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Act.2 ニートに戻りたい(泣)


 しばらく空を走っていた、ふとエイトは時刻表示を見た。

そこには7:02との表記がある。・・・つまり、遅刻。


 「くっっっっそぉぉぉ・・・!! ・・・あっ、あれか?」


 エイトはショートカットしたものの遅れたことを悔しがり、大声で叫ぶ。苦情を出す者はいない。

そんなエイトに視界の端に、キラリと陽光に反射する金髪がうつった。

 反射的にそこを見ると、何か・・・牛のような石像と、それによしかかる女が確認できた。

目を細めて見ると、彼女は碧眼で、前衛職なのだろうか・・腰には両刃の剣が携わっていた。

顎まで伸ばした金髪がさらさらと風に揺れている。


 「・・・特徴は合ってるか」


 ざっと依頼主の特徴と照合して、同一人物だと思うことにする。

エイトは女の元へと急降下し、地面すれすれで言霊を解除して着地した。




 空を移動してきたことと、急降下してきたことに対する驚愕で彼女の目が見開かれる。

それを横目に、エイトは軽く挨拶をしてみる。


 「ども、エイトです。コルネさんでしょーか?」


 へこへこと会釈するエイトを前にして、彼女は警戒心剥き出しで睨む。

エイトはそれに驚き、笑顔をつくっていた頬をひきつらせた。優しそうな見た目とのギャップが怖い。

それを気にすることもなく、彼女は睨んだまま質問した。


 「君が依頼を受けた人なの?」

 「あぁ」


 間髪入れずに答えたエイトに、彼女はさらに疑いの目を向けた。

どうやら、エイトが依頼を受けたSランクの冒険者だと信じていないようだ。

たしかにSランクには見えないだろうが、このまま仕事が無くなってはたまらないのでエイトはすぐさまギルドの会員証を取り出す。


 「こ、こういう者です!!」


 そのまま勢いよく会員証を差し出す。

すると、彼女は気圧されつつもそれを受け取った。新品ピカピカのそれを見て怪訝な表情で、彼女は眉をひそめる。

エイトはギルドの会員証の見方やランクなんて知らないので、変な内容がないかとそわそわして、彼女の顔色を窺った。

 しかし、予想外なことに、彼女の瞳に浮かぶのは···驚愕と焦り、そして畏怖だった。狼狽えるように瞳が揺れ、ある一点を凝視する。エイトは知らないが、そこはランクが表記されている場所だ。

そして、彼女の瞳が自分を映した。その後、視線が游ぎ、女はぎこちない笑みを浮かべつつ言った。


 「ご、ごめんね?」


 ・・・・・・・・・・は?

エイトは間抜けた表情で動きを止めた。

彼女はそんなエイトに頭を下げた。


 「私、まさか、あなたが依頼を受けた・・・Sランクのシーフだなんて思わなくて・・・。ゆ、ゆるして?」


 「え・・・ちょっと、頭上げてくださいよ!?」


 さっきまでの警戒心は何処に行ったのか、女は至極友好的な態度で許しを請う。

エイトは彼女に頭を上げさせて、思う。初仕事の相手がいい人っぽくて良かった。







 「へぇ~、俺ってそんなに強いって思われてるんだ。」


 早速エイトは女・・・コルネにギルドや冒険者の知識をわけてもらっていた。


 「そんなことも知らないで依頼受けたんだね・・・。ひょっとして、これが初仕事だったりするの?」


 「・・あ、そうそう。そうなんだよね・・・」


 すっかり打ち解けたエイトとコルネ。敬語も使わなくなり、最初のようなぎこちなさや警戒心も無い。

情報交換や冒険者・・・ギルドの説明を受けて、エイトは満足げだった。

そして、そんなエイトに向かって、コルネは言いにくそうに、


 「・・・・・じゃあ、私の依頼はちょっとキツいと思うよ。」


 と、告げた。その真意がわからず首をきょとんとするエイト。

コルネは剣と一緒に腰に括ってあった羊皮紙を手に取る。そして、それを広げつつ、エイトに手渡した。



-空游竜(スカイドラゴン)の亜種の調査、及び討伐、素材の確保-



 「・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ!?!?」


いくら世間知らずなエイトでも知っていた。


 竜・・・ドラゴンは、たとえ亜種だとしても単体で街一つ壊せる程の攻撃力をもち、冒険者で単体討伐が可能なのは最低でSランクだと言われているということを。

そして、依頼の詳細を見て、絶句。

・・・依頼を受けたのはエイトだけなのだった。


「・・・無理、でしょ?」


 コルネのセリフに頷きかけるエイト。

しかし、コルネの悲しそうな表情と、自身のポケットに入っている手紙の内容を思い出して頷くのを中断した。



 『おはよう、我が家のニートくん。パパは仕事をしない奴を養うつもりはないので、今回受けた初仕事を完遂しなければ追い出しますのでそこんとこよろしく』



 エイトは現実の非情さに泣きそうになりながら首を横に振った。

そして、それでも女性の前では見栄を張りたかったエイトは、白い歯を光らせて告げる。


 「俺とコルネが協力して全力で戦えば倒せない相手ではないだろ?」


 「エイトさん・・・!!」


 感動して目を輝かせるコルネを見つつ、エイトは心のなかで叫んだ。




 くっっそ親父ぃぃぃぃ!!!!!!

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