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人形師と理想人格  作者: 弥七茂右ヱ門兵右衛門桜江
第零章
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第六話

 タルは村に行き、ニーナの家を訪ねた。

「嘘よ……タル、ごめんなさい、嫌……」

 死者の来訪にニーナは震え、神に祈りを捧げた。

「ニーナ、安心しろ。今から事情を話す。村のみんなを集めてくれ。それと、服を貸してくれ」


 日の暮れには、村の中央の広場にほとんどの村人が集まった。

「俺はイリスの神官だ。この村に憑りつく呪いを断ちに来た」

 村長と思しき老人が、タルの前に跪く(ひざまずく)

「どうかお許しを。私は村の者を殺したくなかったのです」

「わかっている。まずは話を聞け。お前らは俺を殺して生贄として捧げたが、それでは儀式は成立しない」

 村人の一人がニーナを守るように抱く。

「だがもう儀式は必要ない。そしてこの村も襲われることはない。もう二度と生贄を捧げる必要はない」

「なぜ、そう言い切れるのですか?」

 村長は縋る(すがる)ような目でタルを見る。

「蛇神は、かつて人間だったからだ」

 蛇から聞いた話をそのまま村人たちに語り聞かせる。

 ここでこの話をする必要はないかもしれない。だがタルは禍根を少しでも残したくなかった。

「では、蛇神様は、村を守るために……」

「そんなバカな話、信じらるわけないだろう」

 村人たちは半信半疑だった。

「そうだな。じゃあ蛇、出て来い」

 蛇はうねり、村人の前に姿を現した。

 タルはてっきり、村人たちが叫びだして逃げ出すかと思ったが、村人たちはみな静かに瞠目していた。

「蛇神様……」

 村長が跪き、皆それに続く。

「村の呪いは俺が取り去った。蛇神もそれを理解した。もう二度と儀式はやらなくていい」


 タルは村の奥の岩戸を開け、そこに蛇とともに入る。

「この岩は閉めて、もう二度と開くな。俺のことは心配しなくていい」

「神官タル、この恩をどうお返しすれば良いか」

「俺が川岸で倒れてるところをお前らは助けてくれた。これはその礼だ」

 タルは洞窟の奥へ進む。

 蛇は洞窟の外を眺めていた。

「おい行くぞ」

『あ、ああ』

 白蛇の大蛇と神官は洞窟の中へと消えた。


 洞窟の奥、湖の広がる岩場。

「これで二度と儀式は行われない。安心して死ね」

 蛇を殺し、シアナを殺し、生贄たちを殺し続けた場所。

「そんなに似ていたのか。シアナに」

『……ああ。おかげで思い出せた。何もかも鮮明に』

「それならもう思い残すこともないな」

 タルは村長から貰った長剣を抜いた。

『神官よ、お前の呪いがいつか解けることを祈る』

 タルは蛇の鎌首に向けて、剣を振り下ろした。

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