プロローグ
そこは、あたり一面焼け野原だった。
場所は東京の中央、十二月二十五日クリスマスの日だった。
ビルは倒壊し、辺りは真紅に包まれていた。
その事故の真ん中に一人の少年と女性がいた。
少年はぐったり横たわっており、その目の前の彼女は少年を見ろしてこう言った。
「君はこの世界に不満はないか」
と。
少年は微かに頷いた。
「なら、君がこの世界を変えるんだ。けれど君には力がない。」
そう少年に言った。
けれど少年は何も言わず、動かなかった。
「ならば、私が力を与えよう。しかし、世界を変えられるかは君次第だ。けれど、力を持った君は茨の道を進み、君の心はズタボロにされるだろう。されど、君が望むのであれば、」
そう彼女が入った途端、周りが眩く光りだした。
「私は君に、ちからをあたえる」
少女が言い終え、周りに満ちていた光は一点に収束し、少年の中に入っていた。
「君、大野慎也に会いに来るよ」
そう言い残し、彼女はその場からいなくなった。
それと同時に辺りを埋め尽くす炎も消えた。
残されたのは、中央に横たわる少年とビルの瓦礫だけだった。
「これから授業を始めます。」
そう言ったのは俺のクラスの担任佐々木優子先生だ。
服装はスーツで、髪は少し茶髪、そして丸メガネをかけている。真面目そうに見えるが、何気におっちょこちょいである。
「まず、一年生の頃の復習です」
そう言い黒板に書き始めた。
俺はそれをノートに取りつつ、一年の授業を思い出していた。
この世界の人々は能力を持って生まれてくる。
けれど例外もいる。能力を二つ持って生まれてくる者と能力を持って生まれて来ない者など、色々だ。
その能力の中でもランクづけられている。
一番上が『S』、一番下が『E』となっている。
それらは能力の強さや使い勝手の良さなどで決められる。
その能力を伸ばす為に能力専門の学校ができた。
それがここ、『国立能力育成学校』である。
能力についてや自分の能力の訓練など学んでいる。
まぁ、この程度だろう、と内心思っていた。
すると
「大野君、大野慎也君、話聞いてますか!」
そう言われ辺りを見回したら、クラスメイトの視線が俺に向けられていた。
少し慌てて、
「聞いてますって、話し続けてください」
そう言い返した。
「もう、授業終わったら話があります。職員室まで来てください。」
そう言い放った先生の言葉にクラスのみんなは笑った。
俺は肩を竦め、外の景色を見た。
そして自問自答した。
俺は本当にこの場にいていいのか、と。
けれど考えても答えは出なかった。
そして場所は職員室。
只今俺は優子先生のお説教中である。
「分かっていますか?あなたは人より多く能力について知らなければならないのです。」
そう言われ俺は軽く返事をした。
「そう言われてもですね、この学校少しおかしくないですか」
そう言い返した俺に先生は、
「どこがおかしいんですか?」
そう言ってきたので今まで思ってい方ことを言った。
「そもそもクラス分けに悪意があるじゃないですか。クラスは能力のランク順でって。」
そうなのである。ランクが高い人から、Aクラス、Bクラスとなっている。
そして俺は一番下のEクラスである。
「それは昔からの規則なので変えることはできません。その話はいいのでもっと勉強してください。」
「勉強しろって言われるとしたくなくなるんで、次は優しくお願いします。」
そう言いつつソソクサと職員室から出ようとしていた。
「ちょっと待って、大野君。君も分かってはいると思うが、来週からアレが始まるから、覚悟しとくように。それじゃーね」
そう言い俺はビクッと肩を震わせた。
「しつれーしましたー」
と呑気に職員室から出て行ったが気分はそう気楽ではない。
来週からアレ、か。
そう思いつつ寮に帰った。
アレを説明する前に軽くこの学校について説明しよう。
この学校は能力を伸ばす為に作られた。
この学校には色々な設備が整ってある。
まず、寮である。一人一部屋と中々のものである。
テレビ付き、風呂もある、トイレもある、とてもいい寮である。
次に訓練場。学校の敷地はとても広く訓練場は五つある。
本校舎の近くに一つ、寮の近くに一つ、あとの二つは適当な所に建てられ、残る一つは、学校のど真ん中。他の四つより遥かに大きい。色々な行事に用いらている。
そしてプールに食堂、剣道柔道場があり、グランドもある。
とても豪華な学校である。
そしてアレについて。
アレとは『全学年ナンバーワン決定戦』、略して『全ワン』である。
上位入賞すれば景品やらなんやらが手に入る高ランクの人にとっては楽しい行事なのかもしれない。
けれど俺みたいな低ランクには嫌な行事だ。
よって俺は『全ワン』は嫌いだ。
次の日俺は好調に呼ばれ、授業前に校長室に来ていた。
トントン、と校長室の扉をノックした。
俺は今とてつもなく緊張していて、心臓がバクバクである。
「どうぞ」
そう言われ俺はゆっくりと扉を開けた。
「中に入れ、話がある。」
そう言われ、俺は一礼し、校長先生の前に立った。
「二年E組、大野慎也です。呼ばれてきましたがなんのご用でしょう?」
そう尋ねた俺を一瞥し、軽く頷いた。
「私はこの学校の校長、大門寺玲だ。単刀直入に言う。君は『全ワン』で1位になってもらう。」