繰り返す世界
『 ニュースをお伝えします 』
いつものように今日の出来事を伝える番組が始まった
『毎日よくネタを探してきますねー。たまにはニュースはありませんと言ってみー』
孝弘はそうテレビに話し掛け最近お気に入りのオレンジ100%のジュースを飲み出した
『くぅー
いいオレンジだね!』
少なくても今日一日孝弘は平和な一日を送くれたのではないか。そんな日に気になるニュースが飛び込んできた
『警視庁がなんらかのトラブルに巻き込まれ出入り出来なくなってます』
『ん?』
さすがに孝弘もテレビに耳を傾けた
どうやら人の気配も感じず、扉は固く閉ざされてしまっているようだ
関係者がインタビューを受けていたが、どうやら新型のバーチャル体験で演習が行われているようだ
『おいおい(汗)』
孝弘にはバーチャル体験の言葉に心当たりがあった
そして、パソコンを立ち上げ心当たりがある犯罪あるあるサイトにアクセスした
そしてやりとりがあった相手にアクセスを試みる
『教授!あなたが再び犯罪界のナポレオンと称される日も近いと書き残しておきます』
その書き残しと共にやりとり相手は孝弘の履歴から消えて行った
『退会したか!おそらくメビウス計画は警視庁の混乱に使われたと考えるべきか』
このメビウス計画は犯罪者が犯罪を起こしても良い場所。つまりストレスを発散するための場所を提供する計画だ
それがバーチャルな世界
名目上ではそうだが、実際には犯罪者もしくは危険な人物を隔離する世界
『命のある限り、その日が来るまで永遠に隔離する世界メビウス』
孝弘は知り合いの刑事に電話してみるが呼び出し音がするだけ。
間違いなくバーチャル世界と考えるべきかもしれない
しかし『♪♪♪』
孝弘の携帯に折り返しの電話がかかってきた
『もしもし』
孝弘は勢いよく電話に出る
『空の色は?』
聞き覚えのない声で問いかけられすぐに切られてしまった
孝弘はすぐさま固定電話から刑事の携帯に電話する
『空の色は?』
同じ声で同じ対応だ
最近では奈緒と孝弘の合言葉になりつつあったが実際は3人しか知らない出来事だ
この時、刑事正幸に何か起きたことを確信する
そして警視庁に潜入する方法も空から入れと
孝弘は外を確認した
『曇り空!でも所々見える青い空が綺麗なんだよね!今来いってことで!』
その後スーツ姿にシルクハットそしてサングラスにマスクをつけ変装した孝弘は警視庁に空から案内された
もちろん料金の請求は警視庁で
『お待ちしておりました』
電話の声の主だ
孝弘はその男に案内されバーチャル世界への入り口へ案内された
男は担当者で警視庁の人間だ
もうバーチャル提供者は姿を消してしまったようだ
目の前に多数の警視庁の人間を残し
全ての者が機器のついたヘルメットを被り異常な光景だ
このヘルメットが爆薬ならと考えると身が凍る思いだ
『っで?あなたはなぜバーチャル世界に行かなかった!』
私の質問に男は、もしも何かあった場合電話での問いかけをする。尋ねてきた者が条件を満たしていた場合、その人間にヘルメットを渡せと指示を受け一人残ったようだ
条件は空からと天気だ
ヘルメットをとっても皆バーチャル世界から抜け出せない。
つまりバーチャル世界から帰ることは出来ないと言うことだ
『メビウスに行ってくるよ』
孝弘はそれを知っていた。そして席に着きヘルメットを被りバーチャル世界メビウスに向った
『正幸さん、やはり同じ場所です。』
『まいったなー。同じ犯罪者何人捕まえれば終わるんだこの世界は?』
正幸はクタクタに疲れた顔をしている
もちろん他の警察官もだ
『あと少ししたら強盗だな。銀行に向かうぞ』
そう言って正幸は次に起こる犯罪者を何度も繰り返し捕まえていた
『強盗だー!』
『いえ!通りすがりの怪盗です(笑)』
孝弘はそう言って強盗が起きたと同時に強盗を捕まえた。
『役にたつもんだね罠の縄。反対から読んで縄の罠。ひらがなだとわなのなわでわからなくなるんだよね』
『正幸さん、今までいなかった犯罪者がいます!』
『本当だ!』
正幸はその姿を見てニヤリと笑みを浮かべこちらをみた
『私怪しくありません!』
孝弘は人差し指を立てて振りながらそう言った
シルクハットにスーツ、サングラスにマスク全く説得力に掛けはしていたが
『っで!どうすれば出られる?』
正幸は面白くないと言わんばかりに、自分の話しを始め孝弘に色々試したことを話した
一定の間隔で犯罪が行われ対応していく。対応が不十分だと、犯罪者が強くなってしまうという
警察官が少なく感じるのは犯罪者にやられてしまったからだ
そして今がスタート状態。つまり犯罪者レベルも低い状態だ
『この世界は一生同じ事を繰り返す世界だ!終わりは存在しない』
孝弘の言葉に警官達は表情を曇らせ、うつむいた
『っで!?』
それでも正幸は聞き返す
孝弘は近くに貼り付けてあったポスターを剥がし、長方形の帯を作り始めた
『この長方形に切った帯の片方の端をこうやって回転させて、もう片方にくっ付ける』
『メビウスの輪か』
『あぁ!完璧なメビウスの輪』
孝弘はこれの中にこの世界が作られている事を正幸に話した
『完璧な者は人には作れないだろ』
正幸は孝弘にそう話すと
『まぁな!メビウスって大きければ大きいほど力を発揮する。それなら!小さくしようか』
それは小さくすることによりエネルギーを作り出す力を弱めることを意味していた
『なるほどな!爆破処理班片っ端から建物に爆薬仕掛けろ』
『正幸さん爆薬なんて無いですよ?』
『爆弾犯罪があったろ!押収して再利用だ』
孝弘達は数回犯罪者逮捕を繰り返したのちにその作戦は行われようとしていた
『この世界はバーチャル世界だ。壊れた物も全てが元に回復してしまう。しかしだエネルギーを作り出す力を弱めれば回復スピードも落ちる。だからたくさん壊せば予定外の事が発生する。あるはずの物が無ければ犯罪も起きない!いや!起こせない』
『おい!シルクハットの花粉症!短く頼む』
正幸は孝弘の名前を皆に知られない為見た目でそう呼んだ。
『まぁ、なんらかの歪みが出来たらこの世界の出口だから飛び込んで!
