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異世界ニートが仕事を始めた ~シーフでチートな初仕事~  作者: 榛名白兎
第三章 空游竜の巣窟
34/56

Act.34 さぁ、恐怖の時間だよ

はい、予定通りにできました!


サブタイトルが思い浮かばなくて・・・なんか変な気もしますが気にしないでください(笑)

投稿のペースはなるべく戻るように努力します。


 深い闇。

ただ暗いその場所は決して広くなく、狭い一本道の廊下だというだけだ。


 その暗闇で恥も外聞もなく泣きわめく声が響いた。リョクである。

リョクは淡い光を放つ弓・・・唯一の光源をしっかと抱き締めながら泣いていた。

理由はいくつかあった。

まず一つ目は、めちゃくちゃ暗いこと。

暗くてもう・・・全然見えない。弓は光っているものの照らされる範囲は狭く、闇が際立つ。

次に、一人だということ。

仲間はもちろん、モモともはぐれてしまっている状態だ。

最後に、・・・・・・。


 ひた、ひた、ひた


 「ひっ・・・ひいぃっ・・・・・・!!!」


 何かが近付いてきているような気配と、音が聞こえていたからだ。

足音と反対方向に逃げるために、動きやすい人間形態に変化したのだが。

悲しきかな、焦燥しきっているリョクは正確に位置を探るには到底叶わず、ただ震えていることしかできなかったのだった。

そしてそれがまた恐怖を煽る。

リョクは何度も唱えたが意味のなかったランタンの言霊を呟きながら涙を拭った。

・・・俺だって、いつもは強い兄なんだ。

ただ、それはモモの前だけでの話。ただの見栄で、演技のようなもの。

自分より弱い(モモ)の後ろに隠れていたあの頃と変われていない。

 リョクは冷たい風に背筋を震わせ、凍りつくような息を吐いた。

確かに、足音は冷気と共に近付いていた。けっこう近い_______



 _______息を詰めて数秒間警戒心を最大に高めたリョクだったが、冷気も足音もすぐ近くで聞こえるのに、気配が完全に消失していた。

これはフラグじゃないか。そう考えたリョクが目を険しくしたとき。



 するり。



 リョクの首筋を撫でるように『何か』が触れて、リョクは耐えきれずに叫んだ。


 「ほらやっぱりじゃぁぁああああああああん!!!!」


 もはや敬語にしている余裕もなく、完全なるキャラ崩壊を遂げたリョクは遂に走り出す。

予想外の切っ掛けとなったが、リョクは暗闇を進み始めた。

立ち止まらないために前方には糸を展開して道を探る。

常人にはあり得ない速度でリョクは走り続けた。

だが、恐怖はついてくる。

 リョクがどれだけ本気で走っても、足音と冷気はついてくるのだ。

撒こうにも、ここは一本道。そのうえ自分の持っている弓は目立つ。もし分かれ道があっても、頼もしかった光源のせいで逃げ切ることができない。足音の間隔は変わらない。しかし、強い。力強く、地面を蹴っている。

リョクは挫けそうな心に、クエスチョンマークを浮かべた。

 ・・・歩いてる・・・走ってる。じゃあ・・・倒せる?

