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空色  作者: レアンティーク
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デスゲーム(前編)

梅雨空です

雨は強くなる気配もなくやむ気配も感じない雨雲停滞中と言った感じだ


いつもと違うと言えば今いる場所だ

今日は電車に揺られてその後数回バスに乗って降りてから1時間森の中を歩いただろうかやっと目的地に到着した


森の中にたたずむ一軒家と言うべきか縦長の三階建てもしくは四階建てもあろかと思う建物が建ってる


『場違いと言う言葉は使っても良さそうだな』


孝弘はその建物の周囲を調べ始めた

建物の周囲は全体的に庭なのか柵は無く境界になるものがない

畑や果物の木も無く自給自足と言った感じもしない


『電線も無いな』

中の灯りはどうしているのか?おそらくだが屋上はソーラーパネルがあり、太陽光発電の可能性はある

森のひらけた場所そして高い建物と考えれば太陽の光は届くはず


『ライフラインはと』


ガスは見当たらない。水は近くに綺麗な川もあった。それに井戸も確認出来た


『携帯は今のところかろうじて繋がっている』


人が生きることを考えるとあとは食料と言ったところだ

買い出しに出ると1時間は人力でここまで運ばなければいけない

もし孝弘が一軒家を求めていてもここは購入しない


『入り口は一つ! それにしても窓が少ないな』


少ないと言う表現も合うかどうかわからない。窓はしっかり確認出来ないからだ

シャッターは閉められ、おそらくその奥は窓があるはずとしか言えない


『ラブホだったらもっと良い所に建てなさい!女性はそちらで用意してと』

そんな冗談を小声で言い孝弘はその建物の外の観察を終わりにした


『アドラーさん預かりました。指定の場所に来なければ教授は二度と彼女とは会えません。もし来て頂ければ教授は魂だけあの世への旅に招待します』


こんなメッセージが1週間前に孝弘の元に届いた

犯罪者あるあるサイトでは、モリアーティ教授のお名前を勝手に拝借している

その影響で孝弘の元には教授当てで犯罪協力依頼がよく来ている


しかし今回は脅迫と言うか尋常じゃないメッセージだ

アドラーとは、孝弘の大好き小説の中に登場する人物で主人公の探偵を欺いた女性の名前だ


そして以前犯罪者あるあるサイトで知り合った女性でもある


指定された日時になるまで何度もメッセージを送ったが返信はない

なんらかの理由で返信出来ない状況であることは確かだ


この建物の中にいるとしたらそう考えると

『建物内は電波は無い。通信は不可能と考えるべきだ』


孝弘はとりあえずキャンプや釣りに行く時よく持参する多機能ツールがポケットに入っていることを確認する

ナイフ、ハサミ、ペンチ、ドライバー、ヤスリなどがワンセットになった物で使いたい物に型を変えることができる


『備えあれば憂いなし!さて入るか』


孝弘は最後に犯罪者あるあるサイト内メッセージを確認した。しかしアドラーからはメッセージはない

代わりに孝弘は最後になるかもしれないから友人に

『ありがとう!ちょっと魂が旅行に行くかもしれない』

そんなメッセージを送って建物の中に入って行った


建物の扉を開け中に入ると建物の扉は勝手に閉まりロックされる

想像した通りだ


『アドラーさん、いや奈緒さん教授が来ましたよ。あなたは絶対に来ないと言ってましたがね。見た目小柄です。どこにでもいそうな男で何か良い所を見つけるのが大変だ。木を隠すなら森に隠せ。人混みにいたら全然気付かれないくらいの男性って所ですね。お前に知識を与えて弟を死に追いやった男とは思えない』


アドラーは部屋に閉じ込められていた

身動きは出来るが外には出られない

スピーカーを通して音声のみ送られて来ている


『彼の本当の名前はなんと言うのですか?彼の家族も同じ思いしてもらわないといけないから教えてよ』

その声は楽しそうだ


『誰が来たか知らないわ。それに私は何もしてないです』

『私は何もしてないです。以前良く聞いた言葉だ!弟が死んでからね。それも彼に言えと言われた言葉か?』


アドラーにこう言う者はアドラーの夫の兄である

アドラーは過去に旦那を殺害し、遺産を奪ったと疑いをかけられていた

しかしその後警察は時間を費やしたがこの事件は証拠がでず真相は闇の中に埋まってしまった


男の名はバッカス

バッカスはアドラーは危険な人物だからと親族の間でもよく話していた人物だ


バッカスの弟が殺害された後、警察がアドラーのパソコンを調べたところ、特に問題は無かったと考えられていた。しかしバッカスは騙されなかった!アドラーのパソコンのアクセス履歴は一見バラバラにアクセスされているかのようであったが、空白になる時間があり必ず切りの良い時間になっていた

