表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ニートが仕事を始めた ~シーフでチートな初仕事~  作者: 榛名白兎
第三章 空游竜の巣窟
50/56

Act.50 黒嵐竜、されど通常種

かなり遅くなりましたが、50話です!

10話を投稿できたときを遥かに上回るこの達成感・・・!!!(笑)

完結できたらどれほど嬉しいのでしょうかね。踊ったりしそう。


話を戻しますが、今回の更新はかなり遅くなりました。

そろそろ受験なので・・・(´・ω・`;)

ですが週に最低一回は更新しますので、見放さないでくださi((


では、本編へGo!!


 リョクの眼前には最強最悪として知られている竜。

だがしかし、リョクにはそれの力量が自らにとって脅威だとは思えなかった。


 反応からして、この黒嵐竜は魔物言霊を使えない。

つまり、(コイツ)は『黒嵐竜だがその能力は種族内では平均以下で、魔物言霊を使えるほどの力量ではない』ので、『リョク()にとって、下位の生物』ということだ。

 それを確信できたリョクは、今まで『万が一』『念のため』と攻勢にでられずにいた姿勢を百八十度変えた。

ここからは、狩りの時間だ。



 「遺骸の皆さん、さぁ、久しぶりに遊びましょうね・・・!!!」



 天使かと見間違うほどの笑顔で、緑の怪物は緑の異形共に語りかける。

黒嵐竜はそれを見ると見るからに様子がおかしくなる。

それまで余裕ぶっていた態度が豹変し、焦るような挙動を見せたが異形は止まらない。


 初見の黒嵐竜でもわかる。

この異形は単体でリョク・・・あるいはそれ以上の()を持っている。

しかし黒嵐竜の感じた僅かな恐怖はすぐに塗りつぶされた。

黒嵐竜が「主」と崇める存在、黒嵐竜を遥かに上回る力量の持ち主である存在からの『洗脳(ご命令)』は、黒嵐竜の恐怖を興奮に、絶望を狂喜に変換させていた。


 異形が一斉に言霊を放つ。

自身の分身のような緑の炎が隙間なく撃たれ、黒嵐竜の身体は一瞬にして炎に包まれる。

誰もが黒嵐竜の死を確信するであろうその光景に、リョクは笑顔を翳らせた。


 (・・・これで仕留められるとは思いませんけどね)


 炎の中から溢れ出る殺気は、炎を受ける前より大きくなっている気もする。

リョクは黒嵐竜が炎を蹴散らすより先に、再度炎を巻き起こす。


 一度目の炎を散らすために力をためていた黒嵐竜は、二度目の炎に圧されつつもかろうじて炎を身体から振り払う。炎によって()()()()()皮膚(うろこ)から異臭がした。


 リョクは顔をしかめるが、その間にも黒嵐竜は腕を振り回して異形たちを葬っていく。

手足が千切れ、体液の代わりに炎を振り撒きながら、物言わぬ屍と化す異形。

地面に横たわる異形を一瞥しほっとしたように息を吐き、自らの体を再生させていく黒嵐竜。

 その目の前で、異形が増えていく。

一瞬にして戦闘体勢に戻った黒嵐竜だが、その足元で蠢く異形たちの残骸が、ブクブクと泡を立てて肥大し、そのまま新たな異形を形作る。

倍以上に増えた異形を前にして、黒嵐竜は鼻息荒く言った。


 《ほう、分裂させるべきではないのだな・・・!!》


 同時に雷を纏うブレスが放たれ、しかしリョクはそれを危なげなくかわす。

リョクの支配下にある異形の群は一部バラバラに弾けたが、それもまた増殖していく。


 ゴ○ブリを連想させるその生命力に、黒嵐竜はたじろいだ。

リョクはそれを見て再び笑う。


 「倒したければ、粉々・・・いや、何も残らないくらいまでヤらないとだめですよ。 まぁ、俺が死んでも消えますけどね・・・・・・」


 そのまま、笑顔で続ける。


 「でも、貴方にはできませんよ」


 まるで挑発しているように無防備な体勢で、リョクは言い切った。

リョクの足下からは、死体が墓から這い出てくるように異形が生まれでてくる。

それらの異形は人間の形をとることなくリョクにまとわりついた。


 まるで部分鎧のようにリョクをおおった異形は、どろどろとした不定形から固まっていくと、本物の金属のような光沢を放ち始めた。見かけ倒しではなく相応の硬さがありそうだ。


 普段なら挑発に乗るまいと冷静を保つはずの黒嵐竜だが、収まらない興奮が『この下等生物と近接戦闘をしてみたい』という欲求を沸き起こさせる。

感じていたはずの死の恐怖はもう欠片もない。

ただ目の前にいる者を消すことしか竜の頭にはなかった。


 「じゃ、いきますよぉ・・・」


 少し気の抜けたような声を出して、持っていた弓をしまいながら突撃するリョク。

リョクは異形共でも追いつけないほどの速度をもってして、黒嵐竜に肉薄する。


 同時に黒嵐竜がリョクを視界に捉え、その大きなあぎとをつきだした。

リョクを食らおうとしてとった行動だったが、そんなわかりやすい挙動に気付かないリョクではなく、黒嵐竜の牙と牙がぶつかり合いガキィンと音が響く。

その間にもリョクは竜の腹の下に移動し、異形の鎧・・・そしてそれに付属していたガントレットに包まれた右腕で殴りかかる。右腕はぼろぼろに焼け爛れた竜の鱗をいとも容易く突き破り、周辺の臓器にまでも影響を及ぼした。


