表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

バトルしてみよう

都会に戻ったある日のこと。


ライバルのACの襲撃である。

向かいにある店舗から地を這うようにしてやってくる人影が3つ。

影はBへ向かって松明を放る。

放物線を描くそれは狙い違わず2階の窓ガラスを破壊して店舗に放り込まれる。

號と外からの強い風が炎を拡散させて、あちらこちらに燃え広がった。

店内にいた人々が逃げ惑う。

火の粉が舞い散る店の入り口は人が押し寄せ、我先にと出ようとした。

だが、

「うわー!?」

外から入り口を横列に並んだ奴らが阻む。

なで斬り、である。

入り口から出ようとする的を切るだけの仕事。

物足りなそうな雰囲気をしたACの従業員共は訓練された殺人鬼へと成り果てていた。

奴らに正義なし。

苛烈なる客の奪い合いに巻き込まれた者たちはすべて肉塊と成り果てる。

前門の炎、後門の刃。

相対する2つの選択肢。

しかし、結果は一つ。

全き死である。


「どーすんのよ、これ」

炎にゲホゲホ咳き込みながら、同僚の女性が青ざめた顔で呟いた。

「どうしようもないネ」

外国人のアルバイトも入り口と店内を見比べている。

静観していた私もここで岐路に立たされる。

雨女と指さされるか、プライドを守って死ぬか。

父の薫陶を受けた私の選ぶべき答えは一つ。

生きる、である。

頭の中でカチリとスイッチが入った。


手をかざし力を発動する。

くもり記号が現れ、雨へと変化する。

刹那、私の手から高圧の放水がなされた。

発される水流に、階上へと続く炎の勢いが弱まり、逃げ道が増える。

「二階へ」

声に背を押されて、人々が上階へと流入する。

投げ込まれた松明は水に押しつぶされ、くすぶった煙を上げている。

「窓を中から叩き割って」

人々が窓に殺到し、それを叩き割る。

割った窓が奴らに降り注ぎ陣形がほんの少し下がる。


「娘ちゃん、あんた一体」

同僚達が異様なものを見る目で後退りする。

予想したことに少し落胆するが、選んだ道に後悔はない。

ニヤリと笑うと、二階の窓から飛び降りる。


「なんなんだ。あんた」

音もなく着地する私に奴らはひるむ。

当然だろう。それは只人の所業ではないのだから。

なぜだろう。心が浮き立ってくるのは。

鍛えた技を披露することに躊躇はなかった。


「ギャー」

刃を持って私を害そうとする人間の腕を切り落とす。

雨を薄く薄く高圧に出力してのカッターだ。

返す刃でもう片方の手を切り落とし、水の刃を槍と成す。

横から突かれたそれは人の串刺しを作り上げた。

出力を0にしてから再度高圧の水を無数の糸状に変換する。

糸で薙ぐ。

人の体に穴が出来、触れる勢いで肉塊とする。

「に、人間じゃねぇ」

あまりの惨状に周囲から嘔吐が聞こえる。店舗の二階からも同じく。

逃げろ、と踵を返すが、逃がすはずも無し。

放たれた水滴が目を潰し、脳を穿ち、死を運ぶ。

「一人逃したか……」

予想とは逆に店舗へと飛び込んだ男がいた。

おそらく、

「こいつらの命が惜しかったら、俺を逃がせ」

そうだろう、そうだろう。

コイツラは畜生だ。

恩義など知らぬ。

命のためなら卑怯な手を使う。

「おかしな真似をすればひとりずつ殺す」

手に持った刃を人質の首に突きつける。

ひっという恐怖の声が聞こえてきた。

「よーし、よし、ゆっくり下がれ」

二階から命令する声に頷くと、徐々に私は下がる。

一定の距離が空いたところで、彼は自分の有利をかさに着たのであろう。

落ちていた仲間の武器を持った。

「避けたら殺す。避けなくても殺す」

「私が人質と共に殺さないとでも?」

脅しの文句を口にするも、やつに鼻で笑われる。

「そういう人間ならそもそも躊躇したりしない」

そのとおりだ。

だが、お前は図り間違えた。

逃げればよかったのに喧嘩を売った。

そう、逃げても殺す、逃げなくても殺すのだ。

遥か離れたところから私を傷つけようと刃がやってくる。

それをめがけて正拳を突き出した。

キンっと空が鳴る。

極限まで冷たくなった雨が雪へと変化する。

圧縮され硬質の砲弾と化したそれは、刃を打ち砕き、人質を捕まえていたその手へと襲いかかった。

「ぐっ」と手を抑えるやつの手は肘から先の部分が地面に転がっている。

痛みに転げ回る彼を一瞥すると、くの字に折った胴を輪切りにした。


(やっちゃったね)

血の一滴すら被らずに肉塊の山を眺めやる。

とても気持ち悪かった。

スイッチが入った筋肉モードでは大丈夫だったが、特にこう言ったものに耐性があるわけではないので、正直辛い。

でも、ここで吐いたら格好わるい、という気持ちだけで動いているのであった。

店舗の二階の窓を見ると同僚がこちらを見ている。

怯えた表情をした彼女らが話しかけることはないだろう、そう判断し、そそくさとこの場から立ち去る私であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