どうしてアスカは攫われたのか
意識を失ったアスカを抱えた女が、廃屋にも見える小さな隠れ家に帰ってきた。女は長い髪は白く、浅黒い肌のなかの目は深紅、耳は鋭く尖っていた。
「ルビおかえり。あいつ、ちょっとライラの情報教えたらまんまとおびき寄せられてくれて、本当に馬鹿だよね。お姉さまに見捨てられても当然だわ」
帰ってきた女をルビと呼んだ女が、ニタニタと笑う。その女は真っ黒の短髪、真っ白の肌、新緑の瞳の女だった。
「そうよね、エメ、ちゃんとお姉さまが見張ってるのを知らないのよ。上前を誤魔化そうとした時点でお姉さまはすでに見捨ててたわ。それより、この女よ。さっき攫ったときはお姉さまと同じようないいにおいがしたのに、あんまり匂わなくなってる。どう思う、サフ?」
二人の話を黙って聞いていた良く見ると濃紺の黒っぽい腰までの髪、浅黒い肌、青空の瞳の女がチラとアスカの方を見る。
「でも、実際お姉さまの妹だったら、私たちより絶対可愛がられるんじゃない?それは困るわよ。
あと、多分こいつお姉さまの探している人ではないわよ。色が違うし魔力の質が違うから」
3人は美しく整った容姿である。色彩は違うものの3人とも全く同じ容姿をしており、異様な3人と言える。
サフの言葉にエメとルビが頷く。
「そこまで考えてなかった。さすが、サフ。そんなの絶対ヤダ!でもコイツあのライラの仲間っぽいけど、多分戦闘能力低いんじゃない?隠れてたし」
ルビが何かいい方法はないかと考える。
「そうだ!ちょうどあの犬っころがヤツらの本拠地壊滅させに行くじゃん?そこに紛れ込ませるとかどうよ?」
エメが床に転がったアスカを足で指し示して言った。
「エメそのアイデア採用よ!ルビ、私いいこと思いついたの!」
なになにと3人が顔を寄せあってヒソヒソと話し始めた。
「これで、あの問題も解決するし!ライラとルーカスをここから遠ざけられるから、一石二鳥どころか三鳥か四鳥じゃん!」
興奮したように、ルビが叫ぶ。
「ルビはこの女を上手いこと奴隷商人の馬車に紛れ込ませて。エメはわざとらしくならないように、この女が奴隷商人の所にいることが分かるような証拠を残してくること。私は奴隷商人との繋がりを有耶無耶にするわ、あとアレをちょっと隠してくる」
3人は目を合わせて、こくりと頷いた。
胸に拳をあてた3人はいつもの誓いの言葉を唱和した。
「「「全てはお姉さまのために!」」」
3人は廃屋から出て、それぞれ違う方向へと転移した。