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異世界ニートが仕事を始めた ~シーフでチートな初仕事~  作者: 榛名白兎
第三章 空游竜の巣窟
51/56

Act.51 再臨

ギリギリ間に合ったと思ったら、色々起きて・・・混乱してるうちに18:00過ぎてました。


まぁ、その結果この時間に投稿することになりました。

きりのいい時間に投稿したかったんですよ。

しかし遅れたのは紛れもない事実。申し訳ないです(><;)


 モモはランスを構えた。

にもかかわらず、コルネは剣を構えない。

それどころか剣を抜く素振りも見せず、ただただ笑ってモモを見る。

 不気味なその様子に、モモは警戒心を強めてコルネを見つめ返した。


 少し距離が離れた場所で鳴り響いていた轟音は今は止み、再び猛威をふるっていた嵐も次第に消えていく。リョクが勝ったのだろうか・・・。




 コルネがふらりと一歩を踏み出した瞬間、その姿がかき消えた。


 モモは息をのみ、瞬時に、周囲に糸を張り巡らせる。

するとその糸に気付かずに触れたコルネの現在の位置が把握できた。

 モモはすぐに跳躍して糸が張られた場所から距離をおき、振り返る・・・が、その時にはコルネは数メートル先にまで接近してきていた。思わず身体が強張る。

小さく舌打ちをしてから、モモはランスの柄でコルネの拳を受け流す。


 受け流したはずだが、コルネの力は強大過ぎたようだ。

モモは痺れた両腕に力を入れてランスを握り直すとそのまま反撃にでた。

妖精の言霊を駆使してコルネに敵うほどの腕力を手にすると、その横凪ぎの一撃は必殺の威力を持つ。


 モモ自身がギリギリ目で終えるほどの速度で振るわれた槍は、しかしコルネに当たることなく空振った。その動きを強制的に歪め、コルネを追随するように軌道を変える。


 「くっ・・・!!」


 腕の骨が軋む。

モモは痛みに顔を歪めながらも槍をふりきった。

しかし残念なことに、その穂先はコルネの服を切り裂くに留まり、逆に隙を生む。

 その隙を逃すほど優しくもないコルネは、握りしめた拳を突き出した。

咄嗟に顔を庇うモモだが、拳は脇腹を目掛けて振るわれた。

無防備な脇腹に強化された拳がめり込み、モモが苦渋の表情を浮かべながら吹き飛ばされた。




・・・




 リョクは睨むように自分を見ている黒嵐竜に笑いかける。

たったそれだけなのに怯えられたのは何故だろう?

