歴史の中に事件あり
時は過ぎ昔は時間も潰せたサイトは、今はただの日常をやり取りするだけの場になっていた
『教授、おはよう今日の空はどんな空ですか』
『アドラーさん、今日は雲一つ無い青空です。出掛けるにはちょうどいいですよ』
二人の実際の距離は遠いがそれでもお互いの存在を確認できる場所だ
『このサイトそろそろ閉鎖みたいだよ』
アドラーはそう話す。知り合いから聞いたみたいだが、日本の警察がこのサイトが犯罪に関わってると以前から調査していた
そしてあらかた利用の価値が無くなったと判断し、閉鎖に至ったのだろうと
このサイトではユーザーが犯罪者となり、犯罪計画を考えると言う変わったサイトだった。
そのため、あまりにもリアルな計画がたてられ利用されている
そして利用された計画の幾つかが、犯罪界のナポレオンと言われたモリアーティ教授のアカウント名だ
しかし教授の計画がどんなに良くても最後に捕まってしまう
正確に言えば教授がネタをバラして逮捕されるのだがそれを知るものはいない
とりあえず犯罪計画も減り平和な世界になったから利用価値がない。そう判断して警察はこのサイトを閉鎖するのだろう
アドラーの知り合いでもある警察は教授の知り合いでもある人物だ
最後に逮捕するのは教授とアドラーが2人揃った時と声を大にしてる
教授とアドラーが表立ってのプライベートのやり取りが無いのはこれが原因でもあった
『お出掛け日和ですが教授はパソコンの前に座る一日ですか?』
『今度京都に行って来るよ』
『いつ?何しに?』
『のんびり一人旅理由は無いよ』
この後アドラーからの返信は無かったが、知り合いの刑事から尋問のような電話とクレームが来る事になった
『くっそー。人が多くて嫌になるぜ』
孝弘は大都会のダンジョンを抜けるが如く新幹線乗り場に向かう
動く歩道に乗り落ち着いたかと思うと、後方から孝弘を邪魔そうに避けて通る人々が
孝弘は斜めに進みたいのだが、行き交う人の波は別の場所に孝弘を運んで行く
やがて携帯で調べた時間より1時間も早く家を出たはずなのに、時間ギリギリで新幹線に乗り込んだ
『やっと新幹線乗れたよ』
孝弘は知り合いに連絡を入れると
『大変良く出来ました』そんなスタンプが送られてくるぐらい人混みが苦手だった
そして隣りの席には女性が座ってきた
背は普通くらいでもスタイルが良く綺麗そうだ。孝弘はそう思いながら顔をチラッと見ようとする
『この席です失礼します』
顔が合うなり女性はそう言って来た
エレガントと言うファッションなのか、気品漂う服装を着こなし、美人のオーラすら着こなす感じに思える。しかし靴は細いが踵は少し高い。控え目のイメージかな。手には小さなバッグのみ。仕事では無さそうだ。
そして顔は作られたかのように綺麗過ぎた
ゆっくりは出来そうに無いなそう思いながらも新幹線は大都会を出発した
『どちらまで行くのですか?』
女性は孝弘に話し掛けてくる。孝弘は京都ですと答え携帯の目覚ましをセットし眠りにつく事にした
『変な行動とったら即警察ですよ。きょ・う・じゅ』
そのつぶやきは脳にも心にも突き刺さる思いだがそっと返事をすることなく目を閉じた
孝弘が目覚めると隣りの女性は京都の観光雑誌を見て少し微笑んでいる
でもきっと行き先は、孝弘の行く場所に一緒に来るだけと孝弘は分かっていた
『行くよ〜』
京都に着き二人の時間が始まった
まずは二條城に行くためのバスに乗る。
さすが歴史の街だけあってたくさんのバス乗り場がある。一つ一つが歴史をめぐるためのバス停だ
やがて二人を乗せたバスは走り出すが、少し走ると次のバス停だ。
これも京都特有の碁盤の目に目印があるかのように目標物が配置されてる。そのせいなのかは地元民じゃないので詳しくはない
二人を乗せたバスは二條城を告げ第一の目的地についた
『世界遺産二條城か』孝弘はそう言い中へ入って行く。
それ程テンションは上がっていないのか冷めているようにも感じた
しかし
『うわぁー。人がいっぱい居るね』
『海外の方がたくさん居るよ。さっきのバスは海外のツアーだったよ』
『写真撮影禁止なの。つまらない』
『人形たくさんいるよ』
『ねぇー、部屋毎に描かれている動物って意味あるの』
一緒に居る連れは嬉しそうだ
『さて、次の目的地は...。歩くぞ!』
『え〜』
孝弘の歩く発言にも嬉しそうに笑っている
二人は見て来た二條城の話しをしながら次の目的地にたどり着いた
『ココ!』
『アウトでしょ』
孝弘の目的地に嬉しそうに女性は反応をした
そこは女学院と書かれ、男性には似つかわしいとは言えない場所であり、見た目消して良いとは言えない孝弘は即警察に連絡されても仕方ない感じの所だ
『これこれ!』