1人出た時点でこの世界意味が壊れるから』
孝弘はそう言って正幸に合図を送った
『完璧な物に何かを足したら完璧じゃなくなる。それがこの世界か。メビウスの輪ではなくなってしまった。来てくれてありがとな』
そう言うと正幸は
『爆破!』
『ドォー』
轟音と共に目の前の景色が沈んで行く
そして目の前の景色が歪み始めた
『よしっ!探せ!1人でもいい!ここを出るだ』
その掛け声とともに一斉に煙りが舞う各方面に走り始めた
瓦礫に押し潰される警官。急に足元が無くなる。壁の中に吸い込まれる警官もいた
『孝弘!あれだ』
一ヶ所だけあきらかにこちらの世界じゃない風景がある
しかしその風景も少しずつ小さくなっていた
バーチャル世界の修復だ
『急げ!』
『正幸行け!1人でいいんだ。そうすれば』
『おい?嘘だろ』
正幸が振り返ってみると孝弘は宙に浮き始めていた
『行け!』
孝弘は正幸を追い払うようにしっしと手を振る
『うぉー!刑事なめんなよー!人救えず刑事が勤まるわけねーだろう』
そういうと孝弘を捕まえた
それでも孝弘の自由は回復せずに身動きが取れない状態になっている
しかし
『1人でいいんだよな!お前がもどれ』
凄まじい気合いともに孝弘を抱え走り出した
そして閉じ行く世界に向け、孝弘を背負い投げのように放り込むだ
『ざぁーどかっ』
孝弘は床を這いそのまま棚に激突した
『ばたっバタバタ』
棚の中物が落ち孝弘を覆い被せ姿が見えなくなってしまった
『全員戻ったか?』
『正幸さん、私は大丈夫です』
正幸は仲間が大丈夫なことを確認し、急いで別の部屋に走っていた
『大丈夫か?今出してやるぞ』
孝弘はそんな声も届かず気を失っていた
数時間後病院で起きるまで
『おっ!目が覚めたか?』
正幸の声だ
どうやら孝弘を病院に運んでくれたみたいだ
それも孝弘の存在を警視庁に気付かれずに
今頃謎の怪盗はだれと警視庁で話題になっているのではないかと孝弘は気掛かりだったが
正幸は警視庁の失態は表に出さない
だから孝弘の存在は無かったことになったと伝えられた
警視庁全員が怪我なく無事だったこともある
『ちょっと待て!何で俺怪我してる?』
『何でかね?(笑)』
そうやってとぼける正幸は嬉しそうだ
『この野郎』
『いいだろう病院で綺麗な看護師たくさん見られるんだから。触るなよ。逮捕するからな』
『ちっ!仕方ないか』
そう言うと看護師さんが孝弘の様子を見にきた。孝弘は照れながら窓の外を見る
『スッキリしない天気ですね』
『俺は好きな天気ですよこの空色』
『もっと若い看護師さんならもっとスッキリしたかしら』
そんな看護師の受け応えに孝弘は、正幸も近くにいたことだし、ここはノリ良くと気軽に返事をした
『大丈夫ですよ俺優しさは全て受け入れますから、看護師さんスッキリさせてください』
そう振り返って抱きつこうとしたが
『一生苦しめてあげる』
『えっ!』
看護師は白衣を脱ぎその白衣で孝弘の顔に押し付けてきた
『奈緒!殺すなよ。あっ!孝弘!お前が怪我したって言ったら速攻で帰国してきたぞ。聞こえないか』
正幸はそう言い残しジタバタと足掻く孝弘がいる病院から去っていった