第2話 自己紹介
僕らは3年1組の教室にたどり着いた。
そして自分の席を確認して着席した。
僕の席は偶然にも昴の右隣である。
そしてまもなく新学期開始のチャイムが鳴った。
今年の担任は引田という背の低いメガネをかけた男の教師であった。
引田は自分の自己紹介をはじめた。
引田が自己紹介をしている中、僕はふと右隣の席をみた。
右隣の席は誰も座っていない。
(なんでだろう?)
そして自己紹介を終えた引田は言った。
「俺の自己紹介は終わりだ。次はお前たちが自己紹介をしろ。まず相川。」
相川が起立した。
「俺の名前は相川友雄。特技はサッカー。趣味はカラオケ。
好きな食べ物は焼肉。嫌い食べ物は・・・」
「もうわかった。次。」
長々自己紹介をする友雄を引田の言葉がさえぎった。
悲しそうに自分の席に座る友雄の姿にクラスメートが笑った。
友雄はこの学校に人気者である。彼は友達も多いし彼女もいる。
優しくノリがよく趣味も多彩なので話題が豊富で話してとても楽しい。
しかもウソつかないし秘密は守る紳士的な性格なため彼を悪く言う人はいないだろう。
僕も友雄なら心を開ける。
そして順調に各自自己紹介をしていった。
「次、金村、自己紹介をしろ。」
金村が起立した。
金村は一瞬あたりを見下したように見てから自己紹介を始めた。
「俺の名前は金村 収。俺の母はこの金村高校の理事長をしている。
冗談抜きで俺をなめたヤツは母親に頼んで退学にさせてやるぜ。」
それだけ言うと収は満足げな顔で着席をした。
金村収と同じクラスになったのは初めてだ。
しかし去年から彼の名前はよく耳にしていた。
この学校の最高権力者の息子だから威張りたい放題である。
彼の父親、金村 剛司は大きな会社の社長であるため息子の収はかなり裕福な暮らしをしているらしい。だからワガママなのだろうなと思う。
そうこう考えているうちにどうやら自分の自己紹介の番になってしまった。
「長野〜早く自己紹介しろ〜」引田がせかす。
僕は起立して
「長野勇斗です、好きなスポーツはサッカーで、あと・・・よろしく。」
あんまり上手に自己紹介できなかったと後悔した。が・・・まぁいいや。
その後は昴が自己紹介をした。
昴は少々威張った口調で自分の名前と自分の好きなバンドの事を言って自己紹介を終えた。
そして間もなく3年1組全員の自己紹介が終了した。
そして時計を確認し引田は言った。
「そろそろ、始業式が始まるな。全員体育館に集合しろ。」
そういうと引田は教室を後にした。
(さて体育館に行くとするか。)
そう思い席を立つと・・・
「勇斗、勇斗ぉ〜」という声が。
この声は相川 友雄だ。
「どうしたの?相川くん。」
「相川くんはやめてよ〜。友雄でいいって。俺も勇斗って呼んでるし。」
「あ、ごめん」
「まぁ、それは置いといて。勇斗の隣の席空席じゃん?」
「うん・・みたいだね。」
「そこの席に転校生がくるらしいよ。」
「えぇマジ?男?女?」
「わからない・・・どっちかな?」
転校生はどんな人物なのだろうか・・・。
(まぁ、興味ないな)
と思い僕は昴と相川くんと体育館へ向かった。