないところお助け頂きありがとうございます」


 「人として当然のことをしたまでですよ。ところで、もしかするとあなたはグレース伯爵のご令嬢ではないのですか?」


 「えっ……何故ご存じなのですか?どこかでお会いしたことでも……」


 「いいえ?お目にかかったのはこれが初めてです。着ている服装に綺麗な髪に肌、先ほどの立ち上がった時の所作から高貴なご身分の方だと判断致しました」


 「たったそれだけで……あなたは聡明なお方なのですね」


 少女が驚きと感嘆の混じった声で言った。


 「いえいえ、少し考えれば誰にでも判ることですよ。それにしても何故あなたのような方がこのような時間に護衛も付けずにお1人で?」 


 「それは……私箱入り娘でしてなかなか外に出る機会がなくて……だから父の目を盗み外にこっそり出たんです。すぐに帰るつもりだったんですけど気がついたら夕暮れで……」


 少女は恥ずかしそうに顔を俯かせた。そんな彼女を青年は微笑ましいといった様子で見ていた。


 「そうでしたか。なら、私が家まで送り届けましょう」


 「えっ、そんな……そこまでしていただかなくても……」


 「こんな時間に女性を1人で歩かせる訳にはいきません。先ほどがような輩がいないとも限りませんしね」


 少女はしばらく考えた後、申し訳なそうに「よろしくお願いします……」と答えた。


 「私が責任を持って送らせていただきます。では、行きましょうか。えっと……」


 そこで少女は自己紹介をしていなかったことに気がついた。


 「申し遅れました。私、グレース伯爵の長女、エリザベス・グレースと申します」


 エリザベスは自身のスカートの裾を持ち上げ、お辞儀をした。


 「エリザベス様、ですね。私はグレイシアと申します。ただの冒険者です。どうぞ以後お見知り置きを」


 グレイシアは右手を胸に置き、恭しく頭を下げた。


 ………………………………………


 「はぁ……もうすっかり夜ね。皆心配してるかしら。それともお父様はカンカンね……」


 「その時は私も一緒に謝りましょう。きっと許していただけるでしょう。我が儘は年頃の淑女レディの特権ですから」

 

 日はすっかり沈み、辺りは暗く、外灯と家の灯りだけが煌々としている。あれだけ賑やかだった町がすっかり静まり返っていた。


 「ありがとうさんございます。あっ、見えましたわ」


 指差す先には目を見張るほどの豪邸があった。今までも貴族の家は多く見てきたが、それよりも少しばかり大きい気がした。やはり、貿易業は儲かるなのだろうかと考えていると豪邸の前にエリザベスの父、グレース伯爵と思われる表情に余裕のない男性とその使用人であろう女性たちが立っているのが目に入った。


 「お父様ー!」


 エリザベスが手を振りながら父の下へ走っていく。

 声に気づいたグレース伯爵は娘の姿を捉えると表情を綻ばせ、エリザベスに駆け寄った。


 「お父様!」


 胸に飛び込んでくるエリザベスをグレース伯爵は優しく抱き留めた。


 「リジー!良かった……」


 再度エリザベスを抱きしめるとグレース伯爵は安堵の溜め息をついた。その様子を見ていた使用人たちも良かったと言った表情を浮かべていた。


 「リジー、この方は?」


 グレース伯爵は少し離れたところで再会劇を見守っていたグレイシアに気がついた。


 「グレイシア様という方で私の危ないところを助けてくださった上に此処まで送ってくれたの」 

 

 「そうでしたか……我が娘を助けてくださってありがとうございます」

 

