40 エルフ兄妹と1匹の王国奮闘記! ギルド編
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ダンジョンを単独パーティーでクリアし、王国首都に凱旋した晃達であったが、そこに待ち受けていたのはルーク、アリシア達エルフに対する差別的な風習であった。
さらに社会が成熟されていない中世が舞台とあってペットに対する社会整備もなされていない王国に腹立ちを抑えきれない晃達の状況に業を煮やしたのか、
「この王国の土地でコタローやエルフのルーク、アリシアさんと楽しく暮らせる家を買いますわ! 明日は不動産屋回りますわよ!」と宣言したのはお嬢様、龍ヶ崎葵でありました。
晃達はそれぞれ、
「お休みー!」
「お休みなさい!」
宿屋の2階に用意してもらった女子部屋と男子部屋に別れ、晃はルークに「明日は僕達、学校なのでいつものように、合流は明後日の朝になるけど、ルーク達はどうするの?」
「初めての王国首都だから、アリシアとコタローと散策でもするとしよう!」
VRゲーム内の時間効率が現実の2倍ということもあり、ルーク達との時差が発生する。
「庶民はあまり気にしてなさそうだが、気位の高い連中はエルフを差別しているみたいだから気をつけてね!」
「高級宿屋の一件でおよその察しはつくので、まあおとなしくしているさ! いろいろありがとう晃!」
それを聞いて安心した晃はログアウトをした。
翌朝ルークは宿屋の一階の食堂に降りる、台所から顔を出した女主人さんが「あら、おはようさん! 朝食の用意出来てますわよ!」
周りのテーブルを見渡すとアリシアが美味しそうにパンとスープを食べている。他に客はいないようだ……。
「兄者おはよう! なかなか美味しいぞ」
女主人がルークの朝食を運んで来た。ミルクとパンとスープである、アリシアの横に座る。
「おはようアリシア、他の客はいないのだな?」
女主人が「アース大陸の冒険者って不思議と2日に一回しか起きて来ないのよね、その分朝食が要らないから、宿代を安くしてあげてるわ!」
「彼らは向こうで学校やら仕事があるみたいだからな! コタローは元気にしているかい?」
アリシアが「さっき女主人さんが肉とスープをあげて喜びながら食べてたよ」
女主人さんが「本当に賢い子犬だよ! まるで人間の言葉がわかるみたいな! 思わず昨夜の残りの肉をサービスしてあげたわ!」
「それほどでも……」アリシアとルークの表情がデレる……親バカですな。
「ところで兄者、昨日は高級宿屋で私達エルフに差別的な発言があったが、どう思う?」
「仕方ないさ、少数民族だからな……晃に見せてもらったアニメで学んだ事だが、かつて栄えたローマ帝国は自分達の繁栄のために違う人種や違う言葉や宗教を持つ他国に攻め入り、片っ端から隷属して行ったらしい、最終的には贅沢やら腐敗で滅びたらしいが……この国はまだエルフの身分を受け入れてくれているだけでも、有りがたい方だと思う、あとはオレ達の行動次第さ」
「そうだな、エルフの良さをわかってもらうような行動をしなければいけないな……」
「そうなんだよ! 前に晃が教えてくれたんだが、この王国内にはギルドというものがあり、そこには街の人が困って報酬依頼する沢山のクエストがあるらしい、クエストの難易度によって受けられるクラスがあるらしい……」
ルークがアリシアに説明した内容をまとめると
ギルドには王国やアース大陸の冒険者や腕に覚えのある連中が所属している。
そして王国の貴族や金持ち、あるいは国自体がモンスターの駆除やモンスターの部位目当てで報酬クエストを募集するのだそうだ。
かといってギルドに所属していきなり難易度の高いクエストに挑戦しても命を落としてしまうだけなので、強さや実績に応じてランク分けされている。
