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五振り目

 鍛冶場の中は、むせかえるような熱気に覆われていた。

 熱した金属を扱っているのだから、当然といえば当然だろうが、空気全体が高温に熱せられているこの空間に長時間いることには、少し辛いものがある。

 そして、入る前からわかっていたことだが、中にいるのはNPCが数人だけで、プレイヤーはほとんど見当たらず、空席が目立っていた。


 まぁ、事前の情報で<生産>タレントが不人気ということが判明している以上、わざわざ茨の道を進もうなんていう物好きは多くないのだろう。俺が言える義理ではないが。


「まっ、待つ必要がない分、楽ではあるけどな」


 壁側にある手近な椅子に腰を下ろし、目の前に現れた作成画面を見つめながら、そんなことをぼやく。


 だが、仲間がいないことを嘆くよりも、与えられたクエストをこなすことが先決だ。

 作成画面と共に現れた「製錬」の説明を見れば、壁に埋め込まれるように設置されている「製錬炉」で鉱物を一定時間熱することで、金属と不純物とを分けるらしい。


 これで作られるものが、「インゴット」とも呼ばれる金属隗。これを基に、様々なアイテムが作られる。

 使う金属によって、そのアイテムの効果や能力が変わるのだが、それは作成を続けていく中でわかっていくことだろう。


 俺はメニュー画面を操作し、製錬の中でも最下級であるの「銅製錬」を開始した。

 すると、俺の手の中に「銅鉱石」というさきほどもらったアイテムが出現する。これを「製錬炉」に入れれば、熱せられた鉱石から不純物が全て炉の下部にある口から流れ出ていき、後には「銅インゴット」が残る、らしい。


 まぁ、習うより慣れよ、とも言う。やった方が分かることも多いだろう。

 俺は作成画面を操作して、「製錬」を開始すると、手元にある銅鉱石を「製錬炉」の入れ口に投げいれた。

 銅鉱石は入れて数秒の後、熱せられたことによって赤く色づき、時折はじけ飛ぶような音と共に、どろりとした不純物が溶けだしているのが見て取れる。

 時折、足元にある小さな穴からドロドロに溶けだした不純物がこぼれ落ち、溝にそって流れ出る。


 その光景は、自分が今、鍛冶の第一歩を踏み出していることを教えてくれている。

 先ほど、部屋で感じた以上の熱気が顔面を熱するが、そんなことは一切気にならない。

 音が、色が、熱が、今自分がしていることが、今までの自分が望んでいたことなのだと、語りかけてくれる。


 ああ、この瞬間がずっと続けばよいのに……。


 右腕にかかるシステムからの助言に従い、ふいごを押す。

 新たに送り込まれた空気によって、力を弱め始めていた火の勢いはより強まり、銅鉱石はその赤みを取り戻す。


 正直、空気を送り込むタイミングなんてよく分からない。ただ、システムから送られてくる助言に従うように腕だけを動かす。流れ出る不純物に目を向ける暇などない。


 視界を遮る汗をぬぐい、爛々と輝く銅鉱石を見つめる。

 この「鍛冶」を極めるというのは、きっと大変なのだろ。ふいごを押した回数も、何度目か分からないが、未だにタイミングがつかめない。


 だけど、いつか。

 システムからの助言なしでひとつのインゴットが作れたなら。

 それはきっと、自分の成長だと誇れるだろうか。


 眩いばかりに赤く燃える銅鉱石を見ながら、まだ果てにある極地に思いをはせ、俺はふいごを押し続けるのであった。

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