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Act.3 あり得ない言霊

 エイトは心の中で思いつく限りの罵詈雑言を親父に向ける。

 だがしかし、親父への不満はあるものの、言ってしまったものはしょうがない。仕事をしなければ。





 「エイトさん、エイトさんはシーフなんだよね?」


 首を傾げつつ訊ねるコルネ。

 そんなの、ギルドの会員証を見たからわかる筈なのに。・・・なんてことは言えない。


 「あぁ、うん。俺はシーフだよ。・・・でも、シーフ系の言霊はあんまり持ってない。」


 エイトは眉をハの字にしつつ、苦笑いをした。

 今時、シーフなのにシーフ系の言霊をあまり持っていないのは時代遅れとしか言いようが無いのだ。

 呆れられるかと思ったエイトだが、コルネは不思議そうに言った。


 「え、じゃあ何でランクがSなの・・・?Sランクの基準ってたしか・・・」



 ーその職業の適正言霊を最低10個所持し、その合計の希少ポイントが150に達することー



 「「・・・・・・・」」


 二人は沈黙する。言霊が少ないのならば、希少ポイントの合計も少なく、到底Sランクの基準なんて満たせそうもない。エイトはどうやってSランクに・・・?

その沈黙を破ったのはエイトの呟きだった。


 「・・・あ、空中歩行(スカイステップ)は一応シーフ系か・・・。希少ポイントって何だ?」


 エイトはおもむろに会員証(ギルドカード)を取り出す。

 それは、念じることで所有者の能力や実績、経歴を見ることができるのだが・・・。

 会員証は淡く発光すると、エイトの所持するシーフ系言霊を表示した。




 《シーフ系》


 ・空中歩行(スカイステップ) 希少ポイント:170 効果:空中を歩行で移動することを可能とする。各ステータス上昇有。

 ・気配遮断(シャットアウト) 希少ポイント:3 効果:気配を遮断するシーフの基本となる言霊。

 ・精密投擲(スナイピングショット) 希少ポイント:12 効果:投げナイフ等を投擲する言霊の上位互換。目標物に向かって直線的に投擲される。

 ・縮地(ステップ) 希少ポイント:3 効果:相手との距離を縮める全職業の適正言霊。

 ・罠設置(トラップセット) 希少ポイント:2 効果:罠を設置する。

 ・罠削除(アンチトラップ) 希少ポイント:4 効果:罠を解除する言霊の上位互換。罠を消す。

 ・足音消去(スニーク)暗視(キャットアイ)遠視(ホークアイ)気配感知(フィール)・・・複合言霊:隠密(ハイド) 希少ポイント:20 効果:中級以上のシーフは大抵持っている言霊。常時展開可能。




 ・・・・・合計希少ポイントは214。



 「そういうことかぁぁぁ!?!?」


 エイトは絶叫した。


 恐ろしいことに、希少ポイントの基準は空中歩行(スカイステップ)だけで満たしてしまっていた。

そして、エイトでさえ知らなかったが、空中歩行(スカイステップ)の効果に『各ステータス上昇』という誰もが羨む支援がついていた。

両親に珍しいと称賛され、勝手にギルドに入らされた原因であるその言霊。その希少ポイントの高さは異常だった。


 信じられないとばかりに、コルネは叫ぶ。


 「ちょ、ちょっとぉ!?ひとつの言霊で100オーバーは反則でしょぉ!?!?ギルドの記録にそんな言霊は載ってないわよ!?っていうか各ステータス上昇って何!?!?歩くだけでいいじゃん!!!」


 一息に言いきると、コルネは肩で息をしつつエイトの胸ぐらを掴んだ。


 「これ、全部、使いこなせるんでしょうね・・? (それなら二人でも依頼完遂できるよ?)」


 「ま、まぁ・・・日常的に使ってるし・・・。(だからできるはず・・・!)」


 エイトは若干引きながらも笑顔で対応する。

 実際に、先ほどの移動のように、エイトは毎日のように言霊を駆使していた。

 今までニート生活を満喫していたため、買い物などの日常生活でも多用していたのだ。

 なので、実戦での使用経験は皆無だが、使用回数ならそこらの冒険者に敗けはしないだろう。


 「・・・・・・そう・・。」


 コルネは落ち着きを取り戻し、エイトから手を放す。

 そして、自身の会員証(ギルドカード)を取り出すとエイトの手に握らせ、自己紹介した。


 「私はコルネ。召喚士(サモナー)だけど、副職業で剣士(ソードマン)もやってる。ランクはAA。エイトさんより低いけど、もう少しでSランクだから、実質同程度だと思う。空游竜(スカイドラゴン)の討伐、頑張ろうね。」


 若いのに・・・冒険者歴が長いのだろう、会員証(ギルドカード)は少し色がくすんでいた。

 言葉の通り、ランクはAAで、あと8ポイントでSランクに達するほどの実力者だった。

 エイトが会員証(ギルドカード)を確認して返すと、コルネは言霊を唱える。


 「じゃあ、行こうか!・・・召喚(サモン)1、飛竜(ワイバーン)!!」


 コルネが詠唱すると、複雑な光彩が生まれ、ひとつの形を造っていく。

 その光が飛竜の形状をとり、輝きが消えるとそこには紛れもない飛竜(ワイバーン)がいた。


 「うぉ!?」


 ドラゴンと違い、Aランクでの単独討伐も可能とされている種族だが、腐っても竜だ。

 実戦経験の無いエイト・・・もとい中二病には、とてもかっこよく見えるわけで。


 「かっけぇぇぇ!!!!」


 エイトはコルネの召喚魔である飛竜(ワイバーン)を目を輝かせて見ていた。


 「ちょっと、エイトさん!行くならさっさと行くわよ!!」


 コルネはエイトに呼びかけ、ワイバーンに飛び乗った。

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