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魔王からの求婚回避作戦  作者: 水槽の苔
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はたして求婚は断れるのか

初めまして、連載は久しぶりです。のんびりやって行きたいとおもいます。今回は完結めざして頑張るぞ!


「記憶の魔女アスカ ホシザキ殿。私の生涯の伴侶になっていただけないでしょうか」


サリエル ノートルはその長身をかがめ、片膝をつき、アスカの左手を取り、その指先にキスした。紛うことなきプロポーズだ。非常に気障っぽいが、彼が行うなら許される。


サリエルは藍色の瞳に藍色の髪の毛の、それはもう美しい、見慣れていなければ、ちょっと平常を保てなくなるくらいのイケメンである。切れ長な目から色気がダダ漏れである。


対するアスカは黒髪黒目、ちょっとかわいい童顔のどちらかというと普通のその辺にいっぱい転がってるようなぱっとしない容貌である。


「お断りいたします。分かっていますよね?そのような台詞も聞き飽きました。私は友人としての貴方とお茶をして、語らうのは好きです。ですが、それ以上の感情はありません。魔王様にはもっと相応しい方がいらっしゃるはずです。私のような異世界からの客人でなくとも」


アスカは左手をやんわりと外し、微笑んで一歩距離をとる。彼女は笑顔で拒絶した。毎度のことである。既に10回以上繰り返されているのだ。


「貴女が『はい』と言うまで何度でもしましょう。私が諦めが悪いのも、分かっていますよね?魔王の私にもっとも相応しい伴侶は貴女以外にはいませんよ。では、またお茶をしにまいります。城の料理人にとびきりのお菓子でも作らせて」


魔王サリエルはニコリと笑い口の中でなにごとか呟いた。その瞬間、サリエルは跡形もなく消えていた。


テーブルに戻ったアスカが紅茶の入ったカップを手に取る。香りを楽しんでから、1口口にふくんだ。


「まだ諦めないのか。どうやったら、諦めてくれるのかね?」


真紅のドレスに身を包み、美しい庭園を前にした窓際で佇むには不似合いな口の悪さである。それから、テーブルにだらりと突っ伏したまま、魔王様の手土産のマカロンっぽい食べ物をもそもそと食べる。やっぱ、魔王城のコックの作るお菓子は絶品じゃのー、と呟く。お菓子と一緒に魔王様が来て、プロポーズしてくのはいただけないが。


「諦めさせるには、アスカ様が心から思う伴侶を見つけるか、魔王様にとってアスカ様より素敵に見える相手を見つけるかですね。実際には、あの魔王様の求婚を断って選ばれたい相手などいないですが。それから、貴女より好条件な人なんてなかなかいませんね」


いつの間にか彼女のすぐそばには執事服を来た年若き青年が立っている。アスカは口に含んでいた紅茶を噴き出した。


「ぶふっ……!うへっ!もう、いきなり気配もなく現れるのやめてよ、アルス。」


アスカの噴いた紅茶のかかった横顔をハンカチで拭きながら、アルスが顔をしかめている。


「汚いですよ、アスカ様。魔王様の前ではなんとかましなのに。まだまだ淑女の修行が足りないようですね」


アルスが顔に浮かべた物凄く黒い笑顔が、わざとらしく上がった語尾が、アスカの中の警鐘を鳴らす。


「いやー、ちょおっと礼儀指導は遠慮したいなぁ…この間先生に、お墨付きもらって卒業したよ?あの時先生が『よく頑張りましたね』って褒めてくれたし、アルスも『もう大丈夫でしょう』って言ってた…」


冷や汗たらり、というかたらりどころかダラダラである。


「いいですか?わかっているかと出来るかは別の問題なのです。あの先生は元々社交界で大活躍されていた老婦人で、もともと教鞭を取られていた訳ではございません。非常に優しい方でした。新しい先生をお呼びします。社交界でも評判の良い教師ですから、きっと今のハリボテのような作法ではなく、ホンモノの淑女の作法を身につけられるでしょう。楽しみですね」


傍目からみたら非常に見目の麗しい有能な執事である。しかも、金色の髪にそれを少し濃くしたような琥珀の瞳、大きな瞳はまるで異国の王子様のようである。これが常に自分の傍に控えているのだ。もう乙女ゲーの世界の住人は垂涎である。ただし、ドS執事である。


「もうイヤ!交代よ交代!ドS執事は2次元にいるから素敵なのっ!現実世界にはいらないの!てか、あの鬼教師が優しいとかどんだけ鬼畜なんだよ。怖っ!」


まぁまぁ冗談ですよ、アスカ様と黒い笑みを浮かべたアルスが、アスカの首根っこを引っ掴んでズルズル引きずりながら歩き出した。


どこまでが冗談なのかはアルスのみぞ知る。


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