そんな冒険者らしい疑問を浮かべるリョクだったが、彼にはすぐに試す勇気はなかった。

せめてここにモモがいれば少しは違っていただろうに。


 リョクはそのまま走り続けるが、突如として行き止まりに直面した。

気が動転して、冷静な判断ができない。そしてそのまま・・・壁に激突した。





 そう思って痛みと衝撃に備えたリョクだったが、その必要はなかったようだ。

リョクに待っていたのは痛みでも衝撃でもなく、全身の毛が逆立つ浮遊感と恐怖だった。

そこは暗くなく、しかしぼんやりと壁が照らされているのは不気味で、なにより足場が見えない。

突如空中に投げ出されたリョクは先程の場所へ戻ろうと試みるが、振り返った先には少しの凹凸もないツルツルな壁があるだけで、そのまま彼は落ちていった。

 落ちていきながら考える。

今、自分がいる場所は、塔のように縦に長い建物。

そして、円柱の形をしていて、謎のツルテカな鉱石で出来ている。

これなら大丈夫そうだ。


 「よい・・・しょっと!」


 リョクはかけ声と同時に両手を広げ、それぞれ反対側の壁の上方に指先を向ける。

するとその指先から淡く緑に輝く糸がのびていった。

糸はすぐに壁に到達し、そのとたんにゆっくりとリョクの減速が始まる。

 リョクはそのまま落下を止めると、ぶら下がった状態で耳をすました。

かすかに水音が聞こえるので、底には水が貯まっていると推測できる。

だが、底は未だに見えない。では、自分はどれほどの高さにいるのだろうか。

気になったリョクは糸を垂らして距離をはかることにする。

リョクは右手から出していた糸を左手に巻いてから右手から糸を切ると、空いた右手から下に糸を垂らした。



 「・・・ん、糸が水につきましたね・・・。」


 百メートルずつ長くしていった結果、糸は約二・五キロメートルのばしたところで水に触れた。

というか、大雑把に伸ばしていったため少し水に浸かっているようだ。

そして、リョクが糸を切り落とそうと思ったときだった。

一際大きな水音が響くと、糸がリョクの身体を強く引っ張った。


 「んっ!?」


 リョクは予想外の力に驚き、即座に対応できない。

幸い、リョクがぶら下がっている糸はとても丈夫なので切れなかったが、あまりの重量にリョクが耐えきれそうになかった。垂らした糸を切るしかない。

 そう思った矢先、リョクを支える糸が壁から外れた。

糸自体の強度は高かったが、壁と糸の接合部を補強していなかったからだろう。

リョクは焦って垂らした糸を切ると、もう一度両手で糸を伸ばして落下を止めた。

その瞬間、下から水音が聞こえたので視線を送ると・・・

・・・なんかめちゃくちゃでかいウツボ的なヤツが跳ねて来ていた。


 存在感の強さに絶句していると、ウツボモドキはそのまま自由落下して水中に逆戻り。

ザパーンと盛大な音と水飛沫をあげて水底に消えた。


 「・・・俺が戦うべきの、ボスモンスターだったりするんでしょうか・・・?」


 リョクは絶望に満ちた眼差しで下を見つめる。

まず、これ以上下に降りようとすると、ウツボモドキに丸飲みにされるだろう。

しかし、ここからだと見えないし、攻撃するにしても水中に範囲攻撃をするか跳ねたところに集中砲火くらいしかないし、どちらも弓では時間がかかる。言霊なら短時間でも可能だが、リョクの言霊は威力は十分だがコントロールは並以下。誤って壁を壊したりしたら落下を止める手段もなく落ちる・・・。

 結局この高度を保って時間をかけて攻略することにした。

そうと決まれば行動は早い。

リョクはそこに巨大な蜘蛛の巣を作り出した。その間、約三分。

そして巣が完成すると糸を丸めたボールを投下する。

案の定、ウツボモドキが誘き出された。


 「フレイムアロー、フレイムジャベリン、火炎放射、インパクト・・・」


 リョクは射程内に入ったウツボモドキに連続で矢を放つ。それぞれに違う炎系統の言霊を込めて、どれが一番効くのか実験を兼ねた初撃だった。

矢は狙い通りにウツボモドキの胴体に突き刺さり、表面を焦がしたり、突き刺さったり、突き刺さって先端が爆発したりと様々な効果を発揮し、たくさんのダメージを与えた。

すぐに水面に舞い戻るウツボモドキ。

だが安心して気を抜いたリョクに水弾が飛来した。

焦ったが、それは蜘蛛の巣に阻まれて散り、リョクはダメージこそないもののずぶ濡れだった。


 「くっそ・・・油断しました・・・!!!」


 額にはりつく髪をよけ、まさかのオールバック状態になったリョクは不機嫌そうに呻く。

リョクは反省した、安心しすぎだと。

そしてそのままもう一度糸のボールを投下。また、ウツボモドキは跳ねた。

近づいてくるウツボモドキに向かって弓を構えるリョクだったが、その動きが止まった。


 「なっ・・・傷が・・・消えて・・・?」


 攻撃を受けることなくリョクの目の前を通過したウツボモドキの腹。

そこにあったはずの数々の傷は、言霊の輝きが残留していることを除いて、跡形もなく消え去っていた。

違う個体だという説は、残留した赤い光によって可能性がないとわかってしまう。

・・・つまり、攻撃しても次に跳ねる時には完治していて、その原因を突き止めないと倒せない。

そのためには水中にいるウツボモドキの動向を探る必要があって、だから下に行く必要があって、しかし下に降りるとウツボモドキに丸飲みにされてしまう可能性が超高い。

無理じゃないですか・・・?と、心の中で苦笑いしてしまう。

 一回跳ねる間に殺すのがいいのだろうが生憎そんな言霊は詠唱が長くてタイミングを間違えば精神力が尽きるだけでウツボモドキを倒せない。それどころか場所を間違えれば壁が崩れ、それこそ死に直結する。


 「え、これって無理ゲーですよね?」


 リョクは誰に問いかけるでもなく呟いた。


 ・・・いや、まじでこれは無理なんですけど。

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