なんて罪深いんでしょう!!
前作
なんて罪深いんでしょう!
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ひょんなことでシスターと知り合った俺が、カトリック系の教会に通うようになったのは3か月前の事だ。こう話すと、何か勧誘じみた事や洗脳まがいの事をされているんじゃないかと疑われるのだが、実際には「聖書勉強会」と銘打たれた聖書のありがたいお話をひたすら聞き流しているだけである。
3か月もありがたい話を聞いていればいくらか実生活に役立ちそうなものだが、俺の頭にはほとんど内容は入ってきていない。理由の一つは早朝だからというのがある。何せ朝の5時半だ。平均的な人であればまだ寝ている時間だし、平均的な大学生であればこれから寝る時間時だろう。当然俺の頭も半分寝ていてもう半分は夢の中を徘徊している。
しかしそれは大した理由ではないかもしれない。もう一つ大きな理由がある。それはシスターの身体が性的過ぎて集中できないということだ。こんな事を言うと俺の事を変態とか猿とかゴミクズとかいう人がいるかもしれない。だが彼女の服装は常軌を逸しているといっていい。
普通は肌を隠すべきであるはずのシスター服はミニスカートで胸元は大きく開いていて、しかもそれを纏う彼女の身体は肉感的でムチムチしていてとても美味s
更にこの聖書勉強会は早朝過ぎて参加者が極端に少なく、たまに近所の子供が来たかと思えば途中でぐっすり眠り込んでしまう有様だ。
必然的に講義は俺とシスターのマンツーマンで行われ、しかも他に誰もいない教会の礼拝堂に隣り合わせで変な気を起こすなと言う方が無理な話だ。むしろ今まで手を出さずに通い続けている俺を誰か褒めてくれないだろうか。
シスターは自分がとてもイヤらしい恰好をしているという自覚は全く無いようで、俺が寝坊をしたりサボったりしたら
「なんて罪深いんでしょう!」
と言ってプンプン怒ってくる。
あなたですよ。
***
今日もいつものように教会の柵を乗り越えて庭に着地する。地面には一面芝が生い茂っており、左には一本のリンゴの木が植えられている。あの木からリンゴを取ろうとしたのがシスターとの出会いだったなあと思い出に浸っていると
「ちょっ! ちょっと待ちなさいポチ!」
と、突然うわずったシスターの声が聞こえた。かと思ったら今度は礼拝堂の方から1匹の大型犬が猛然と俺の方に走ってきている。金色の毛並みをたなびかせて力強く走ってくるその犬はどうやらゴールデンレトリバーのようだ。ん? この教会、犬なんか飼ってたっけ? とレトリバーを見ていた俺は気付いた。
首輪からピンと張っているリードを必死につかんで引き摺られている女性の姿に。彼女がうつぶせの状態のまま勢いよく全身で芝を撫でているため、その後ろには道のようなものが出来ている。まるで「僕の前に道はない。僕の後ろに道は出来る」状態だ。
「ちょ、黒木さん大丈夫ですか!」
ちなみに黒木さんというのは今引き摺られているシスターの名前だ。俺はしゃがみ込んでレトリバーに飛びつかれながらシスターを助け起こす。
「星くん、ありがとう」
顔を上げた黒木さんの顔は草まみれで緑色を帯びていたため思わず笑いそうになってしまった。
「この犬は?」
俺はベロンベロン舐めてくるレトリバーを引き離しながら聞いた。
「ポチという名前の近所の犬よ。飼い主の方が家族旅行に行かれるということで、1週間この教会で預かることになったのですわ」
教会に犬がいたのはそういう事か。
ふと、服に付いた芝を払っている彼女を見て俺は気付く。
「あの、シスター、服が」
「服? ああ、なぜ私服なのかですって? 犬の散歩に行こうと思っていましたのよ。でも全然いう事を聞いてくれなくて……」
