藤崎八雲の就活①
「俺は、藤崎八雲21才。何の変哲も無いどこにでもいる大学生さ!」
否、彼は狂っている。
見た目こそ平凡である。
クラスに3人は居そうな文化系の冴えないメガネ。
学園もののドラマで、一言も話さずに最終回を迎えてそうなメガネ。
騎馬戦で、騎手になることは愚か、前馬にすらなれないメガネ。
給食のフルーツポンチを御代わりしたいけど、注目を浴びるのが怖くて席から動けないメガネ。
ごめん、言い過ぎたね。
しかし、そんな彼から時折狂気が垣間見える。常軌を逸した思考から生み出される珍行動。彼はどこかおかしい。
今もほら、誰と喋っているんだい、八雲!
君は今、自分の家に1人。話す相手なんていないだろう?
八雲の独り言は日常茶飯事。
これは、そんな不思議な青年「藤崎八雲」の物語。
八雲は、現在大学3年生。後10日もすれば就活が始まる。それなのに、八雲は自分が何になりたいのか分からない。かと言って、職業について調べてみたりするわけでもない。
どうせ流れに身を任していれば、何処かしらの企業に就職出来るだろうと考えている。八雲は自分の行く末を気にも留めていないのであった。
15日後…
八雲はある会社にエントリーシートを提出した。菓子業界の大手に君臨する「菓子の美田園」である。
菓子の美田園 エントリーシート
①名前: 藤崎八雲
②年齢: 21
③学生時代頑張ったこと:アルバイト
④自己PR: 爪の形が綺麗だねとよく言われます。
⑤志望動機:私が貴社を志望する理由は2つある。1つ目は、お菓子が好きだからである。特に、貴社が販売するポテトスティックは、美味である。2つ目は、貴社の名前である。美田園という名前が醸し出す高級感は、他社にない魅力の1つである。
⑥卒業論文のテーマと内容について教えてください。(200字以内でお願いします。)
テーマ:「便意を催してコンビニに入った時に限って、友人に遭遇するメカニズムとそれに対する打開案」
内容:「外出中、トイレに行きたくなると、私たちはコンビニに入る。なぜなら、コンビニは、庶民の馴染みの店であり、気軽に中に入れるからである。
そして、店の入り口からトイレまでの距離が近いのも理由の1つだ。コンビニを見つけさえすればトイレまで辿り着くのは容易である。
しかし、なぜだろう。私たちが、便意を催してコンビニへ入った時に限って、悪魔と示し合わせたかのように知り合いが居るのである。
あいつらは何なんだ?
私たちが腹痛を我慢する姿を楽しみに来たのか。将又、私たちが排便しようとするのを邪魔しに来たのか。商品棚を真剣に見つめる知り合いの姿がニヤついているように見える。
こういう時、皆ならどうするんだろう?
恥ずかしさからこのコンビニは諦めて、他のトイレがある店を探すのか?
知り合いにバレないことを祈って、忍び足でトイレへと直行するのか?
それとも、知り合いと軽く世間話をしたあとフラッとトイレへ消えるのか?
実際、こんなことを考えているうちに、私は、コンビニの入り口で漏らしていた。
便意から解放されてスッキリしたさ。でも、知り合いは、私の無様な姿をしっかりと見ていた。そして、他の知り合いにも言いふらされて、私の数少ない友人はいなくなった。
でもいいんだ。人間関係のしがらみから解放されて「スッキリ」したから。
上手いこと言えたぜ…
やかましいわ。
打開案:「野糞しとけば良かったくね。」
八雲が提出したエントリーシートである。
⑥の項目で大幅に文字数を超えてしまったため、後に続く⑦、⑧、⑨の項目を書く事は出来なかった。
結果は言うまでもない。合格である。
えっ?合格?
八雲は無事書類選考を通過し、一週間後に行われる1次面接への参加資格を与えられた。
常軌を逸した八雲のエントリーシート。
彼は今日も狂気じみている。
完全、即興なので、ボロが出るかもしれません。大目にみてください。(笑)
ノープランですが、流れに身を任せて、藤崎八雲の不思議な人生を描いていきたいです。皆様、よろしくお願いします!