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空色  作者: レアンティーク
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覚えてますか空の色(番外編)

今は5月も終わろうとしている

先月正幸は表彰を受けていた。

刑事なって15年は経つだろうか。数々の未解決事件を担当し、得意の情報収集を駆使しては解決に導いてきた敏腕刑事だ


見た目は芸能人かと勘違いされるほど整った姿は刑事ながらもテレビ局すら注目する存在だ

性格も明るく誰とでも仲良くなれると言った感じの男


そんな友人に私は急に会いたいと言われ正幸の家へ今日来ていたのだった


『なぁ、孝弘(たか)!ちょっとした違和感を仕事で感じてな、聞いてほしいことがあるんだ』


正直孝弘にとっては友人と言うより知人と言っておきたい存在でもあった

孝弘の見た目は背は低く、正幸にとって孝弘は引き立て役にも足りないくらいの容姿である


正幸の職業が刑事で無ければ家にも行きたくなかった


そんな正幸が自分の過去の事件を語り始めた。どれもテレビで取り上げた事件ばかりで記憶に残っている


一つ目が銀行強盗の事件だ

犯人真岡は銀行周辺で大々的なビルの改装が行われることを知り、音の大きさを利用し、銀行の地下から侵入し爆破する事件だった

単純な作戦だったが警察は困難を招いていた犯人は爆風に巻き込まれることなくなぜ素早く盗むことが出来たのか

しかしこれは正幸により解決した

真岡は、爆破した後ビル改装業者を巧み使い避難せずに同僚数人を従え堂々と正面から盗みに入って金を奪うと言う複数犯の演技が困難を招いてた事件だった


2つ目の事件はストーカー事件だ

犯人太田は昔付き合っていた女性にストーカー行為を繰り返していた事件だ

女性は自分の影に意思があるとまで恐怖させた事件だ。

しかし正幸は陽が当たり過ぎると人の顔は見にくくなることに気付き『犯人は必ずあなたの近くにいます』と言い晴れて陽射しが丁度顔を隠す時間に犯人を逮捕してみせた


3つ目の事件は国外逃亡を見つけた事件だ

犯人は重大な殺人事件を起こしていたライスと言う男。国外に逃げてしまえば二度と捕まらないと言われていたが、これも正幸は捕まえてみせた

米の中から一粒の米を探すのは不可能と言い飛行機を逮捕したと言われ事件だ


4つ目は暴走族と戦った事件だ

頭の名前は石川。数々の暴走族を束ね暴力団と繋がりもあると言われていた

『子供叩くより、親の将来を俺は説いてくる』

この言葉の後、暴力団にも仲間にも見捨てられた石川は逮捕された


5つ目

『ここの場所は今は保留と言っておこう』正幸はそう言ってニヤリとうすら笑いを浮かべてきた


6つ目は脱走犯を捕まえた事件

逮捕したはずのライスが仲間により監獄を脱走する事件だ

ライスはなんと先の事件で捕まることまで計画していた。目的は監獄の中にいる犯罪者を葬る為だった

しかし、正幸は脱走後次の日に逮捕してみせた


7つ目の事件は銀行の頭取を逮捕した事件だった

頭取の戸川は他の銀行を融資しては秘密を握り脅すことにより財産を増やしていた事件だ

銀行同士の繋がりから違和感を見つけ会合に乗り込んで逮捕した事件である


8つ目はアリ地獄と言われた事件だ

犯人吉田は動くことなく指示のみをだす。実行犯の悪人を使いその一部の収入を受け取っていた事件だ

全ての事件が同じ手口と言い、吉田までたどり着いた事件である


孝弘にとっては長い自慢話しを聞かされた感じにしか思えなかった


『俺はこの事件を5つ目だと考えたからお前の意見を聞きたい』


その言葉のあと正幸は事件を語り始めた


犯人はアドラーと名乗る女

夫の死により莫大な遺産を手に入れた女である

アドラーとは言ったが海外で起きた事件ではあるが犯人は日本人であると言う


しかし国際結婚であり夫とは海外で結婚したようだ

その後夫の親族より、捜査の依頼を受けたがそんな日本人は存在すらしていなかった

