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サルビア

自爆?考えたこともなかった。

俺はいつも何者かに爆殺されることのみを前提として夢想していた。

だが生憎俺は誰かに爆殺されるようなことはしていない。

誰かではなく俺自身が爆発すればよいのだ。

稲妻に打たれたように脳が痺れ、全身に鳥肌がたった。おまけに変な声を上げてしまった。

俺は口から垂れた涎を乱暴に拭き、いかにして爆発するかを考えた。

爆死に対してこんなにも想いを募らせてきたが、真剣に爆死について考えたことはなかった。

幼い頃、特撮で怪人が戦いに敗れた後、後ろに倒れ、砂煙を上げ爆死した瞬間から俺は、きっと寿命で逝くのではなく、爆発によって逝くのだろうと思い込んでいた。

だが俺は改造怪人ではないので、ヒーロー達は俺を爆死させてはくれない。自分でやるしかないのだ。

まず考え付くのがガス爆発だ。しかし病院でガス爆発は難しそうだ。

直ぐに医者か看護師に見つかり、危険人物としてより自由のない隔離病棟に移されるだろう。

自分の無知さに思わず舌打ちした。

「おい。」

白いカーテン越しに何者かが声をかけてきた。低く圧し殺したような声だ。

誰だ、深夜2時だぞ?面会ってわけでもなさそうだ。

俺がカーテンを開けようとすると、

「よせ、開けるな。このままでいい。」

黒い大きな人影が俺を止めた。

「わかるぞ。もう解っている。お前が何を求めているかも、何を考えているのかもな。」

黒い人影は小刻みに揺れながら話した。

幻覚?そういえば、夕飯後に飲んだ薬の副作用にそんな症状が出ると、看護師がいっていた気がする。

「違う違う。現実だ。虚構じゃない。」

黒い人影が苦笑した。

考えが読まれているのか?目の動きとか、そういったものから?

カーテンで俺はシルエットしか見えてないはずだが。

「誰だ。あんたは?同じ部屋のじぃさんか?それとも俺をからかいに来た医者か?」

俺が問うと、人影は瞬きもしない内に消えた。

カーテンを掴み、俺は勢いよく開けたが、そこには誰もいなかったし、なにもなかった。

サルビアの植えてある真っ赤なサルビアが置かれている以外は。




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