繋がってますネットワーク
梅雨入り前
孝弘は梅雨入り前の季節、晴れるのか雨が降るのかどっちかにしてくれないかな?
そんな空模様の朝を迎えていた
聞きなれた音楽で今日起こされた気がしない
でも、目覚しにしているスマートフォンはしっかり毎週鳴るようにセットされていた
つまり今日も目覚しは鳴ったのだろう
『うむっ 寝坊してしまったようだ』
そうつぶやく孝弘に焦る様子はない。なぜなら目覚めの悪い孝弘は複数回に分けて目覚しをかけていたからだ
そのうちの一回に気づかない。いつものことだよ
朝起きて鏡の前に立ってる孝弘には血の気もない人間のようだ。髪の毛が所々立ってたり違う方を向いて無ければ、もしかしたら屍人と間違えられている可能性もある
『もう少し、良い男に映せよ』
たまに鏡に頼み込むほど孝弘は見た目に自身がない
もちろん鏡は何も言わず、遠慮もせず真実を映し出す
もう人生を折り返そう、もしくは折り返している年齢だが結婚もして無ければ今は一緒にいてくれる女性もいない
そしていつものように生き甲斐もない仕事をしては帰って寝るだけの人生を送っていた
それは言い換えればどんな状況にでも出会えたら何らかの反応を示し行動できると信じたい状況だ
自分都合ではあるが。
そしてある日違う時間を体験することになった
『なんか面白い情報は無いかな』
寝る前にスマホのニュースを見ることにしている
たまに目の抱擁を求めて別のサイトへ訪れるのは孝弘しか知らない秘密だ
『過激テロ部隊勢い止まらず!被害範囲は拡大をしていく一方。敗戦を繰り返す国連長官に焦り』
最近おかしな指導者が現れ世界をもう一度始めからやり直すと言っている
確かに犯罪の絶えない世の中
それだけではなく犯罪はより匠の領域になってしまった世の中だ
解決しない犯罪が増え被害者が被害にあったのすら気が付かないこともある
気が付ついても誰に容疑があるのかもわからない
彼はそんな世界を直したいと思ったのかもしれない
『はじめはね』
孝弘はそうつぶやいた。しかし彼は違ったこの世界を壊したいと考えたのか?いや!違うだろうやりたいことをやるようになった
自分の存在を大きく見せ、正当化させたいが為に彼は理想的でない人を殺めるようになった
自分の思いのままになることが理想の世界だと
彼の名前はアブラルだ
アブラルをなんとかしたいと考えた国連は各首脳が集まりアブラル壊滅計画を実行して行く
しかしアブラルは欲望を叶え与えると発言したのをきっかけにアブラルのもとには、欲望を手に入れるため犯罪者だけではなく若者や人生をやり直したいと考えた人間が、日々絶えることなく集まり続けていた
それが現在の勢力!孝弘の見た目だと大陸を支配するのでは無いかと思える勢いだった
国連はアブラルの力が増えるたびに結果が出ないと言い指揮官を簡単に入れ替えてしまう状況だ
そのなか一人の指揮官が任命された
彼の名前はトールマー
数々の戦火を乗り越えては勲章を並べる人物のようだ
海外事情に詳しくないが頑張ってほしいところだ
数日後孝弘のスマホに知らない相手からメッセージが届いた
『孝弘さん、欲望を叶えてみませんか?お金、女性、世界すら動かせます』
そのメッセージとアブラル国家への参加要請だ
孝弘の名は確かに孝弘だ
だがどこでも名乗った覚えは無いのになぜかその名前当てに届くものだった
正直魅力的だ、孝弘には無い物、欲しくても諦めて来たことを与えてくれると言うものだ
ほしいもの!もしタイムスリップで過去に戻れると言うなら会いたい人物はいる
会えるのなら心は揺らいだだろうが、時間は不変的なものでそれは無理だと聞いたことがある
質量と光の関係を説いた学者の研究から基づいたかはその辺はわからない
その話は趣味として今は
アブラル国家に参加してしまえば毎日生死を考えなくてはいけない日々だ
アブラル国家と国連は戦争状態だからだ
次の日テレビではそう言ったメールや情報には耳を傾けてはいけないと我が国の首相が緊急会見を開いたくらい深刻な状態に陥っていた
参加者が後を絶たないだけでなく誘拐されてアブラル国家の奴隷と生きる事件まで起きていた
孝弘はこう言った場合最近登録したばかりのサイト"犯罪者あるある"で情報を集めている。このサイトは起きてしまった犯罪を自分ならどうするなど書き込むサイトだ。それは利用の仕方によってこれから起こす犯罪はどうすれば良いかを話し合う場にもなってしまっている
このサイトの利用法としては個人名や個人が特定されることは書きこまないのがルールだ
それ以外はグループを作ったり、個人相手にメッセージをやり取りできると言う犯罪にはうってつけのサイトだ
普通の出会い系と違うのは犯罪と言う2文字を大々的に宣伝している為かほぼ出会いの被害が少ないこと
そんなサイトに事もあろうか孝弘はモリアーティ教授のお名前を拝借して登録してしまったのだ
元々好きな小説に登場する人物で孝弘は昔から教授のお名前を拝借している
しかしこのサイトでは別の名で登録が相応しかったのかもしれない
なんせ教授は小説の中で『全ての犯罪は教授につながり、彼は犯罪界のナポレオンであると評された人物』であるからだ
毎日のように犯罪計画の参加要請が孝弘の元に届いている
関わればいつ警察にお世話になるかわからない状態だ
しかし孝弘は機転を利かし『誠に申し訳ない私の心は動かないようです』と断っていた
孝弘が断れば犯罪の成功率が低いと考えたのか実行されることはほとんどなかった