事件後は全ての証拠は焼かれ写真すら残っていない。

夫側の友人宅にも侵入し写真すら始末されていた状況だった


しかしパソコンに残されたウィルスがアドラーのご挨拶と画面に出ていた。この事よりアドラー事件とよばれている


『他にも未解決の事件はたくさんある!でもわかるだろうこの事件を選んだ理由がお前なら』


そう正幸は鋭い眼光を私に向けてきた


『たまたまだよ』

孝弘には気付く節があった。

大好きな小説に登場する人物の名前になるからであった


『真岡はm

太田はo

ライスはrだったかな

石川はi

またr

戸川はt

吉田はy

そしてアドラーのa

時系列に並べてみると"moriarty"だろ』


大人気小説であるホームズの宿敵とされた人物の名前がmoriarty。そうモリアーティ教授だ


犯罪界のナポレオンとよばれ、全ての犯罪はモリアーティに通ずるとも言われたくらいの人物だ


正幸はだから5つ目の事件をこれに選び犯罪に打ち勝ちたいのかもしれない


『なるほどね!頑張ってよ』

孝弘はそう言って正幸を応援した。とくにそうなんだとしか思えないくらいで


しかし

『教授捕まえたぞ!アドラーはどこにいる』

と正幸は孝弘の手首をものすごい勢いでテーブルに押し付けてきた


『お前が数々のゲームで教授の名前を語っているのは知ってる。昔からお前はある事に関しては必要以上に勉強したよな!よく能力の無駄遣いや真面目に生きていればねと周りに言われてたっけ!

アドラーの為に知識をつけ実行させたか?悩み事を相談され頼まれたら誰よりもその人の為に知識を提供する。しかし自分自身の手は出さない。まさにお前が描く教授の理想像だ!吐け!』


確かに教授の名前はずっと拝借してはいるがあまりにも強引なこじ付けで、誰にでも当てはまる

しかし孝弘はあまりにも怖かったので


『違います。やってません』

弱々しくそう答えた


『だよなー。始めからお前には出来ないと思ってるよ。ただ久しぶりに会いたかっただけだ』


ホームズが好きな小説であると言う理由で孝弘を思い出したのであろうか


正直勘弁してほしい一日だった


正幸はアドラーの夫の親族達と会っていた

『やはり写真とかは残ってないですよね?』

親族は皆首を縦にはふらなかった


『全て消されたか!アドラーは結婚前からこの計画を実行するつもりだったと言いう訳か』


正幸は必ず遺族の前にアドラーを連れて来て見せますと言ったが遺族は諦め顔だ


それには理由があった

『私達は目の前にアドラーが現れてもわからない』

そう口にするのだった

その理由がこうだった

極度の人間不信に陥り夫にしか心を許してないと言う

姿を見たものも少なく一度だけや後ろ姿だけと言う


話すのも扉ごしだ

唯一姿や声を知る夫はもうこの世に居ない


『まさに死人に口なしだな』


正幸はなぜ被害者はアドラーと結婚することになったのか、そしてどうやって遺産を手にしたのかを調べだした


しかし調べて行くうちに夫の素行の悪さにたどり着いく

おそらく数々の犯罪を犯しているが金の力で解決している

もしかしたらアドラーも被害者か

結婚も無理矢理かと思える感じもしてきた

死んで良かったと言う言葉を刑事が使えればその言葉を当てはめただろう

しかし


『悪党でも親族にとっては家族か...。』

そう言い聞かせると

法の下ではアドラーが犯罪を犯したことはほぼ間違いないだろう。捕まえなければいけない存在だと正幸は考える


夫の死因は心筋梗塞

これが、やっかいなことに心臓の調子が悪くなり亡くなったであろうと思われる場合この名前が与えられる

ストレス死と言うべきか


急に倒れて意識がないと言われ亡くなった

その後捜査の結果、もしかしたら被害者は意図的に心臓に負担をかけられた可能性が浮上していた


それがアドラーの人間不審と言う特異体質と夫は悪党であるがゆえに外には必要以上に出ない環境。つまり日の当たらない生活がストレスを生みさらにアドラーと親族の確執が夫の心臓を蝕んだのだろう


