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無題01  作者: 瀬戸内なずな
#第一章【指示待ち人間からの脱却】
5/22

#004 『異世界ホームズ(笑)』

「はい。ご主人様は探偵……ということになります」


 マジっぽい。


 『探偵』という職業は聞いたことがある。刑事達の捜査に割って入って、類い稀な推理を働かせ難事件を解決へと導く文学作品のエース……の事だよな?


 正直イマイチわかっていない。実際は自ら事件を捜査することはなく、浮気や探し物とかの依頼を受けて動く……って話を聞いたことがあるけど、したら探偵って超地味じゃね?


「ちょっと訊きたいんだけど」


「あ、はい」


「探偵って、事件捜査する系の探偵なんですか」


「はい。事件……と言いましても、どちらかというとその調査です。何があったか、どうしたのかを調べて依頼主に報告するものかと」


 やっぱそっち系か。


 地味やん。聞きしにまさる地味さやん。


「え、いまならこの職変えられますよーみたいなのって」


「無いですね」


「無いですか」


 マズい、詰んだ。


 これから先ルナに迷惑かけまくる未来しか見えないんだが……?


 しかし、異世界だと思って完全に舐めてた。こうなった以上俺は探偵を極めなければならない事になる。


「はぁ〜……面倒くせぇ……」


「はい?」


「あぁいや、何でもないです」


 思わず本音が出てしまった。ここで恥を晒しては格好も何にもならなくなると、俺は申し訳程度に問いかける。


「じゃあ……ルナは、主人が探偵で良いの?」


「え、あぁ……はい。もちろんです、ご主人様であれば喜んで」


 ルナさんマジで女神だな。思わず目頭が熱くなる。


「それでは私は、ご主人様のメイドをすればよろしいのでしょうか?」


「え、あぁ……そうなるな」


 雇い主も何も主人が俺なので、必然的にそうなってしまう。

なんかここに来てから男としての名誉というかそういうのが一切無くなった気がする。元から無かったけど。


「はぁ……まあ俺の事は良いとして、これでビザ登録完了か?」


「いえ、これからビザを頂けるかと」


 あ、やっぱりこの紙がビザじゃなかったんだ。


「ふふっ、少々お待ちくださいませっ」


 会話を聞かれていたのか、猫耳職員は子供らしい笑顔を浮かべている。そして彼女はルナからサインをされた紙を受け取り、カウンターの奥へと消えていってしまう。


 残された俺は無意識のうちにため息をつく。


「ど、どうされましたか?ご主人様」


「ん?あぁ……」


 気にかけてくれるルナには申し訳ないが、異世界で探偵などという地味職に就くとは思っていなかった。自信がない───というか面倒くさいのだ。それ以前に、


「探偵ってさ───ぶっちゃけどう、この世界での評価っていうか」


「評価……といいますと?」


「いや、天職発表の時にルナが微妙そうな顔してたから」


「えッ……私、そんなつもりは」


「いや別に大丈夫。慌ててる姿も可愛いから許す」


それはどうでもいいのだが───探偵がどういう立ち位置の職種なのか知りたいのだ。


「探偵の評価……ですか、この世界ではあまり際立つものではありませんね」


「あ、やっぱり?」


「地道な捜査が基本ですから」


「そうだよなー……」


思った通りだった、ある意味、俺にとっては結構厳しそうな仕事になるだろう。


「探偵って……俺に出来るもんなのか?」


「えっ……」


 思わずルナに聞く。現時点で相談できる相手という彼女しかいない。


「ご主人様……、もしかして、自信がないのですか?」


 ぎくっ。


 なんか俺の心情めっちゃ見透かされてるんだが?


