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異世界ニートが仕事を始めた ~シーフでチートな初仕事~  作者: 榛名白兎
第三章 空游竜の巣窟
37/56

Act.37 食べなきゃ生きていけないもんね!

遅れて申し訳ありません!

休みが終わって慌ただしいので、これから少しペースが落ちるかもしれません;

文字数はノルマ3000文字と設定してるのですが、思った以上に文章が浮かばない・・・!


 風を切るコルネ。

コルネは短い髪を靡かせながら走っていた。

目の前に立ちはだかる魔物、樹木、岩・・・それらすべてを剣の一閃で排除し、速度を落とすことなく進んでいた。客観的に見ると、化け物にしか見えない。

しかもその状態で果物を採ってむしゃむしゃ食べているのだから、まさに『暴食』。

何十頭もの牛と果物を詰めこんだコルネだったが、そのお腹はスリムなまま。

食べた物は何処へ・・・と思うが、そこはブラックホールなんだとでも思っておこう。

 コルネは立ち止まらずに走っていたが、不意に少しだけスピードを落とした。

その視線の先には肥え太った飛竜(ワイバーン)が眠っていた。


 「ワイバーンを美味しく食べるには・・・」


 コルネは薄く笑って呟く。

そして、強く踏み込むとワイバーンの上に高く跳び上がった。

彼女はそのままワイバーンに狙いを定めて浅く息を吸い込んだ。言霊を唱えるために。


 「ーーー『豪脚』!」


 詠唱と同時に、コルネの右足を光が包む。

コルネの脚は勢いよく振り上げられて・・・落下のエネルギーを加算した強烈な踵落としとなってワイバーンの背に直撃した。ゴキバキメキ、と生々しい音が響く。

踵落としが直撃したワイバーンは、身体をくの字に折って身悶える。

二つの翼の間を狙ったので、空中に逃れようと翼をはためかせると激痛に苛まれていた。

逃げられないことを確認したコルネは、思わず表情を歪めて囁いた。


 「・・・まず、生きた状態で毒の多い内臓を取り除いて・・・」


 その声の冷たさにワイバーンは恐怖した。彼女は本気だ。

コルネは、生に対する執着が強くてなかなか大人しくならないワイバーンに、青く輝く刀身を見せつけるようにして構える。そしてその刃をワイバーンの腹に突き立てた。

コルネは容赦なく剣を動かす・・・が、そこで『氷結』の固有能力のせいで切り口が凍る。

これでは内臓を取り出しにくいので、コルネは剣を鞘に戻す。

 一瞬安堵しかけたワイバーンだったがその期待はすぐに裏切られた。

コルネはあろうことか数時間前までの相棒(つるぎ)を取り出し、力任せにワイバーンに刺した。

暴れるワイバーン。

しかし今のコルネには勝てない。

ワイバーンの必死の抵抗も虚しく、化物(コルネ)の手によって内臓が引きずり出されていった・・・。さすがコルネ。食に関することでは手を抜かない。


 内臓を取り出したコルネは、息も絶え絶えに死を待つワイバーンを見下ろした。

ワイバーンは思った。ーーーあ、これ、終わったーーー

そして、その予想の通りにコルネから微弱な殺意と獲物(タベモノ)を前にして隠せない食欲が放たれる。

それは、彼女の振り上げた鋼の剣が無造作に降り下ろされるのとほとんど同時だった。


 「・・・血を抜く」


 わくわく♪という効果音が聞こえてきそうなほどに、コルネは楽しそうな表情だった。

彼女が剣を見ると、古い剣は刀身の半ばほどで折れていた。雑に扱ったからだろう。

だが同時にワイバーンの首もポロリと落ちたので、この剣は役目を全うしたといえる。

コルネはワイバーンを蔦で木にくくりつける。

そうして、血を抜くと同時に一人休憩を始めたのであった。


 「ワイバーンの肉は美味しいからシンプルな味付けのステーキでもいいし、こいつは脂がのってて旨そうだからマンガ肉作っちゃおうかなぁ~・・・考えただけで・・・お腹が空いちゃうな・・・」