例えるなら9時ぴったりや15分ぴったり30分ぴったりから空白になるようになっている

つまり待ち合わせした時間にアクセスを開始したと疑うことができる


『まあ、見てくださいアドラーさん』そう話すとアドラーの目の前にあったテレビにさえない一人の男が映し出された


『ロビー!仕掛け1ON!!』

その言葉から数分後だった仕掛けに気付き出す


『ずいぶん冷えるなこの建物は』

孝弘そう考えながら周囲を観察して行く

一階正面には大きな階段が両脇に広がる

両側から登れて、登って中央に行けば下の階つまり孝弘が立っている階は見渡せるように渡りになっている

上には大きなシャンデリア

これが落ちてきたら孝弘は潰されてしまうくらい大きな物だ


一階には三方向に部屋がある

それぞれ同じ扉に感じた


『一部屋ずつ確認するしかないか』

孝弘はそう呟き右の部屋に向かい扉を開けた

『ガチャ』

軽い感じで扉は開く

しかし

『バリバリバリ』

突然目の前の景色が凍り始めた

部屋の中空気とロビーの空気の温度差が違ったせいか違う空気に触れた瞬間空気自体が凍り出したと考えられる


『バタッ!』

孝弘は慌てて扉を閉めるが扉が凍り出す感覚を感じる

冷えたと感じたのはこの部屋から凍り付くような空気が発生してたからだ

一瞬で建物は冷やされてしまう。急がないとと考え次の部屋を


『ガチャ』

『パッ!』

次の部屋を開けた瞬間全てが闇に包まれた

それと一緒に音楽が流れる

クラッシックと言うのだろうか?心が穏やかになりそうだ

孝弘はこの部屋も仕掛けが発動する為のスイッチと考え部屋を調べることなく閉める

手探りで次の部屋の前に向かう

例えなんかの仕掛けがされていても孝弘は行かなくてはいけない。その向こうに会いたい人がいるかもしれないから


『教授さん必死だな』うすら笑いをしながらバッカスは見ている

『凍る館!その場にいたら凍りの教授が出来上がる。動け教授恐怖と共に』


『やめなさい!彼は関係ない』

アドラーはテレビごしに話すが返答は無かった


そのかわりアドラーの元に2つのボタンが現れた


『アドラーさんゲームをやろうか!2つのボタンの光ってる方を押してください!彼目掛けて温かい空気が発射されます』


アドラーはその後そのボタンを押し続けることになった


『ん!?』

時折孝弘目掛けて温かい空気を感じる

有難いことだ

リズム良くくる温かさが孝弘の冷えた体を癒してくれる


次の部屋

『ガチャ』

『スゥー』


何かが扉から出て行った

また仕掛け発動の扉だ

すぐに扉を閉めて二階に上がろうとした


『バコッ』

突然背後からボールが飛んで来たのか孝弘に衝撃が走る

止まってはダメだ動かなきゃ


『ん!』

孝弘は一瞬の気配を感じ両腕を胸の前でクロスして防御態勢をとると同時に正面から突き上げかのような衝撃が

近くにボクサーがいるかのようだ


その態勢のまま孝弘は壁に向かって走る


『バタン...バタン』

後方から孝弘を狙う者が地面を叩く

足元まで風圧が届く


『くっ!』

何度か攻撃を食らうが孝弘は二階にたどり着いた

正直きついダメージだ受け続けていた


しかし何故孝弘の位置を正確にわかるのか

これだけの衝撃が来ることから考えるとよほどの大男か機械仕掛け

機械仕掛けならそれなりの音を感じるが音楽のせいか聞き取れない


大男が近くにいるなら

孝弘は大きく円を描くように走り出したが何かに触れた感覚はない

突然の予測不能な動きをすれば近くにいれば当たるか反応を示すが何もなし


足を止めれば強い衝撃が孝弘を襲う

顔や頭を覆うように防御態勢をとるがあまりの強力な攻撃に半ば諦めたように壁に背を向けてしゃがみこんでしまった


『ダメ!やめて諦めないで』

アドラーの声はテレビの向こうには届かない


『ドオーン』

孝弘の上の壁を強い衝撃が襲う

それがなぜか数回続いた


『そうか!』

孝弘の頭の中で1つ考えが出てきた

攻撃者は孝弘を狙っていると言うより温かい空気が当てられたところを狙っているのではないか?

現にしゃがみこんだ孝弘には温かい空気が当てられていない


孝弘は恐る恐る攻撃の当たらないタイミングに合わせて上の方に手を出す


『ふわっ』

温かい空気が来た

間違いは無さそうだ

それならどう攻撃者を倒すかだ


孝弘はそう考えると力を振り絞って階段を降りて行く手すりにつかまり攻撃を受けても必死に降りて壁を触りながら歩いた


『ここか!空気を正面から感じなきゃ

来た!』

『ドオーン』

この攻撃音が扉を襲った瞬間孝弘は攻撃者を壁に押し付けた

孝弘の手に冷たさが伝わって来た時孝弘は攻撃者から離れると攻撃者は扉にぶら下がっていたのだろうか落ちる音無く生き絶えてしまった


『大蛇か?』

熱に反応するのを利用され、可哀想に頭はボールのような物をかぶせられ調教でもされていたのかと思うくらいの動きをしていたと考えられる

巻き付く事を許されるならこの環境下なら再強の攻撃者になれたかもしれない

飼い主のエゴか


『さすが教授!凍り付く扉を利用してペットがやられたようだ。アドラーさんあなたが送っていた温かい空気が彼を殺したかもしれない。面白いだろ』


その楽しそうな声がアドラーの元に流れるとアドラーは画面を見ながら小さく震えていた


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