確かに黒木さんの服装はいつものイメクラみたいなシスター服ではなく、タンクトップにホットパンツという完全最終形態痴女みたいな恰好だった。それ私服だったのかよ。
「いや、そうじゃなくてですね……」
俺は目を逸らしながら人差し指でシスターの胸元を指す。
俺の人差し指の指す先をゆっくり目で追った黒木さんは一気に赤くなった。引き摺られたことにより元からゆるかった彼女の胸元がさらに下がり、黒い下着が完全に見えていたからだ。すぐに両手で胸元を隠した彼女は
「な、ななななんて罪深いんでしょう!」
と叫んだあとすごい勢いで礼拝堂の方へ消えていった。いくら黒木さんが鈍いとはいえ流石に恥ずかしかったのだろう。
***
戻ってきた彼女はいつものAV撮影用かと見間違いそうなシスター服に着替え、赤淵の眼鏡を掛けていた。
「私の下着、見ましたよね?」
「ううん、見てない見てない」
俺は手をブンブン振って見え透いた嘘をついた。マズイ。話題を逸らさなければ。
「それにしてもポチ、大人しいですね」
俺は仰向けになっているポチの腹を撫でながら言った。犬は穏やかな顔でコチラを見ている。
「大人しい?」
急に黒木さんの顔が曇る。
「ポチは昨日の晩ここに来てから私のいう事を一つも聞きませんのよ。母さんのいう事は聞きますのに」
そう言って彼女は頬を膨らませた。ちなみに黒木さんのお母さんもこの教会でシスターをしている方だ。
「そうなんですか? さっき『お手』とか『お座り』とかやらせてみましたけど、全部言う事聞きましたよ」
俺の言葉に更に膨れる黒木さん。
「もう一度やってみますわ!」
ポチの前にしゃがみ込む彼女はちょうど俺と向かい合わせの位置に居たため、黒いパンツがもろに見えていた。ここまで来たら見せているのかと疑いたくなる。
「お手! ポチ、お手ですわ!」
ポチは黒木さんの声にのっそり起き上がった。しかしお手をするそぶりは見せず「はっはっはっはっは」と口で呼吸しているだけだ。
「くっ! ポチお座り!」
犬はすでにお座りの態勢を取っているため、これなら大丈夫だと思ったのだろう。ところがポチはここで予想外の行動に出た。
なんと両前足を黒木さんの肩にかけてヘコヘコ腰を振り始めたのだ。
「な! 何してるのちょっと! 星くん助けてー!」
黒木さんは押しのけようとするが、ポチは両前足をガッチリ黒木さんの肩に掛けているため離れない。面白いなこの人。
やっとのことで俺がポチを引き剥がすと黒木さんは半泣き状態だった。
「本当に黒木さんのいう事聞かないですね」
俺は何事も無かったかのように再び腹を見せているポチを撫でながら言った。
「もう嫌ですわ! どうして私のいう事だけ聞かないの!」
黒木さんは体育座りになってふさぎ込んでいる。
「うーん、黒木さんが下に見られてるからじゃないですかね」
「下?」
顔を上げた彼女は眉をひそめている。
「はい、犬って自分より下に見てる人の言う事は聞かないって言うじゃないですか」
「……という事は?」
「アハハ、だから黒木さん犬的に見たら俺より下ですね」
口が滑ったと思ったときにはもう遅かった。黒木さんは怖いほど穏やかな笑顔になってコチラを見ている。俺は知っている。この顔はめちゃくちゃ怒っているときの顔だ。
「ねえ星くん」
「あ、はいスミマセン」
俺は早めに謝ってみたが無駄だということにすぐ気付いた。
「『ポチ』と『星』って似ているわね」
そう言って彼女はポチから首輪を外し始めた。
「え、いや、そんなことありませんよ。どっちかっていうとモチの方が」
俺が苦しい言い逃れを考えていると黒木さんが膝を立てたまま俺の方に迫ってきた。手には先ほどポチから外した首輪を持っている。
「あの、それどうするつもりなんですかね」
