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Act.52 混乱

しばらく投稿してなくてすみません!

卒業しましたよっ


追記 具合悪いな思たらインフルBでしたわ。

これ書いてた時も。。。

次話も少々遅れるかも知れませんが、ご了承くださいな。


 コルネは息を呑んだ。

それは、『エイト』の姿が変わったからだった。

先ほどまでは『いつものエイト』の姿そのままで、ただ表情が少しばかり冷徹になっただけだったのだが・・・。


 一言でいえば、その容姿は化け物だった。


 身体のシルエットは原型を留めているものの、全身の肌は黒く染まり、無数の亀裂が走っていた。

亀裂からは溶岩のような紅が覗いている。

そして臀部からはまるで尻尾のように七体の種が異なる竜・・・その首から上が生え、それらに混じって竜種と同程度の大きさと迫力をもつ白蛇が生えていた。


 竜種も白蛇も、エイトの意思に従って動くようで、エイトの周囲に危険が潜んでいないかと随時警戒し、目を光らせていた。その全てが『黒嵐竜クラス』の強さを秘めているだろう。

 そして、特に頭部の右目周囲は変化が著しかった。

右目の白眼部分は黒く変色し、瞳は青緑の硝子玉を嵌め込んでいるかのように感情を感じられない。

その右目の少し上・・・額の右側には、竜人や魔人のような角が生えていた。


 面影が残るのは体型と左目くらいで、他は別人。

最もエイトと一緒にいた時間の長いコルネは、困惑し、見間違いではないかと目を疑った。

そして、小さく声が洩れた。


 「エイト・・・さん? 無事・・・? 怪我は・・・」


 その言葉に、いつものエイトなら「大丈夫大丈夫!」と笑いながら返すはず。

コルネは不安そうに笑みを浮かべながらも必死に『平常心』を演じて、問いかけた。


 それに対し、エイトは一言、


 「・・・・・・お前なんか知らないよ」


 と、底冷えする声で返答し、それを聞いたモモは思わずリョクの腕に抱きつく。

変わり果てたエイト。コルネは苦い顔をして俯く。

ドグマは自らが眠りにつく以前のエイトと今のエイトを見比べると、そのあまりの変貌に何も言うことができなかった。

 ルシエラも同様、コルネとの感覚共有でその計り知れない違和感に吐き気すら覚えた。


 竜が一斉にこちらを向く。

殺気も警戒心も込められていない、()()()目。

エイトも竜たちと同様に、まったくもって興味がないとでもいうようにコルネたちを見下す。



 そんなエイトを前にして行動に出られない一行を見た『手練れ』が動いた。

中性的な顔に微笑を浮かべ、『洗脳色』と忌まれる紅の瞳に()()()をたたえ、青髪を揺らしながら『手練れ』は言った。


 「これが君の相方の本性、だよぉ・・・? どう・・・??」


 シスターのような服装だからか、その姿は慈愛に満ちているようにすら見える。

しかし『手練れ』の笑みには狂気が見え隠れしていた。



 信じたくない言葉を聞かされたコルネは、顔をしかめる。

すると『手練れ』が半開きの口を三日月に歪めた。


 「紹介が遅れちゃったねぇ、僕は《調和の使徒》ホーリー・モーランだよぉ・・・」


 使徒を名乗った『手練れ』は、コルネの脇に控える黒嵐竜・・・フラウヴィアを見て不満げに顔を歪めた。それもそうだ、話によればモーランはフラウヴィアの前主人ともいえるのだから。