ランクは最低レベルがEで、D、C、B、Aと次第に高くなりさらにS級、レジェンド級がある、チームは最大8名までである。
もちろん少数な方が一人当たりの報酬が良いのは当然で中には単独でS級まで登りつめたツワモノもいるらしい。
B級以上のランクパーティーは街の人からも一目を置かれ、S級以上になると貴族なみの地位を得られることから、冒険者になって成り上がろうとする者が後を絶えないらしいが、その大半はひっそりとモンスターや魔物にやられて死んでいくらしい。
「ふふっ! そのギルドとやら、晃が見せてくれるアニメの異世界転生物には必ず出てくる、お定まりのやつだな! アース大陸にもあるのかな、当然晃はS級以上なのだろ?」アリシアが笑いながら質問をする。
「アース大陸には手がつけられない様なモンスターはいないので市の害虫駆除や猟友会がそれに近いかな、と言っていた。
晃のランクだがB級に上がったところあたりで、おつかいクエストに飽きて、ギルドには1年以上顔を出してないらしい、おつかいゲーよりも自分でいろいろ散策して、新しい敵や裏ルート見つけて倒して、直接商人相手にビジネスする方が楽しいし、儲かるとかなんとか……」
「なるほど晃らしいな、ところで兄者、私にそんな話する以上は、何かもくろみがあるのだろ?」
「そう! その通りさ! 俺たち最強エルフ兄妹とコタローでギルドに登録して、活躍することにより、王国の人々にエルフに対する考え方に波紋を投げかけるのはどうだ?」
「面白そうじゃな! 一丁ひと暴れしてみるか、兄者!」
アリシアが同意しながらルークにグータッチをする!
アリシアの声がでかくて聞こえたのか、コタローも台所の奥から「ワン!」と吠えた。
宿屋「夏風亭」を後にしたルークとアリシア、コタローは王国首都を散策しながらギルドを探すことにした。
広場に100以上もある露店を見学しながら歩いていると、沙羅達と同じ16、17才位の女の子3人組が近づいて来た!
「なんて美しいエルフのカップルなの? しかも可愛いモフモフ連れてるし!」
3人はコタローを撫で回している、コタローも尻尾をプルプル振って喜ぶ。
ルークが「カップルじゃなくて兄妹だがな! ところで君たちギルドの場所知ってる?」
「え? ギルド! あんなならず者達の集まりに行くの? やめといた方がいいと思うけど……。
あそこに見える4階建ての建物よ!」
彼女達が指差す方向を見ると、そこには煉瓦の門に包まれた広大な敷地の中に浮かぶ4階建ての比較的大きな建物があった。
その頃、ギルドの受付嬢のマリッサは、退屈していた!
村で一番の美人ともてはやされ、夢を持って王国首都に来たところまでは良かったが、学歴も身分もない彼女は貴族のメイドになることすら叶わず、現在は冒険者ギルドの受付をしていた。
それでも彼女がこの仕事についた二年前はまだ良かった……金髪のロン毛をなびかせたイケメン……ユリウスさんが、毎日のように冒険譚を耳元で囁いてくれた。
ユリウスさんは、Sクラスに上がってからはあまりギルドに顔を出さなくなった。
次に疾風の晃が現れた、彼はソロにもかかわらず記録的な速さでB級まで昇進したところで現れなくなった。
あの頃は個性的なアース大陸の冒険者が毎日やって来ては、簡単にモンスターを倒してくれて楽しかったわ、ここ数ヶ月ときたら、王国の自治区の村で手がつけられなくなった暴れん坊とか、ただ暴力的なならず者ばかりがギルドの登録に現れる、そのほとんどがせいぜいCクラス止まり。
ギルドに活気が戻らないかな、と思惑する毎日を送っているマリッサの目の前の門が開き、白髪のロン毛のイケメンと白髪美人のエルフ2人がペットを引き連れて現れた。
何かこの2人から発するオーラは只者じゃないことを理解したマリッサの胸の高鳴りはどんどん高まっていく。
さて、これからエルフ兄妹と1匹の先に待ち受けている試練は如何に……!