 グレース伯爵は深々と頭を下げた。


 「いえ、お気になどなさらず」


 グレイシアは穏やかな表情で言った。


 「何かお礼をさせていただけないでしょうか?」


 「お礼ですか……では、何処かいい宿を知らないでしょうか?まだ今夜の寝床を見つけれていなくて」


 「宿、ですか。この辺りにはありませんね。もう少し遠く歩けばありますが行ったとしてももう空いてないかもしれません」 


 「そうですか……早めに部屋と取っておくべきだったな……」


 グレイシアの脳裏に野宿の二文字が浮かんだ。


 「お父様、ウチに泊まっていただくのはどうかしら?」


 「えっ?」


 グレイシアは思いがけぬ提案に素っ頓狂な声を上げる。


 グレース伯爵はその提案に顎髭を触り、少し考えるような顔した後、いいでしょうと答えた。


 しかし、それに一番狼狽えたのはグレイシアだった。


 「そんな恐れ多いです!私、野宿には慣れっこですからそこまでしていただなくても……」


 「娘の恩人をそのように無碍に扱いたくはありません。ここはどうぞ、泊まっていただけませんか?」


 グレイシアは腕を組み、困ったように唸るがグレース伯爵の圧(?)に圧されると諦め半分、申し訳なさの入り混じった声で「ではお言葉に甘えさせていただきます……」と答えた。

 

 「分かりました。ではどうぞ中へ」


 グレイシアは肩身の狭さを感じながらグレース伯爵邸に上がった。


 豪邸の中はそれに相応しい豪奢さだった。壁には如何にも高価そうな絵画が飾られ、天井には煌びやかに輝くシャンデリア、床には動物の毛皮で作られた絨毯と贅沢の限りを尽くしたまでとはいかないもののかなり良い暮らしをしているということは誰の目から見ても明らかだ。


 長い廊下を歩き客室へ案内されると「夕食の準備ができるまでもう少々お待ちを」と此処まで案内してくれた執事であろう老紳士に言われ、くつろぐことにしたが、ベッドに身を投げ出し、その心地よい感触に浸っていると眠くなってきたので身を起こし、昼間、市場で買った物を広げ始めた。


 すると10分ほどするとノックが鳴り、先ほどの執事が呼びに来たので執事の案内のもと食堂へ向かった。


 食堂は中央に総勢20人は座れるであろうテーブルが置かれ、その上には一点の曇りも無く磨かれたシルバー、食事を彩るフラワーアレンジメントが置かれていた。椅子には既にグレース伯爵、エリザベスそしてそのグレース伯爵夫人と思われる美しい女性がいた。伯爵が夫人を紹介し終えると料理が運ばれて食事が始まった。前菜、メイン、デザートどれも大変美味であった。


 食事中、グレイシアは自身の旅話を話したが、箱入り娘のエリザベスにとってはどれも興味深い話だったらしく好評だった。


 食事後、グレイシアは浴室を借りさせてもらったが、シャワーを浴びるとさっさと部屋に戻り、先ほどのように買った物の確認や武器の手入れしているとエリザベスが尋ねてきた。もっと色々な話を聞かせて欲しいと頼んできたので旅の話の他に自身が得た知識や偉人や伝説の逸話を話すととても楽しそうに聞いていた。

 

 「そんな話があるのですね!」


 「ええ、そこで発見された遺跡からは……」


 「コンコンコン」


 ノックが鳴り、扉が開くと執事が顔を覗かせた。


 「エリザベス様、そろそろお部屋にお戻り下さいまし」


 「え~、もう少しだけ……」


 「あまりお客様にご迷惑をかけてはいけまんよ。それに旦那様に見つかると怒られてしまいますよ」


 「む~……」


 「リジー、続きは明日にしよう」


 頰膨らませるエリザベスを宥めると「分かりました」と言いながらも名残惜しそうに扉へ向かっていった。


 因みに呼び方がエリザベス様からリジーになっているのは本人からのお願いのためだ。


 「それではグレイシア様、おやすみなさい」


 「おやすみなさい、リジー」


 扉までエリザベスを見送り、執事と共に去っていく姿を確認するとグレイシアは扉を閉めた。


 「さてと……俺もそろそろ寝るか」


 そう呟くとグレイシアはベッドに入り、目を閉じた。


 寝静まり、閑散とする夜。殆どの者が眠りに就き、町には人はおろか灯りももう点いていない。


 そんな静寂に包まれた町に1つ、黒い人影が歩みを進めるのが見えた。


 その人影はグレース伯爵邸の前で足を止めると仮面から覗かせる爛々と輝いた目を向けた。

 おはようございます。こんにちは。こんばんは。 

 はじめまして。終夜翔也と申します。

 まず、この作品を読んで頂き誠にありがとうございます。貴方の1pvが私の創作意欲と糧になります。

 そして、読者の皆様方に一つお願いがございます。

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