 待つ間にささっと果物や野菜でフルーティーなソースを作った。

ソースは巨大なココナッツの殼にたっぷりとためた。枝、薪も集めたので、焼く準備は万端である。

しばらくして血抜きが終わると、言霊で軽く洗浄したのちにワイバーンの足を引きちぎった。

そして関節を外して肉の形を整え、軽く切れ込みを入れてソースにどっぷりと浸からせる。

 コルネは地面に刺した二本の枝で支えるようにして肉をセットした。

それから下にある薪を指さす。


 「炎よ ・・・ 『火種』」


 コルネはそうして苦手な炎の言霊を唱える。

すると指さした場所に小さく火が灯り、それはやがてぱちぱちと音を立てて広がり始めた。

その火は瞬く間に肉に届くまでに大きくなり、肉の表面を撫でる。

コルネは肉を回して、焦げないように気遣いながら鼻唄を口ずさんだ。


 肉は、少しすると火が通ったようだった。

試しに『鑑定』で状態を確認すると『ミディアムレア』だとわかって、コルネは待ってましたとばかりに肉にかじりついた。

歯をたてると熱々の肉汁が溢れ出して、唇を火傷しそうになった。

しかし焼きたてが美味しいので、そのままかみちぎる。

柔らかめだが歯応えがしっかりした肉だ。

肥えたワイバーンだったからか、たくさんの旨味が詰まった脂を内包していた。

噛む度にじゅわりじゅわりとジューシーな歯応えのを感じた。

ソースの濃厚な味が甘い脂ととても相性が良くて、思わず頬がほころんだ。

少し火の調節を間違えたせいか表面が焦げている部分もあったが、その苦味もアクセントとなっている。


 「ん~・・・」


 コルネにしては珍しく、マンガ肉をゆっくりを味わっていた。

だが、一口が大きいので肉はすぐになくなってしまう。

コルネは残っているワイバーンの肉に近付くと、またもや肉を切って焼き始めた。

 しかしそんなことを何度も繰り返して肉を食べているうちにワイバーン肉はなくなってしまった。

コルネは「美味しかったのに・・・」と名残惜しそうに骨を見つつ、マジックバッグに放り込んだ。最弱の竜種ともいわれるワイバーンだったが、それでも一般的には強敵であるためその素材は高価なのだ。

腹ごしらえを終えたコルネは浅く息を吐くと、もう一度山を見据えた。


 「山には何か・・・大物の気配があるわね」


 コルネはもうすでにそれを獲物としか見ていないようだった。

そして、今度は小走り程度の感覚で山に向かって走り始めたのだった。しかしそれでもかなり速い。

彼女は再び山を見る。

本当は、コルネの胸の内は好奇心と恐怖に塗りつぶされていた。

視線の先にある山の一角が地響きと共に移動していることに気付いていたからだ。

それがおそらく、『大物の気配』の正体なのだろう。

山から離れたこの場所からでもかなり大きいとわかるので、近くで見たらどれ程の迫力だろうか。

そんな大きな魔物・・・敵に、自分一人で勝てるのだろうか。

不安の方が幾ばくか大きかったが、コルネは相棒の柄に指先を触れることで安心する。

これを作ってくれた規格外な新米冒険者ならどうしているだろうな・・・と考えた。

こんなあり得ない武器を、『こんなもんかな』というように適当に作ってしまう(エイト)

思えば、エイトが依頼を受けなければここに来ることはなかったのだ。彼との出会いのおかげで愛剣『永年氷雪剣』と出会えて、自身も強くなったと思う。

だから、彼にはとても感謝しているんだ。


 前を向くと倒木が目に入った。その向こうにはキノコが覗いている。とても大きい。

コルネは幹が直径五メートルほどの倒木を軽々と飛び越える。

その先に歩いていたイノシシの頭を足場にもう一度ジャンプして、目の前に広がる巨大キノコの森にとび込んだ。


 「毒キノコばっかりだなぁ・・・ん?」


 木のように生えている巨大キノコの根元には、普通サイズのキノコも生えているようだった。

視界がキノコで埋め尽くされるという不思議な状況に陥ったコルネは、踏んだらヤバそうなキノコをジャンプで避けながらぴょんぴょんと移動した。

山の麓までこの巨大キノコの森は続いているようだったが、このままならすぐに踏破できる。

 ・・・そう考えたコルネが油断したときだった。

コルネが足場にしようとした大きめのキノコのかさが、口のように開いた。

コルネは突然足場が沈みこんだような感覚に驚いてバランスを崩す。

前のめりに倒れそうになりながらなんとか踏ん張り、コルネは足元のキノコを見た。

そして、「・・・見なければよかった」と後悔してしまった。


 コルネの足を呑み込むように開いたかさの裂け目には歯のように針が生え揃い、それが足首に深々と突き刺さっていた。痛みは感じない・・・というより、身体の感覚がほとんどなかった。


 「感覚麻痺・・・?」


 首を少し傾げながら、コルネはキノコを言霊で凍らせて捨てる。

それから即座に麻痺回復・治癒の言霊も唱えて傷を癒した。すると感覚が戻って少しの痛みを感じた。

ため息と共に顔を上げたコルネ。

その目には信じたくない光景がうつった。


 「全部・・・魔物だったの!?!?」


 周りにいたキノコは、足を生やしてかさを口のように開いて、コルネを取り囲んでいた。

コルネは頬をひきつらせて呟いた。


 「倒しても食べられなさそうだなぁ~・・・」


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