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十振り目

 さて、先ほどから土下座をしている彼女ではあるが、とりあえず、目の前の噴水の前にあるベンチで、話をすることにした。


 なんというか、あの光景を他の人に見られるのは、すごく嫌なんだ。何も悪いことしていないのに、させている方が悪いことをしているみたいで、すごく心苦しいんだ。


 そんなわけで、彼女と共にベンチへと座り、こちらが気にしていないことを伝えることにした。

 むしろ、今の方が迷惑という気はしなくもないが、そこはぐっと我慢する。うん、俺は大人だからね。素直さがどんな状況でも美徳になるなんて信じちゃいないんだよ。


「とりあえず、あれだ。俺は全然気にしていないから、な?」


 できるだけ優しく、それを心がけて言ったつもりだが、彼女の方は、未だに硬いままだ。というか、かなり落ち込んでいる、か?


「で、ですが、迷惑を駆けちゃいました。せっかくの狩りも台無しにしてしまって」

「いやまぁ、確かにちょっと予定は狂ったが、別にそれほど困るわけでもないし」


 頭を掻きながらそう返答をするが、彼女の顔色は優れないまま。むしろ、ますます下降している気がする。


 うーん、どうしよう。こっちはまったく気にしていないんだけど、こうも委縮されてしまうと、それはそれで、困るんだよなぁ。


「んー。じゃあ、お詫びの代わり、と言っては何だが、ドロップアイテムをいくつか融通してくれないか?鉱物は集まったんだが、それ以外がなぁ」


 こういう時は、何か明確な「お詫び」をしてもらうのが一番だろう。後輩にもよくやっていたし。それで気が紛れるなら、それの方が後腐れなくて良い。


 それに、ドロップアイテムも欲しいといえば欲しい。


 敵MOBを倒すと一定の確立でドロップするアイテムは、<闘争>や<魔導>のタレントにとってはただの換金アイテムとなるが、<生産>持ちにとっては、貴重な「素材」となる。


 ガブリエルからのまた聞きの話ではあるが、アイテムによっては、製作したアイテムの効果などに影響を及ぼすこともある、らしい。

 <生産>特化な自分としては、是非とも手に入れて研究をしたいものではあるが、いかんせん、戦闘なんてしようものなら、1回だけで半死半生という有り様だ。時間がいくらあっても足りない。


 見れば、彼女の腰には剣がぶら下げられていることから、<闘争>のタレントを持っているのだろう。ならば、いくつかは持っているかもしれない。


「えっと、そんなもので良いんですか?だったら、マニーを渡した方が良いと思いますけど」

「いやいや、マニーはいらねぇんだ。生産で素材なんかも使うからな。それでほしいんだよ」


 生産と聞いて、彼女は納得したような表情を浮かべた。やはり、普通は集めたそばから換金するものなのだろう。

 個人的には、もったいない気がするが、それは職種によって変わることではあるし、仕方のないモノだろう。


 まぁ、俺にとっては素材が手に入るので、美味しいことこの上ないのだがな。

 システム画面を開いて、もらう準備を始めようとする。しかし、彼女の方は、少し悩むようなしぐさをしている。どうしたのだろうか?


「あの、よろしければ一緒に取りに行きませんか?欲しい素材を」


 彼女は、おずおず といった感じで、そう切り出した。けれど、すぐに両手をぶんぶんと振りながら、


「いえ!せっかくなら必要な素材だけを渡した方が良いかなぁと思っただけです!すいません!」


 と自身の提案を否定する。


 だが、折角のお誘いだ。鍛冶はとてもしたいが、作れるものが増えるチャンスが目の前に転がっているのに、それを見捨てる必要もない。というか、作らせろ。作りたいんだ、俺は。


「いや、そうしてもらえるなら、ありがたいぜ。どうせなら、今からすぐに動いても良いか?すぐに集めてしまいたい」


 こちらが乗り気なことに、一瞬キョトンとした表情をする彼女。少しすると花が咲いたように喜びに満ちた表情があふれ出した。


「あ、ありがとうございます!わたし、ソルティです!」

「イチモンジだ。よろしくな」


 こうして、突発的な初パーティが組まれたのだった。


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