首を傾げながら、リョクは片付けていた弓を取り出す。

 ・・・・・・これ以上この黒嵐竜を放置してても意味がないから、もう殺そう。


 リョクは無造作に弓を構えると、優しげな声音で囁いた。


 「一瞬で逝かせてあげますから、無駄な抵抗はしないでくださいね・・・?」


 そして、その瞬間リョクの構えた弓に炎の矢が現れる。

それだけなら良かったのだが、その炎の矢は普通の《フレイムアロー》の大きさになっても肥大し続け、ついにリョクと同じくらいの大きさまでになった。

それが発する膨大な熱で床が溶けるが、どういうわけかリョクには影響がなさそうだ。


 そのフレイムアローの威力を想像して黒嵐竜は息をのむ。

それが直撃すれば自分の命はなく、しかしリョクは外す気など毛頭ないとわかっているのだろう。

その恐怖は計り知れない。


 リョクは恐怖のあまり動けなくなった黒嵐竜を見ると目を細めて言った。


 「ふふ、最強と謳われた竜種が、無様ですね」


 黒嵐竜にはその言葉に反論する術を見つけることなど到底見つけられなかった。

そこまで強くもないパラライズスパイダーなんかに負けているのだから。

たとえそれが上位種でも・・・。


 その瞬間放たれた致死性を秘めた炎の矢。

それを見ると、黒嵐竜は『あぁ、死ぬのか』と自然と死を受け入れることができていた。

何故か黒嵐竜は心と身体がとても軽く感じられて、死ぬ間際にしては妙に気分が良かった。

 眼前に迫った炎の矢が、あと数十センチメートル・・・。


 そんなとき、リョクは思わず二度見した。

強力な洗脳状態にあったはずの黒嵐竜の(ひとみ)の色が、洗脳状態の()()から、通常状態の()()に戻っていたのだから。


 リョクはそれが見間違いなんかじゃないことを確認すると、すぐさまフレイムアローを方向転換させて地面に向かわせ、そのままフレイムアローは地面を抉った。


 呆気にとられる黒嵐竜。


 自らに迫っていた死が一気に遠ざかるのを感じた。

まさか、と小さな予測が頭によぎり、黒嵐竜は叫ぶ。


 《貴様・・・!!!生きて我に罪を償えというのか・・・!!!》


 激昂する黒嵐竜と正反対に、リョクは淡々と告げる。


 「貴方はもう自由ですね。貴方はもう、縛られていない」


 はじめはその言葉の意味を汲みきれず、黒嵐竜は首を傾げる。

しかし少しすると理解したのか、黒嵐竜は自らの身体を確認して、リョクが見てもわかるほどにぱぁっと表情(かお)を耀かせた。

 黒嵐竜は『主』から解き放たれたのだ。


 「じゃあ早速、コルネの精神汚染を解除してもらいます。いいですね?」


 《あ、あぁ・・・》


 黒嵐竜は逆らうこともできずにコルネの精神汚染を解いた。



・・・



 モモはコルネに圧倒されていた。

もともと全力のコルネに勝てる自信は無かったが、まさかここまでとは思っていなかった。

足止めや言霊の解除くらいならできるだろうと甘く見ていたのだと実感した。


 吹き飛ばされたあとすぐに立ち直り、追撃しようと狙ってきたコルネに応戦したものの、まったくもって歯が立たなかった。


 どれだけ本気の一撃を放とうとも、それはひらりとかわされた。

どれだけ全力でかわそうにも、モモはコルネの拳をかわせなかった。

着々と増えていく焦りは、最高潮に達しようとしていた。


 その結果モモの強みである『冷静さ』がなくなった。



 「うっ・・・・・・!!!」


 モモはコルネの回し蹴りを喰らって身体をくの字に折る。

内臓にまで到達しそうな衝撃が響き、吹き飛ぶのは耐えたがよろける。


 そこにさらにウォーターバレットが展開、そのまま撃ち抜かれてモモは血を吐いた。

十にもおよぶ水の弾丸がモモの四肢を貫き、回復させる暇もなくモモは倒れこんだ。

モモは急いで起き上がり傷を治癒させようと試みるが、それより速くコルネがモモの髪を掴んで上に放り投げ・・・抵抗できずに落ちてくるモモを殴ろうと・・・




 その瞬間、コルネの頭の中が鮮明になり、今の状況に混乱が生じる。


 (な、なんで私・・・モモに攻撃を!?)


 そして、咄嗟に拳を止めて、落ちてくるモモを受け止める。

コルネは受け止めたモモの傷の多さに絶句。

急いで治療しようと優しく床に横たわせたとき、コルネの頭に記憶が流れ込む。


 モモを殴った記憶とか、蹴飛ばした感触とか、到底思い出したくもないような記憶が。

同時に罪悪感に苛まれてそのまま片膝をついてしまう。


 「コルネ、無事ですか~?」


 その声に気付いてかろうじて振り返ることができた。

すると、リョクがほぼ無傷で手を振っていた。

しかしその途中に目に入った光景は、意識を失う直前とは大違いだった。


 ドグマもルシエラも倒れていて、しかし目立った傷は見受けられないので無事なのだろうと推測される。

それはまだいい。むしろどうでもいい。


 それより、何故、リョクが黒嵐竜の背に乗っているのか。


 よく見れば黒嵐竜の目の色が変わって・・・戻っていた。

比喩や表現でなく、文字通り。緋色から群青に戻っているのだ。

つまり『主』とかいう謎の存在の洗脳から逃れることができたのだろうが・・・でも何故リョクとあんなに親しげ・・・というよりリョクを敬って・・・る?


 首を傾げるコルネ。

するとリョクは黒嵐竜の背から飛び下りて告げた。


 「この黒嵐竜、コルネの召喚獣・・・従魔になってくれるらしいですよ~」


 「・・・え?」


 コルネはまたもや首を傾げる。

一瞬、リョクの言葉を理解できなかった。


 しかし、理解したとたんに逆に混乱が深まり、「え、え?」間抜けな声をあげてしまう。

何がどうなってそんなことになったのか、まったくもってわからない。

というか、私が意識をなくしているうちに何があった。


 コルネは思わず説明を求めようとリョクに鋭い眼光を向ける。

リョクは怯みながらも説明を始めた。





 結果。


 コルネの従魔に《黒嵐竜・フラウヴィア》が追加された。


 契約の際に名前を聞いて《我はフラウヴィア・クリスタ・オリヴェマシー・・・(以下略)》と答えられたために、呼びやすいようにと、新たな名前を《フラウヴィア》と取り決めたのだった。

さすが竜種というべきか、フラウヴィアは齢が二千に迫るほどの長寿な竜だった。


 「じゃ、ラヴィ、『形態変化』。」


 コルネが、彼女だけが呼ぶことを許された愛称で呼ぶと、フラウヴィアはぐるると鳴く。

そのまま身体を小山ほどの大きさからだんだん縮めて・・・。


 最終的にはフラウヴィアは子供竜に見えるようなサイズまで小さくなった。

どうやら他にもいくつか変化できるらしいが、今はその必要がないのでそのままにする。

 道を阻んでいた黒嵐竜が仲間になったので、コルネたちは先に・・・エイトがいるであろう場所まですすめるのだ。はやく進みたい。


 コルネは真反対に位置する祭壇の間への入り口を見据える。

この先に《主》がいるかもしれないのだ。警戒心が強まる。


 その時だった。





 エイトが拐われたときと同様に床に『陣』が浮かび上がった。


 それぞれが武器を構えるなか、その光輝く『陣』から二つの人影が現れた。



 片や、エイト。

もう一人は、蒼い髪と紅い瞳のシスター。


 その容姿には見覚えがあった。ここに来るときに保護及び死体回収が依頼されていた、通称『ホーリー』というSSクラスの冒険者の容姿に酷似していたのだ。

おそらく本人で間違いはない・・・しかし、そう思いたくはなかった。



 「『手練れ』・・・!?」


 コルネが呟いた。


 しかし、それよりもエイトの様子がおかしいことの方が気がかりだった。

何故、コルネたちを見ても反応をしないのだろうか。

何故、無表情でこちらを見ているのだろうか。


 そう疑問に思ったとき、エイトが言う。



 「・・・・・・"はじめまして"」


 彼の『見た目』が、急変した。

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