『悪党は心臓が強いはずなんだけどな』

正幸の見解だ。しかし普通の人なら皆がそう考えるだろう。


しかしほぼ自業自得の自然死に見えたこの事件だったが、遺産を調べると実に不自然で疑うべき女性だと思える


遺産が振り込まれた口座はアドラーの口座。しかし不可解なことにアドラーの口座は夫の死後親族がアドラーに不信感を示し口座を親族が預かっていた

その数日後何者かによって口座からお金が引き出されていた


その何者かが夫の友人であることを突き止めたが、おろした直後に襲われている。その後襲った人間が更に他の誰かに襲われ、それを数回繰り返してだんだん襲う人間が数が減って最終的に女1人に襲われそのままお金は行方不明

おそらくその女性こそがアドラーだ


『まいったな。姿無き犯罪だ』


正幸は曇り空からのぞく青い空を見上げそう呟いただけ


『覚えてますか?同級生の正幸です』


正幸は同級生の奈緒に連絡を取っていた

もちろん奈緒も正幸が刑事であることを知っている。そして奈緒は孝弘と仲の良かった人物だ


『今刑事の仕事やってるんだけど話したいことあるから会えないかな?』


そう言われるとたいがいの人が、会わざる得ないだろう

職権濫用に近いとすら感じられることだ


数時間後正幸は指定されたカフェで奈緒と会うことになった


『実はある事件で捜査をしてて空を見てたらお前を思い出してな』

久しぶりの挨拶も手短に友人の近況も聞かず正幸はすぐに本題に入った


奈緒としては正幸は別にそれでも良かった人物だ

有名刑事と一緒にいれば世間の目が気になる。


そして、この事件を奈緒に聞かせた直後だった


『アドラー捕まえたぞ!』そう言ってテーブルの上の奈緒の手を捕まえた

奈緒は突然の出来事に振り払おうとするが重たい手が解けることはなかった


『お前には海外で空白の時間がある。その時間はアドラーとの時間にぴったりだ。そうだろ!吐けよ何してた』


言わなければ警察で事情を聞いてやろうかと奈緒の目を見ながらうすら笑い浮かべる


『バシッ』

正幸の頬に電気が通過したかのようだった

『離してくれる?証拠も無く呼び出して何これ?』

『バシッ』

更にもう一発

そしてさらに手が振り上げられた


たまらず正幸は押さえていた手を離す


奈緒は頭に来たのか代金をテーブルに置きイライラしながら店を後にして行った


『お客様!?』

店員が慌てて向かってきたが正幸はなんでも無いと苦笑いして店員を戻らせた


『冗談の通じないやつだな』

正幸はぼそりと呟いた


『この空覚えておかないとね』奈緒が昔私達に言った言葉だった


『覚えてますよ。曇り空の間からのぞく青い空を!その後お前は海外に行ったんだよな。あの時お前はさびしくなるって涙してたよな』


正幸は家に帰宅したら一通の招待状が来ていた

それは同窓会のお誘いだった


『また、会えそうだぜ』



そして街はそろそろ夜を迎えようとしていた


正幸は同窓会に参加する為に居酒屋に入って行く

今日はこの居酒屋は同窓会で貸切のようだ


中に入ればみんなから大歓迎だ

『おっ!クラスの誇りのお出ましだ』


正幸は嬉しそうに両手あげ自分を大きく見せる

正幸は自分の為に皆は集まったんだと勘違いしているくらいだった


その中正面に座るのは奈緒だった

『来ないだは悪かったな』一言かけるが顔を背けるだけだ


『大人気だな』そう声を掛けるのは奈緒の横にいた孝弘だった


その言葉に正幸はほぼ反応を示さない。私はそのくらいの存在だなと認識してた


時間は進み皆が正幸の事件解決話しに盛り上がっていた


『ねぇ!もっと詳しく教えてよ』

そんな声が聞こえる

正幸はこう言うことは捜査で重要な情報だから言えないと気分良さそうだ