「あ、いや。その……何というか」


「大丈夫、諦めるのはまだ早いです。ステータスが高い場合もありますから」


「ステータス?」


「はい。成長するにつれて上がっていく、言うなれば社会地位のバロメーターです」


「なるほど……じゃあ、それをうまく利用すれば」


「はい。職を全うすることもできるかと」


 初期のステータスで変わってくるのか。まぁ地位が高ければそれなりに信頼されて依頼者も増えるのだろう。早くから安定した仕事が得られるのはいい条件と言える。


「お待たせしました!こちらがビザになりますっ」


 受付の猫耳職員が戻ってくるなりビザを渡して来た。

それは俺の想像と違う、カード位の大きさの本だった。


「へぇ〜、これが……」


 そう言って俺はビザを開く。



─────────────────────

|

| 名前:シドウ=ユウスケ

|

| 性別:男性

| 種族:人間

| 職業:探偵

|

| LV :1

| HP :100

| STR:80

| ATK:20

| VIT:50

| DEF:40

| EXP:20

|

| 特技:なし

| 総評:F

|

─────────────────────



─────────────────────

|

| 名前:ルナ

|

| 性別:女性

| 種族:人間

| 職業:メイド

|

| LV :100+2

| HP :550+32

| STR:100+21

| ATK:240+11

| VIT:200+6

| DEF:140+9

| EXP:630+38

|

| 特技:なし

| 総評:S

|

─────────────────────



 どうやら書かれているスキルは読めるようだ。それにしても……気になる点が幾つもある。


「なぁルナ、このレベルがプラスになってるのって上がってるんだよな?」


「はい。そうなります」


 なるほど。だがここでは魔法は使えないし、兼ね合い的にもルナの言っていたようにレベルと言っても社会的地位が表されているのだろう。


「この特技ってのはどこで得られるんだ?」


「それは、誰かに教えてもらうのです。探偵職なら同業者に教わるのが普通ですが……まぁ教わると言っても一緒にいるだけで、ある程度は身についてくるものです」


───そんなもんか?まぁ少しなら身につくだろうが。


「じゃあルナも教えてもらうのか?」


「いえ、私はご主人様に仕える事が務めです故、そういった事は致しません」


「あ、そうすか」


 従順でいてくれるのは嬉しいけど、これじゃ逆に恐縮してしまう。


「で、そろそろ突っ込んでもいいかな」


「はい」


 さっきからずっと思っていたことを言わせてもらう。


「いや、何でそんなレベル高いんですか!?」


「えっ?……これは私のような高齢のメイドでは低値のはずですが……」


 ん?高齢?


 俺の勝手な印象として見かけ年齢は10代前後といったところだが……?


「……私、1324歳なものでして」


「はぁ!?」


 いやいやいや。この容姿で1324歳とは……この世界の化粧メーカーのスキルは計り知れないものなのだろうか? まぁ多分そうじゃないんだろうけど、どっちにしろ化け物レベルだということは分かる。長く生きているだけに社会経験も豊富なのだろうか。


「こんな老いぼれの役立たずで幻滅してしまいましたか……?」


「いやそれはない。大丈夫」


 大丈夫なんだが、問題はそこではない。


「ルナさん、その年齢でSランクとか……君、本当に人間?」


 怪訝ながらも質問する。我ながら大変失礼な問いかけだと思うけど、ご主人様だと思って許してほしい。


「もう、ご主人様ったら……これでも私は人間ですよ」


 人間なんだ。てか、人間ってそんな長生きできる生き物だっけ?


 俺なんて同種でもFランクですが。


 しかしここは基本なんでもありの異世界だ。そう考えると別に1000歳2000歳の人間がいたところで特に不思議はないのかも知れない。そう、何しろ異世界だから。


「そしたら老けているって言うよりも、若く見えるって言ったほうがいいんじゃねえの?」


「えっ、それは私の考え方が古かったからでしょうか……」


「……ルナ。それ以上自分を卑下しないでくれ。俺の方が惨めになる」


「はっ、はい」


 それで流石にルナが卑屈になることはないだろう。とりあえず気を取り直して再びカウンターに向かう。


「それじゃ、このまま依頼をお受けになられますかっ?」


 猫耳職員は相変わらずの弾むような口調で尋ねる。一応ルナのスキルが比較的高かったので鬱する事はないが、主人としてもきちんとした依頼を確保しておきたい。


「じゃあそうするよ。壁の紙から選べばいいのかな?」


「はいっ! 探偵の方への依頼は柱の右にございます」


 壁に近寄ると、手書きの依頼が罫線に沿って書き連ねられている紙があった。

これが探偵の依頼か、だいぶ多いな。


「じゃあどうする?まずは簡単なのから行くか」


「私もそう思います。スキルを学ぶためにも優しい依頼が良いでしょう」


 ルナのスキルがあるとは言ったものの俺もまだ初心者だ。金を稼ぐためにも一応基礎は固めておきたい。ゲームの要領でやっていけばあながち簡単かもしれない。


「───ご主人様、こちらはどうでしょうか」


「何だ、それ」


 全く読めん。なぜビザの文字が読めたのか謎でしかない。


「猫探しの依頼です。こちらは比較的、優しめの内容になっています」


「猫探し……」


ここじゃ亜人の猫もいるし、一応動物の猫もいるのか。


「───って、いきなりの依頼だけどそれってどんな感じなの?」


「猫探しです」


確かに猫探しなんだろうが、そういう事じゃない。


「うーん……貴族からの依頼という事はわかるのですが、詳しくは実践しない限り」


「貴族からの依頼」


飼い猫を主人の元へ返すため、とかだろうか。


「いえ、こちらは猫を探して元へ返すだけですが、レベル10くらいにならないと受けさせてもらえません」


 レベル10って……そんなに高いのか、サラっと凄い依頼受けようとしてない?


 俺ランクCのヘボ探偵だぞ?


「じゃあこちらの依頼をお願いします」


「はいっ! 承りました〜」


 え、えぇ───……


 俺の初陣、割と難易度高くないか?


「もちろん、今回は依頼主様が貴族の方ですから給料も上増しされるかと」


 それでか。まぁ金を稼ぐために───と言ったのは俺だが、いきなりからの依頼となると不安でしかない。


「それでは、連絡を致しますのでお待ちくださいませっ」


 そう言って受付の猫耳職員は再びカウンターの奥へ行ってしまった。

多分、その飼い主へ探し手が見つかったとでも連絡するのだろう。


 う〜ん、色々と話がうまく行ってしまっているのは気のせいか?


「お互い初めての依頼ですが頑張りましょう!」


「あ、ルナも初めてだったのか」


 マジかよ。確かにメイドの仕事は始めたばっかだけど……。

まぁ、ルナがやる気ならこっちもやる気にならないと始まらない。


「とにかく、やるっきゃねぇ様だな」


 仕方ない。ここまで来たならと俺は心に決める。


「なってやろうじゃねぇか───異世界の、シャーロック・ホームズにな」


「はい?シャーロック……とは何でしょうか?」


「大事な決意の瞬間を台無しにしてくれてありがとう!」

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