孝弘は指を刺す石碑には、旧二條城。そして近くに足利氏の邸宅があった事を示す石碑だ
『ねぇー、織田信長って書いてあるよ』
女性は孝弘の旅が織田信長の足跡を辿るものだと確信した
孝弘はその顔を見るやら
『本能寺行くぞ』
そして二人はまた歩き出した
『結構歩くね』
『その靴じゃきついだろう』
バスの方が良かったかと孝弘は気を使い始めた
革製品だろうと思われ、少し踵は高い
長い距離は不向きではある
服装もエレガントと言うのか孝弘好みに着飾っているが長い距離を歩くのはどうかと感じる
『靴買ってあげるよ』
孝弘はそう言いながらデパートで靴を購入した
たかが靴に費やした時間はすでに神社仏閣を見学するぐらい時間がかかった
歩きやすい運動靴を進めたのだが服装に合わない、見た目が可愛いく無いと...。
孝弘は用途さえ満たせばと思いつつ、妥協出来そうな所を探してはススメのループが続いた時間だった
結局のところ女性はぶつぶつ言うが見た目より動きやすさを選択してくれ、再び歩き出した
『よし!着いた』
『何も無いわ』
二人は軽く笑いながら石碑の前まで足を運んだ
『この位置が本来あった場所だよ』
孝弘が石碑に向かって話す。その石碑には本能寺と書かれていた
女性はここが織田信長最後の土地かと言うと両手を合わせて軽く目を閉じた
『本当に織田信長は焼き死んだと思うか?』
『だって教科書にも色々な資料にも』
孝弘の質問にそう返す女性に対し孝弘は、織田信長の死体は見つかって無いと言われてるんだよ
もっと言うなら、明智光秀が必死になって織田信長の死体を探してる姿を見た配下の武将が見つけた振りをしたとも言われてる
織田信長の死は今でも謎なんだと
『その謎を解くためにここに来たのー』
女性はそう言い孝弘の目的を察した
『俺は昔から変わらないよ。歴史は好きだけどその中でもifを語りたいだけ』
教科書に載ってる事は今ある真実だけど、これからも真実とは限らない。100%じゃないんだよ
『でも、もし生きてたら天下を目指したんじゃない』
女性はそう言うが孝弘は
人間は山の頂上に登りたい人もいれば、山がある理由を考える人もいる。色々と考え方があるんじゃないかな。
信長は天下を取るより自分らしさを求めたとしたら
『でも、それなら他の誰かに任せて...。』
『時代背景ってやつだ』
天下を目指した家系だからね。何か裏切りなんてあると一族全員この世から消される時代だよ
ゆっくり寝ることだって出来ないと思う
自分の存在消すのが一番手っ取り早いんじゃないかな。
自分のやりたい事をするには。
織田信長はそんな幼少期を歩んできた一人でもある
『大うつけ者の大舞台。本能寺だよ』
孝弘は石碑を見ながら静かにそう話した
女性は納得行く行かないより孝弘の話しに惹かれていた
そして
『でも、皮肉だよね。燃えた本能寺跡近くに消防署って。』
『なるほどそこまで考えて無かったよ』
孝弘は女性の鋭い指摘に少し笑い喜んだ
そして
もう一つと孝弘は付け加えた
海外で突如優秀な哲学者が現れた
その哲学者の名前を並び変えると織田信長になると
『ねぇ!ちょっとそれ』
女性はびっくりし孝弘に話しかけるが、言葉がまとまっているようには感じず、何を言ってるかわからない
『是非に及ばす』
本能寺で信長が言った言葉で、海外の哲学者が最後に言った言葉
それを孝弘が付け加えたら、女性の頭の中ではすでに歴史が変わっていた
これもその時代その場所に孝弘はいなかったから、真実かどうかはわからないと付け加えた。
その後現存する本能寺に行き
『ショッピング街の外れに本能寺かよ』
『本能寺は日蓮とも関わりあるんだよ』
そんな事を女性に話すが反応は少し薄く感じた。
そして二人の短い旅は帰りの新幹線と共に現代に帰る
新幹線が東京に着くと二人は会話をする事も無く別々の方に歩きだした
『奈緒!旅行は楽しめたか?』
女性に話しかける男は孝弘とは違い見た目もしっかりしてスーツで整え、大人の色気で纏われていた
彼こそ孝弘の情報を奈緒に流してた男だ
もちろん孝弘はそれを知っている
二人の素性を知る唯一の男だ。そして刑事でもある
『あのサイトが無くなって誰もが忘れたら今よりは会いやすくなる。我慢しろよ』
そう言いつつ、あの事件の真相はその場、その時間に帰らないと誰もが納得しないと。
証拠が不十分だと、人々は勝手に物事を付け足して行く。まさに歴史はそう出来ている
『お前の事件もきっとそうだろ。アドラー』
『人違いです!』
『綺麗だぜ奈緒。靴以外完璧だ』
その足には確かに見た目アンバランスなピンク混じりの運動靴が履かれていた
『急いでるから行くね。これから飛行機で九州行って温泉行くから』
そう言って女性は足速に去って行った