俺は立ち上がって逃げようとしたところを押されて尻餅をついてしまった。すかさず俺の股に膝を差し込む黒木さんはやはり笑顔だ。そしてゆっくり両手を俺の背中に回す。まるで抱き着かれているかのような錯覚に陥った俺は固まってしまった。
いや抱き着かれていなかったとしても黒木さんの豊かな胸が俺に押し付けられているため正気でいられるはずがない。その柔らかい感触が一気に俺の理性を飛ばしにかかる。
「さ、出来ましたわ」
そう言って笑顔でコチラを見る彼女の手には先ほどポチに繋がれていった赤いリードが握られており、それは俺の首に続いていることが分かった。
「これから貴方は私の犬ですわ」
「え、いやそれはどういう」
「星、伏せ」
「いや、やりませんよ」
と言った瞬間リードをすごい勢いで下に引っ張られた。俺は不本意ながらも「伏せ」の態勢になってしまう。
「あらぁ、ちゃんと言う事を聞きましたわ。賢い犬ですこと」
頭上から黒木さんの嬉しそうな声が聞こえる。ムッとして少し顔を上げた俺の目に飛び込んできたのは、やはり彼女の股からのぞく黒いショーツだった。今度は模様やスケていることまではっきり観察できた。ジーザス。
起き上がって見た彼女の顔はすでに怒っていなかった。代わりに目は見開かれ、頬が紅潮していてすごく興奮しているようだ。駄目だ、このまま言いなりになっていては要求がエスカレートしてしまう。
「お手」
「ワン」
俺は言葉を添えて手を出した。彼女はドSであるように、俺はドMだったのだ。
「アハハ! なんて罪深いんでしょうねえ星くん! 犬のように扱われる気持ちはどうかしら? みじめ? それとも悔しい!?」
嬉しいです。
「星、チンチン」
今度は流石の俺も耳を疑った。今チンチンって言ったぞ! いや絶対チンチンって言ったぞこの女!
「ほら早くチンチン見せなさい」
「いや見せなさいっておかしいだろ!」
立ち上がりかけた俺のリードを黒木さんは嬉しそうにグイグイ引っ張る。
しかし不安定な体勢で強引に引っ張られた俺はバランスを崩し、黒木さんに向かって飛び掛かる形になった。
「きゃっ」
先ほどとは打って変わって可愛い声を出す黒木さん、の両肩を掴んで押し倒してしまった俺。俺たちは芝生の上で、しばしの間見つめ合っていた。(芝生だけに)
「や、優しくしてね」
小声で言って目を逸らす黒木さん。
えっ、何それは。
俺は改めて黒木さんの身体を眺める。その豊満な胸は彼女の呼吸に合わせて上下し、首筋には汗が流れ、顔は赤らんでいる。俺は生唾を飲んだ。これは、良いのか? いや流石に外でやるのは……。じゃあ礼拝堂で? いやそれはインモラルすぎる。
その時再び黒木さんと目が合った。彼女の目はどこか潤んでいて愛おしそうに俺を見つめ返してくる。俺はまるで吸い寄せられるように、ゆっくり彼女に顔を近づけた。そしてそのまま眼を閉じ、唇の触れるその一瞬を待つのだった。
ところが突然何か重たいものがのしかかってくるのを背中に感じて振り返ると、ポチが俺の背中に前足を掛けて腰をヘコヘコさせている。ええい、こんな時に! 俺は慌てて黒木さんの上からどけてポチを引き剥がしにかかる。
「わ、私は何も期待していませんでしたからね! 星くんがあまりにも罪深いから動けなかっただけなんですからね!」
今度は黒木さんの声に振り返ると、彼女は顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいる。どうやらシラフに戻ったようだ。そして反転した黒木さんは「罪深ぁ!」と叫びながら礼拝堂の方へ消えていってしまった。
おいポチどうすんだ。
そしてその後一週間、俺の日課に「ポチの散歩」が追加されるのだった。
おわり
お読みいただきありがとうございました!