そんな中ある一通のメッセージが届いた
『教授、犯罪者を壊滅したいと考えているが上手くいかない。私も世間から使えない人間だと笑われる日々が近い』と言うメッセージだった
孝弘はそれがトールマー氏だと考えた
偽者だと疑いもあったが、トールマー氏は元々ネットワークをよく利用する人だし、犯罪者の心も多少わかると以前発言していたのを覚えていたからだ
このサイトは現役警察官も情報収集に使っているらしくそれがこのサイトが潰れない理由でもあったからだ
そんな警察官の口文句が必ず『犯罪者の心を知っているや犯罪はお見通し』と言う
だから孝弘はトールマー氏かと思いこんだ
『全て壊滅させたいなら、核兵器はいかがでしょう』
彼にそう返信すると、日本国の過去をだし、あってはならないことと返信は返ってきた
トールマー氏の話だと出来る限りアブラルを捕まえて他には危害を加えないことだ
しかし孝弘の考えは例えアブラルを捕まえても彼の欲望に魅入られた者はまた彼と同じ事を繰り返してしまうと返信をするがその時は再び返信することはなかった
それから数日後だった
『トールマー氏崖っぷちに最終手段を決断か?』
そんな見出しだった
孝弘はパソコンに向かって最終手段を使わない事を個人メッセージに送った
その返信には『仕方のないことだよ。これ以上の解決方法は無い。元々使うかは考えいた』
そう返信はきたが孝弘としては寝覚めの悪いことだ
もしかしたら孝弘の一言がと考えたからだ
『あと数日私に時間をください。良き計画をご提案させていただきます』
その孝弘からのメッセージに返信はなかったが5日後孝弘からトールマー氏に計画を送った
『アブラル国家は海と接しています。その海には恐ろしい海洋生物が多くいますが、そこから進入出来ればアブラル国家は崩壊の一路をたどると思われます』
しかしトールマー氏はアブラル国家に気付かれずに上陸するのは不可能と言うが、孝弘はほんの数人上陸するだけで良いと孝弘は話した
『馬鹿げてる!』
トールマー氏の怒りの一言が画面に映し出された
かつての故人達はノルマンディーと言う過酷な戦いを制止たぐらい海からの戦いには誇りを持っているはず
それが今回は少人数を何回かに分けてサメのいる海を乗り越えて上陸しろと言われれば頭にくるのは無理も無いかもしれない
『お怒りですね!私もただのネットワークの住民です。お忘れ無く』
孝弘はそう返信するとトールマー氏から返信はもうなかった
それから数日後だった
『ニュースです。
今朝アブラル国家の崩壊をお知らせします。
事態はよくわかっていませんが突如国連軍がアブラル氏を逮捕しました!映像をどうぞ!』
『教授は存在しなかった!くそぉ!』
そう言ってアブラルは建物から連行されていった
『真実とは限らないんだよね~この世界は』
孝弘はそう言いながらもう一つのグループとのやり取りを消して行った
『国連軍は核の使用を検討している。逃げ道は無い
『我々は隣国に素早く拡大すれば良いだけだ土地はまだたくさんある。陸が続いている限り我々は住むところを失わない
』
孝弘はそう言う彼に提案していた
全戦闘力を陸側に移動して核を避ける準備をと
しかし彼は一同が集結してしまったら国連軍は動きを察知して的になってしまうとそれを拒んだ
『それなら海側に捕虜や奴隷を集めて見てはどうでしょうか?大々的に行動を行なえば注目が集まります。逃げるにも陸はあなたの兵が、そして海には自然の武器があります。知らない国連軍は海側からの進入防止と陸からの攻撃に2分したと考えるでしょう。実は陸側に集まってるとは知らずに』
しかし仮にもし海側から大軍に上陸されたらどうなると聞いてきたが
『大軍なら誰か気付くと思います。少々相手に怪我人が出れば、その傷は海の支配者を呼びます。自然がなんとかしてくれると考えます』
そして
『不安ですか?それなら今日から海に向かって大砲や銃、ミサイルを毎日発射してください。決まった時間に行なえば訓練と考えるでしょ。それも奴隷や捕虜にやらせればいい。何人か監視役付けていれば大丈夫でしょう』
『なかなか面白い次領土拡大に使わせてもらうよ。教授を勧誘して良かったよ』
その数日後彼はその作戦を実行することになった
言うまでも無いがトールマーは念のため上陸部隊を進めた
何かあれば直ぐに撤退予定だったが近づいても攻撃は無く自然の武器も発動することは無かった
数日間も海にミサイルや大砲など異物を発射すればどんな動物も警戒をして近付かないものだ
それに小隊なら行動が速く警戒しているサメが興味を持つ前に近付くことができた
上陸後は奴隷や捕虜がほとんどだ精鋭が上陸してしまえば仲間が増えたのと同じだ
後は気付かれないようにアブラルに近づいて
『捕獲だ!』
その後しばらくトールマー氏の功績が讃えられよくテレビで見かけた
しかし彼の口からは『私は犯罪者の心を知っていた』と何度も繰り返し言っていた
おかげで今回も教授の名前は語られる事はなく、姿なき指揮者の代理と言う役割は孝弘なりにこなせたのかもしれない
これから先アブラル国家崩壊のミステリーとなるかはわからないですがね
そしてアブラルがもし教授の名前に魅入られてなかったら簡単に行動には移さなかっただろう
『今もまだ犯罪者を魅了するか?恐ろしい名前だ』
孝弘は今そんなことを考えながら空を見上げていた
『雨が降ってきましたよー。あいつ元気かな』