 たった一撃で大ダメージを与えられた黒嵐竜は傷口と口の端から血を流す。

リョクはそのまま左腕を振りかぶって殴りかかるが、そうはさせまいと竜が抵抗する。

 じたばたと、近くにリョクがいる状態で暴れるものだから、リョクは「土産に」とフレイムランスを同時に四本撃ち込んでから距離をとる。


 リョクが離れたことを確認した黒嵐竜は暴れまわるのをやめて言霊で傷を塞ぐ。

リョクはあくまでも時間稼ぎが役割となっているので、追撃をすることなく回復を待った。


 仕切り直しとばかりに一旦殺気が薄れる。

両者共に外見は無傷、しかしリョクと黒嵐竜の『無傷』の間には大きな壁がある。

強さでもって圧倒した故の『無傷』と、相手の情けをもらい回復させた結果の『無傷』は違う。

 プライドの高い黒嵐竜は、その現実に怒りを覚え、闘志を燃やした。


 リョクはそんな情けない黒嵐竜に一言、


 「貴方、黒嵐竜の中でもかなり下っ端、それも使い走り程度の雑魚ですよね?」


 と告げる。

それが開戦の合図となり、咆哮をあげた黒嵐竜が数十個のアイアンバレットを放ち、闘いが再開された。

 対するリョクは、十数体の異形を向かわせて応戦。

防壁でアイアンバレットの弾道を逸らしながら異形の後を追うように近付いた。


 「これならどうです?」


 楽しげに、余裕綽々と突き進むリョク。

それではいつか足許を掬われるぞ、などど言えぬ立場の黒嵐竜はグルルと唸る。


 異形が散り散りになるが、リョクはさほど気にかけることもなくフレイムランスを待機状態に。

リョクはそのフレイムランスを一ヶ所に集めると、ふふ、と笑った。

それはリョクがまだ直には使いこなせない言霊、《フレイムインパクト》。

 凝縮された炎は赤ではなく太陽のような光を放つ。

リョクは少し汗を滲ませながらフレイムインパクトを放った。


 黒嵐竜はそれをブレスで受け止めようとする。

実体のあるものに触れれば起爆するというこの言霊の性質を知っているからこそ、雷を纏わない単純なブレスで対応した・・・・・・のだが、リョクはそれを見越していた。

 長命である竜種が知らないなんて、甘い考えは持っていない。


 「ざーんねん」


 リョクは心の中で「ただのフレイムインパクトじゃないんですよねー」と思いながら言った。

刹那、フレイムインパクトが爆発した。


 嵐にぽっかりと穴が開き、黒嵐竜が十メートルほど吹き飛ばされて止まる。

咄嗟に防御の姿勢をとったのか思ったより損傷は少なさそうだが、開いていた口の中は火傷で酷い有り様だった。皮が剥がれて少々グロいことになっている。


 リョクは情報を流すような不注意な魔物ではないので、ドヤ顔になり、心の中で笑う。

高位の冒険者や妖精、魔物などは言霊を自分にあった形に改良・改造する技術を研く。自分も例外ではなく、魔物言霊だって色々な使い方ができるように改良したのだ、と。


 そんな脳内自慢を知らない黒嵐竜だが、実際に受ければさすがにわかる。

改造されたフレイムインパクトのせいで回復に力を割きながらも警戒を強めた。


 リョクはそれを確認すると再び回復を待とうと手を止める。


 しかし黒嵐竜はそれに対して苛立ち、折角待ってくれていたのに、リョクに襲いかかる。

怒りと本能に身を任せての突撃だったが、リョクは心底意外そうに目をわずかに見開くと、さも慌てた様子などなく黒嵐竜の爪を受け流す。

 黒嵐竜は勢いのまま身体ごと突進するが、それも届く前に、リョクは逆に自分から蹴りを叩き込む。

すると突撃したはずの黒嵐竜の身体が停止し、それどころか突撃と逆方向に吹き飛ぶ。


 黒嵐竜は再び十メートルほど吹き飛ぶと、ピクピクと痙攣する。

リョクを見れば、その脚に纏っていた異形の鎧が変形してたくさんの(やいば)を生やしていた。

黒嵐竜の身体にはそれによってつけられた裂傷が残った。


 鎧の変形をもとに戻したリョクは、にっこりと天使の笑顔を見せた。


 「いつでも殺せるんですから、抵抗しないでよ」


 敬語を使わずに告げたその言葉が本気とわかり、黒嵐竜は戦慄した。

リョクが言っていた通りにこの黒嵐竜は下っ端中の下っ端、黒嵐竜の中では最下位に迫る強さだったが、それでも他種族から見れば最強を名乗るに相応しいほどの力を持っていると思っていた。

 その自分が、よもやパラライズスパイダーなどという雑魚の・・・上位種に負けている。

それどころか情けをもらってか命を握られながらも生きているという、この状況。


 うちひしがれて項垂れる黒嵐竜を視界の端に捉えながら、リョクは視線を移す。

彼の視線の先には妹・・・モモが立ち尽くしていた。

力の流れからコルネの精神汚染を解いたのかと思ったが・・・様子がおかしい。

モモが急いでコルネから距離をとるのを見ていると、コルネが立ち上がるのが確認できた。


 コルネは笑っていた。


 「さっさと終わらせて・・・助けますかぁ」


 異常を感じ取ったリョクは頭をガリガリと掻きながら呟く。

黒嵐竜は着々と傷を治癒させていき、どうやって生き延びたものかと必死に考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