『温泉か。これは本当に女の一人旅か』
正幸もそう思い二人が行動する事は無いとその場から姿を消した
『ふぅー。着いたわ』
私は今から答え合わせに行く。彼がなぜ京都本能寺を旅したのか
時代背景と彼は言った。それは織田信長の性格だけじゃないと思う。下剋上。その言葉は言うなればその時代の流行語と言っても良いと思う
歴史上では明智光秀が織田信長を倒した訳だけど、彼の話しを聞いてると織田信長が明智光秀が来るのを知っていた。それを利用した。
それで終わらないのが私の知ってる彼だ。
織田信長を倒したかったのは明智光秀だけじゃない。豊臣秀吉、徳川家康もあの時天下を取りたかった。織田信長を包囲したのは味方全員だった
天下統一その言葉に皆が憧れ皆がチャンスを伺っていた。
自分以外全て利用対象。もしかしたら明智光秀も利用されていた。誰にって考えると一番目に怪しいのが、明智光秀を討ち取った豊臣秀吉。
大返しと言われるくらい速く京都に戻った。となっているけど実際もっと近くに豊臣秀吉が居たとしたら。
でも、歴史の好きな彼ならそれも調べるはず。
そこで私が注目したのは『誰もが天下に憧れた』
その言葉だ
豊臣秀吉も誰かに動かされていた。そんな事を考えてたら私は辿り着いた。豊臣秀吉の軍師『黒田官兵衛』
この名前に辿り着いた時、私は歴史の世界に引き込まれた感じを受けた
黒田官兵衛はこの九州の土地で、関ヶ原という歴史的な大規模イベントを迎える
その際黒田官兵衛は財産を全て使い九州統一を目指して歴史を動かそうとした。この財産今使わずにいつ使うって
『ねぇ!教授。こんにちは今日の空色はどんな色ですか?』
『曇り空なんだけど所々から青空が見える。俺の天気だ!好きなんだこの空』
アドラーが挨拶し尋ねた先には、深々と帽子を被り目にはサングラス。そしてマスクの男が答えを返してきた
『動きやすそうで似合ってますよ運動靴』
そう言って彼は嬉しそうに話していた
でも
『黒田官兵衛が勢い付いた時、関ヶ原は終わったんだよ。たった数時間で』
まるで私が歩きながら考えていた事の続きを話すように話しだす
黒田官兵衛は関ヶ原が終わりを告げたとき、時代は黒田官兵衛を必要としてない事を悟ったと言う
その理由は関ヶ原をこれだけ速く終わらせたのは、黒田官兵衛の息子黒田長政の功績あってこその出来事だったからだ。嬉しい判断ミスだったと思う。息子の活躍は。
二人はその後ゆっくり話す時間を楽しんでいた
『でもどっちかっていうと私の勝ちだから、美味しいものご馳走してもらっていい?』
私はニコニコしながら彼の行動を先読みした事を認識させたかった
でも
『見て!』彼が指をさしているのは黒田官兵衛の絵だった。杖をつき誰かに支えられている絵だ
しかしそれは私も調べ済み。黒田官兵衛は一時期陽の当たらない場所に幽閉されてたんだよ
助けられた時杖無しじゃ歩く事もままならなかった事を説明し
『老後の杖は黒田官兵衛の杖ですかー?』
私はからかうように彼に言った
しかし彼は顔色変えずに『天下五剣って知ってるか?』
私の頭の中が?に埋め尽くす前に彼が話しだした。
童子切、鬼丸、大典太、三日月、数珠丸この5本の刀を総称して天下五剣だと
そして
『4本までは所有した人がいるんだよね』
一人目が足利義輝。剣豪と言われた将軍だけど彼も襲撃されて応戦する際、血で刀の斬れ味が落ちる中、4本の刀を取り換えながら戦った。刀より人の体力が限界になって倒れた。その場所が二條城
二人目は刀大好きの豊臣秀吉。刀狩りをやった理由は最後の一本が欲しかったからとも言われてる
二人共手に出来なかった剣は数珠丸だ
数珠丸はある人が修行する時、転ばないようにと杖代わりに使っていた
そのある人が『日蓮』
『あっ!?本能寺』
私は日蓮の名前を聞きとっさに出た
豊臣秀吉は数珠丸が欲しかった。
そして
『本能寺を舞台にした理由って。杖、杖、杖』
黒田官兵衛の杖が数珠丸だとして、主人である豊臣秀吉に渡さない理由。怪しい。
私の頭の中で再び歴史が書き換えられようとしていた
でも
『歴史の答え合わせをしたいわけじゃ無い。ただ好きな事を自分なりに答えたいだけだよ。そんなもしもが好きなんだ』
事件を起こすからには動機が必要だから
嬉しそうに話す姿は私の知ってる彼だった。
『歴史も事件だね』
そう私は言い私は思った。こんな姿をずっと見ていたいと思えた
今にも降り出しそうな曇り空。でも所々に青い空が見える。私もこの空が好きなんだ
彼といる時間はいつもこの空色のような気がするから
そしてその時を迎えた
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