七振り目
新たに受注した「銅剣作成」は、鍛冶の基礎を学ぶためのものだろう。
新たに手に入れた「銅剣」のレシピを横目に、鍛冶場の中央付近に碁盤上に配置されている金床と小さな炉が置かれている椅子のひとつに座った。
再び現れる作成画面と説明を読むと、ここでは炉の中にインゴットを入れ、熱することで柔らかくし、それを鍛え、作りたいものの形に整える工程となるらしい。その後は奥にある水場の近くで焼き入れと研磨をするようだが、この工程で武器としての性能が決まるようだ。
目をつむり、一呼吸置く。
いよいよ、俺にとってのメインイベントになる。
画面を操作して取り出した「銅インゴット」を複数、金属製のハサミで同時に押えると、真っ赤に熱えさかっている炉の中へと差しいれる。
ハサミを持つ左手がちりちりと焼けるように熱せられる。ハサミそのものも同時に熱せられ、革製の手袋越しにも手のひらを焼くような熱さを感じる。
正直、普段であれば手を放してしまうような温度だが、そんなもったいないことはできない。
思い出されるのは、過去に見た光景。
子供のころ、社会科見学か何かで見に行ったときに目に焼きつけた。真っ赤に熱せられた鉄の形が変わる姿。
工房で聞いた、鉄を打つ音。
工房で感じた、肌を焦がす熱。
あの時に感じたすべてに沿うように、あの時と同じ、いや、再現された熱をデジタルの肌に感じながら、炉から「銅インゴット」を取り出す。
真っ赤に熱せられたそれを、すぐに金床に移動させ、右手に持った鎚で叩きつける。
鍛冶場中に響き渡る。鍛冶を代表する金属音。
その音を聞くために、一心不乱に鎚で叩きつける。何度も、何度も。
ある程度叩くと、温度が下がったのか、色が本来のものに戻り始める。
熱が完全に失わないうちに炉の中に入れ、再び熱し、また叩く。
飛び散る火花の先に移る金属は、まだ剣の形には程遠い。
先の見えない行為、だが、何よりも楽しいひと時。
けれど、あの時感じたものとは、何かが違うように思えてしまう。
金属の温度なのか、鎚を打ち込む力なのか、ゲームの仕様上仕方のない部分なのか。
ただ、あの時感じた金属のきらめきとは、何かが違う気がする。
ある程度伸びた金属を折りたたみ、再び打ち込む。
このゲームの設定上、数をこなし、熟練度を上げていかなければ上達はしない。
ガブリエルが言うとおり、プレイヤースキルも必要だというのなら、熟練度が低い状態でもある程度までは質を向上させることができるだろうが、始めたばかりの今から最高品質を目指すというのは、無謀は望みであろう。
ある程度まで再び伸ばしたインゴットを、再び炉の中へと差し入れる。
もっと、良いものを打ちたい。
しばらくは、そのために素材集めも必要になってくるだろう。
忙しくなるだろう。だけど、悪い気はしない。
再び、炉からとりだし、鎚を振るう。
今日は、きっとよく眠れるだろうな。




