Act.5 空中戦の開幕
初めての戦闘シーン。
苦手なので大目に見てください(泣)
エイト達が新たな仲間を迎えた、ちょうどその頃・・・。
空高くに存在する飛行種庭園。
その一角で竜たちと戯れる存在があった。
「随分怖がっているようだねぇ・・・」
その存在は、我が子を慈しむように竜の喉元を撫でる。
服装は修道服のような・・・暗い紺を基調とした服に、首に架かる十字架のネックレス。
空に溶けてしまいそうなほどに透き通った蒼い髪と対称的な紅い瞳。
中性的な見た目とセミロングヘアが相まって、性別はわからない。
そんな存在を空游竜は恐れているようだった。
「恐がらないでくれよぉ・・・。これから僕らは共犯者なんだぁ・・・」
修道服を風にはためかせ、存在は笑う。
それを恐れている空游竜は亜種・・・喉元を撫でられている竜のみだった。
亜種は周囲を旋回する空游竜をちらりと見る。
彼らは全員、本来蒼いはずの瞳を紅く染め上げ、亜種を見つめていた。
飛竜の飛行速度が急に遅くなる。
あとについていっていたエイトはスピードを落とし、コルネに話しかける。
「ちょ、おい・・。なんだってんだ?」
その瞬間、ドグマの鋭い警告が鼓膜に届く。
「空游竜の群れだッ・・・!!!」
目的地が迫っているというのに、何ともタイミングの悪いご登場だ。
エイトは腰からナイフを抜くと慣れない手つきでそれを構えた。
コルネは剣を地面と垂直に構え、ドグマは炎を撒き散らす。
『グォアアアアァァァッ!!!』
戦意があると判断した空游竜たちは、野太い咆哮とともに向かってきた。
先制したのはドグマの言霊。
「炎眷族!」
ドグマの髪が激しく揺らいで、眷族がいくつも召喚された。
そして、小さな雀のような外見をした眷族は群れをなして空游竜に襲いかかった。
眷族が一体目の空游竜に触れた瞬間・・・
・・・眷族を中心として小爆発が起きる。
「ヒャッハーーッ!!! 今回もヤっちゃうゼーーーッ!!」
出会って数分でキャラ崩壊を遂げたドグマは、眷族を送り出しながら獰猛な笑みを浮かべた。
「・・・俺も始めるか!」
エイトは若干引きながら、空中歩行の恩恵であるステータス補正を利用した膂力で空游竜に肉迫する。
空游竜は射程内に入ったエイトに前足を振り下ろす。
だが、その前足は空振りに終わる。
「えっとー・・・ここで!」
エイトはいつの間にか空游竜の腹の下に移動していた。
エイトは余裕の表情を作り、空游竜の柔らかな腹部に狙いを定め・・・
「来い剣!召喚1、剣!! かーらーのー・・・一刀両断っ!!」
・・・剣士の中級言霊をぶっぱなした。
言霊の輝きを纏った一撃は、剣の刃が届かぬ距離まで・・空游竜の背にまで届いた。
空游竜は動きを止めると小さく声を洩らし、エイトを避けるように二つに分かれて落ちていった。
綺麗に真っ二つとはいかないが、竜種を一撃で倒したのだ。
「練習した甲斐があったな・・・!! まさか竜種が一撃とは!」
満足げに頷きつつ、エイトはコルネの援護に向かう。
「・・・今のって、エイト・・・!?」
眷族の爆発から最小限の動きで逃れつつ空游竜を斬っていくコルネの耳に、剣士の言霊が届いた。
声からしてエイトであろう。
コルネはエイトの無事を確認しようとして、落ちていく空游竜を目の当たりにした。
碧眼が驚愕に見開かれる。
その、一瞬の油断を好機とみた一体の空游竜が迫る。
「しまっ・・・!?」
気付いたときには空游竜はすぐそこだった。
飛竜に指令をとばしていては間に合わない。
今から防御の言霊を唱えたって・・・。
迷いを捨て、コルネは攻撃を選んだ。
「斬撃!!」
初級言霊故の、純粋な武器の攻撃力に頼った攻撃だった。
斬撃は竜の向かってくる勢いに助けられて、鼻の部分の硬い皮膚を断つ。・・・だが、足りない。
鼻に浅く傷を負った竜は、咆哮を上げながら傷つくのを気にせずに剣をめり込ませる。
・・・その持ち主を喰らうために。
近付く死。
コルネは言霊をもう一度唱えようとした。
だが、突然、空游竜は動きを止めた。
「・・・眷族拘束ぅ!!!」
近すぎてよく見えないが、ドグマの言霊だろう。助けられたことはわかった。
しかし危機なのは変わらない。
動けないとわかった竜は、ブレスの準備を始めていた。
消えかけるドグマの作った茨の拘束。
竜の口内に集束し始めた膨大な熱。
「・・・・っ・・!!」
「気配遮断、縮地、・・・とりあえず斬撃ッッ!!!!」
息を呑むコルネだったが、その目の前で空游竜は片翼を切りとばされた。
エイトの、タイミングの良すぎる登場だった。
片翼を斬り落とされた空游竜はバランスを崩して地面に真っ逆さま・・。
感謝ももちろん、戦闘初心者に助けられた悔しさもあるが今は悔しがる余裕などない。
ドグマの眷族の爆発はそこかしこで起こっているし、それでも竜種は動きが鈍る程度の影響しか受けていない。
コルネは剣を構えなおした。