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九振り目

「ひ、ひどい目にあった……」


 目を開けると、知らない青空だった。いや、初日に見上げた空か。

 『始まりの街』の中心、領主館前に設置された復活ポイントに戻ってきた俺は、仰向けのまま、システム画面を開いた。


 このゲームのデスペナルティは、熟練度の減少となる。1、2回程度のペナルティなら、ステータスにほとんど影響はないが、何十回とペナルティを受ければ、取り戻すのに結構な時間を要するだろう。

 まぁ、俺の現状のステータスはどの熟練度も低いので、それほど大きなペナルティでもない。


 強いて言うなら、全身をはいずり回られる感覚がまだ残っているので、ちょっと全身がむずがゆいくらいかな?


「うう、全身変な感じ。どこかに紛れ込んでいたりとしないよね?」


 近くで、女性の声と共にごそごそと動く音が聞こえる。


 視線だけをそちらに向ければ、先ほどまで隣を並走していた女性が目に留まった。


 見た目だけで言うなら、大学生くらいだろうか。

 金色の長い髪を一本に縛り、頭にはどこかエスニック感のあるヘアバンドを身に付けた女性だ。

 顔にはやや幼さが残るものの、ほとんどの男性が一度は目を奪われる容姿をしている。


 まぁ、ゲームの世界なんだから、そういう美男美女の割合が多いのはデフォルトなのだろう。NPCも美男美女が多いしな。


 さて、そんな美人さんな彼女ではあるが、立ち上がって体のあちこちを気にしているようだ。もう少し寄ってきてくれれば、その麻布のスカートの中にあるであろう下着が見えそうなんだが。


 ちなみに、実際に覗けばちゃんと下着が見えるのかは分からない。ほら、青少年もできるゲームだからね。そういところに制限がある可能性もあるにはあるし。ない可能性に賭けたいけど。


 ま、流石に寝そべり続けるのは駄目か。触れない下着よりも触れる鉱物だ。うん、残念だけど、おしいけど、もったいないけど。


 彼女への視線を外し、立ち上がる。背中がちょっと痛いが、これは石畳で寝ころんでいたのが原因だろう。


 体をほぐしながら、大きな伸びをする。


 予想外の問題はあったが、鉱石は必要な分は集まった。後はクエストをこなしながら鍛冶の練習を進めていけば良い。


 ただ、このまま漫然と進める方法が良いのかどうか、不安はある。


 時間は有限だが、自由に使える時間の大部分を「トライワールドオンライン」につぎこめば、それなりの時間になる。


 ただ、俺の求めるモノは、「時間」程度で解決できるものなのだろうか。


 システムに動かされるまま、導かれるままに動くだけ。

 ゲームとして正しくても、自分自身として正しいのか。そのあたりの気持ちの整理は、未だついていない。


 ま、今は考えていても仕方がない問題だ。案外、クエストの中に手がかりが見つかるかもしれないんだ。焦っても仕方がない。


 さぁ、今日も鍛冶を始めよう!

 まぁ、その前に……。


「ご、ごめんなさい!」


 この、目の前で綺麗な土下座をかましている娘、どうしよっか。

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