そんな時だった

『情報収集ってさ聞いて歩きまわるだけ?』

そんな質問に正幸は最近はインターネットとかで重要な情報とか手掛かりをつかめる時があると答えた


『もし事件の情報がわざと流されてたらって考えたことある?』

奈緒の一言だ。まるで正幸以外の人間が解決に導いていると言わんばかりの言いかただ


『正しい情報だけを拾い事件を解決するのは困難な事だ!経験と腕が必要』

そうやって自慢しながら言う正幸はまるで奈緒の話しを聞き流しているかのようだった

どことなく奈緒のさびしげな顔と悔しさを私は見ながら一息つき、視線を合わせず語り始めた


『曇り空だけど綺麗な青い空が少しのぞく空が印象的だったなぁ』

この言葉に奈緒は無言で私の顔を見た。

『海外行ったまままだ帰って来ないんだ好きだった人。この空の色を覚えておかないとって言って。まだ待ってるんだよ。覚えてます空の色と好きな人をって言いたくて』


その言葉の後に孝弘は一つ一つ事件の語られることの無い事実を語り始めた

『mの真岡は致命的なミスをしていたいたんじゃないかな?例えば真岡本人が現金運び出しに夢中になっててどこかになにかを忘れていたとか?例えば足跡の向きが不自然に並んでいたとか?』

爆破され汚れた床を見た時足跡は避難する事なく別の目的地へ向かっていた事を意味する


『oの太田は計算力に優れていたから確実な日にしか近づかない。だからその日に近付くことがあらかじめわかっていた。雲もなく日差しが変化しない日に必ず行動を起こしていたとか』


『rのライスは言うまでも無く自分の日程を明かしていた。どこで残してたのかな?まさか日記で計画を書き込んでいたとか!』


『iの石川は繋がりを断てば勝手に崩壊すると助言があったとか』


『rのライスの二度目は本格的な犯罪に見られていたが、最初の犯罪がわざととなればなぜと思う!それだけで後は行動の予想を先に立てておけばいい』


『tの戸川はゴルフが好き毎週のようにゴルフをしていたが戸川以外は全て不安そうな顔をしている。他のメンバーを調べる方がはやいかな』


『yの吉田は同じ手口にこだわり過ぎた。必要な道具を手配するリストを使い回しにせずにその場で作成すれば見つからなかった!几帳面で計画にこだわり過ぎパソコンにゴロゴロ証拠があったのでは?』


そして未解決の5つ目事件か

『陽の当たらない生活やストレスをためることにより、自律神経は侵されて行く。めまい、動悸、息切れその他。あとは食生活で自然に。まぁ、悪党を退治するのに時間はかかったかもな。それでも復習したい相手か!』


全てを時系列に並べ直すとmoriartyとなる


そしてみんなは忘れてしまったかもしれないけど

孝弘の心にはライヘンバッハに沈んだ教授の欠片がある。それを題材に孝弘は小説も書いたことがある。もしかしたら彼ら犯罪者は孝弘の投稿を読んだのかもな


一瞬の間だった

皆が正幸ではなく孝弘に注目していた


その後正幸は語る事無く帰宅することとなった。

帰宅後いつものように"犯罪者あるある"と言うサイトをのぞくと

『私はライヘンバッハに沈みし意志の欠片を持つもの。犯罪を知る者犯罪を解く者でも有りたいと望む』と記されていた


『こんにちは教授良い天気ですね』


孝弘宛に見知らぬショートメッセージが入ってきた


『あの時と同じで曇り空の隙間から綺麗な青い空が見えるよ』

『ただいま今帰りました』

『お帰りなさいアドラーさん』


孝弘と見知らぬショートメッセージの主のやり取りだ


その直後に不快な声で正幸からの電話があったが何を話されても

『そうなんだ大変だね』と聞いては返すだけになっていた


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