紅い視線に射抜かれたフラウヴィアは、ぐるると哭くと身体をちぢこませた。


 目を細めたモーランは一歩後ろに下がる。

そしてエイトの肩に手を置き、()()()に語りかけた。


 「ほらぁ、君も自己紹介、しようねぇ」


 エイトはそれを嫌がることなく受け入れ、小さく頷いたあとに無愛想に告げる。


 「《奪取の使徒》、シーカー・エイト」


 その言葉に反応するように、ルシエラの肩が跳ねた。

簡潔に自己紹介を終えたエイトはコルネたちそっちのけで竜たちを撫でていた。


 コルネもリョクたちも、誰もが呆然としている中で、ルシエラだけは体を形成している金砂を流動させ、そのまま竜の形態をとり、警戒心を最大限に強めた。

この神殿にて永い時を過ごしてきたルシエラは知っていた。

この、《碧の神殿》では、かつては空を司る神を祀っていたことを。

そして、突然この神殿は神性を喪ったことを。


 神を喪った神殿で、神官たちは言っていた。

---使徒がくる。神に仇なす者が殺しにくる。

その数日後から神殿はもぬけの殻だった。


 その時に感じたものと同じ気配を、今のエイトから感じたのだ。


 エイトはルシエラの警戒心を感じ取ったのか、笑い出した。

楽しそうではない、馬鹿にするような笑い方で、ルシエラの恐怖心を煽る。

ルシエラは『コルネさん、ヤバイっスよ』と小声で言ってから感覚共有をした。とたんにルシエラの記憶がコルネに流れ込み、コルネはその情報量に一瞬顔を強張らせる。

 そして、その後に全てを理解したのか、コルネは息を呑んだ。


 「・・・お前はあの時の生き残りかァ?」


 急に発言したエイトに、ルシエラが反応する。

しかし視線を向けた先には既にエイトはいなかった。

怪訝な表情をするルシエラ。

すると、そのルシエラの肩がトントン、と二回、叩かれて・・・その耳に届く掠れた声。


 「入り口が開かなくってさ、諦めたんだけどなぁ。 まだ生きてたんだね。次に俺が目覚めるときには死んでるかなぁって思ってたんだけど・・・」


 振り向けば、そこにエイトがいた。


 コルネはハッとして剣に手をかけて、ドグマはリョクとモモを後ろに庇うように立つ。

逃げないと、とルシエラは思った。逃げないと、殺される、と。

だがその体はエイトの放つ殺気にあてられたのか感覚が鈍ってうまく動かせない。

 ルシエラの視界には笑っているエイトと、滑るような動きで自分の腹部に迫っているエイトの手が映り、やがて熱が溢れる。


 『が、ぁ・・・っ!?!?』


 砂の身体を貫いた腕は、触れた砂を融かす。

その一撃は、狙っていたのか偶然なのかはわからないが心臓(コア)をかすっていたので、身体を保てなくなりそうだった。


 ルシエラは冷や汗をたらしながらもエイトを睨む。

するとエイトは興味を無くしたようにルシエラから離れた。


 崩れ落ちるルシエラ。

ギリギリ形を保っているが、竜化ができないほどに消耗していた。

すぐにコルネが駆け寄り、ルシエラの容態を確認する。コルネは「これ以上は危険だ」と判断し、ルシエラを送還。その場にはコルネ、ドグマ、リョクとモモ、それから二人の使徒が残る。


 一瞬にして空気が張り詰め、しかしコルネ陣営は絶望に近いものを感じていた。

勝てる気がしなかった。


 「じゃーぁ始めるぅ?」


 そんな空気に似合わない間の抜けたモーランの声が響く。


 同時にモーランの身体が変わった。

エイトと同様、黒い異形に。

亀裂から覗く光は蒼く、竜人か魔人のようだったエイトとは違い鳥のような翼を生やしているが、同じような『歪んだ気配』を感じる。


 「僕は世界に救いをもたらす使徒、その代表!! 世界を歪んだ神から救い、壊し、再構築するのさっ!!!」


 両腕を広げ、高らかに宣言するモーラン。

その声、そして表情には、確かな狂気を含んでいて、それが『正しいこと』だと信じきっているようで、エイトも同じことを考えているようで、コルネは嫌な汗をかく。


 こいつらには、それをできるだけの実力がある。


 本物の、『化け物』だ。




・・・




 エイトは視界が光に埋め尽くされたので、思わず目を瞑ってしまう。

そうでもしなければ失明してしまいそうなほどの光量だったからである。

そして彼が再び目を開いたときには、僅かな照明があるだけの狭く暗い部屋にいた。


 ここが祭壇。

何故かそう思って、それから臀部に違和感を感じた。

確認しようにも身体は動かせず、そもそも暗すぎて、未だに慣れていない目では見えなかった。

 そんな中で、暗闇にぼんやりと浮かび上がる人を視認した。

自ら発光しているようで、シスターの様な服装で微笑みをたたえている様子は、神々しくすら感じられたが、すぐに違和感が勝る。


 その姿に見覚えがあった。

その人物は『手練れ』に酷似していて、しかしそれだけではないだろう・・・まるで『見知った者』であるかの様な感覚に襲われたのだ。


 『久しぶりだね、シーカー』


 語りかけられ、エイトは身じろぎした。

シーカー、なんて知らない。誰のことを言っているのかわからない。なのに自分の口はすんなりと開いた。


 「あぁ、ホーリー」


 知らない自分がいるようで、そのままゆっくりと全てを知っていく。

夢の続きの意味も、『使徒』のことも、全てが思い出される。

それは確かな強制力をもって、おそらく目の前の人物によって起こされている現象だろう。


 『まだ目覚めたのは僕らだけだよぉ』


 「そうか・・・ では俺が二人目なんだな?」


 『そうなるねぇ』


 暗闇で会話が交わされる。

知らない自分と知らないはずの人物とが、親しげに会話していく。


 エイトはその口を強引に閉じ、それから掠れた声で問う。


 「何が、どうなって・・・」


 そこまで言ったところで、言葉に詰まった。

自分はシーカーじゃないか。今さら何を問う?

使徒だということは、紛れもない事実なのだから。



 ホーリーが、モーランが笑う。


 『やっと認めたんだね。受け入れたんだね。 これで、完全な使徒だ』

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