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他の願いは……?

投稿少し遅くなりました。

盆休み中なのでペースあげます。

「なぁ、ちょっと聞いてもいいか?」

 ベッドに腰掛けているルナに尋ねる。

「ん? 何?」

「元いたルナの世界ってどんなのかなーって思ってさ」

「そうね、別に人間がいないだけでこっちとそれほど変わらないわよ。国の名前だって日本だし。簡単に言えばあれよ、確かパ、パラ……そう、パラソルワールド!」


 何その夏の海限定で作られる狭い世界?


「――ああ、パラレルワールドね」

「そ、そう、それ!」

 ……ほんとに英語ダメなんだな。というかほんとにパラレルワールドか? 宙に浮いてたり世界飛び越えたり、どっちかというと異世界って感じがするけど? 

 ……でも日本語しゃべってるしなぁ…………考えても仕方ないか。確かめる方法がない以上ルナの言うことが正しいとしておこう。


「人間がいないってことは別に何がいるんだ?」

 『ルナみたいな悪魔ばかりだと大変そうだな』という言葉は胸にしまっておく。


「そうね……大きく分けて二種族。どちらもこっちの世界に干渉しているんだけど、私のように悪戯や嫌がらせが好きで、人間の欲望を叶えに来る『悪魔』。逆にお節介で助け合いが好きな人間を欲望から守る『天使』がいるわ」

 やっぱり悪魔って認識で合ってたのか。ただ空想上の生き物の名前そのままというのはちょっと違和感が…………いや、昔から干渉しているとすれば名前だけが伝わっているのかもしれない。

「天使と悪魔ね……俺ら人間にとって神みたいな存在がこの世界に何しに来てるんだか」


「それはも、ち、ろ、ん――」

 ルナが前のめりになる。

「――稼ぐために決まってるじゃない。働かざるもの食うべからず。そんな当たり前のことも知らないの!?」

 いや慣用句は知ってるけど。

 悪魔が実在することすら最近知ったばかりだというのに、稼ぎに来てるなんて絶対知らないから。悪魔の常識を人に当てはめないでくれ。


「でもどうやって稼いで……前に言ってた報酬がどうの――ってやつか?」

「そう。私たち悪魔は欲望を叶えた暁に報酬を得て、それを勤め先に持っていくことで給料になるの。……ただこれがまた厳しくて厳しくて。私の勤めるような小さな所だと特に。願いは大きな会社に取られちゃうし、給料は低いし、上司は怖いし、はぁーあ……」

 なんか会社(?)の愚痴が増えてきたな。

「せっかくウチに回ってきた願いも変わったものが多いのよね。……今回だってそうよ、なんで私が追試の手伝いなんか……やる気が出なくてミスっちゃったじゃない」

 やる気の問題でなかった気がするけど。どちらかといえば頭じゃない?

「おかげさまで減給は逃れられないし、さらには契約完了まで帰ってくること許さないとかどういうことよ!」

 俺に言われてもてもなぁ。


「――というわけだから戸山も私が帰れる方法を考えてよね!」

「どういうわけだよ!」

 散々愚痴をまくし立てた挙句、結論で俺に責任をなすりつけるなよ! 俺に責任はない! ……はず。

「今の私が家に帰れないのはわかってるわよね? ほらかわいそうとは思わない?」

「別に」

「なんで!?」

 そんな意外そうな顔をしなくても。

 『さっきまでうどん頬張ってたしなぁ。あの姿はあまり困っているように見えなかったぞ』――なんて言ったら絶対怒るよなー。それなら――。

「元気そうじゃん」

 明るく振る舞う。これで少しはオブラートに包めて……ってあれ?

「これでも落ち込んでるの!」

 どこが!? どうみても力いっぱい怒ってるだろ!


「だって契約完了は最低でも一年先になるのよ! その間何してればいいっていうの? このままじゃ……ただの地縛霊みたいじゃない」

「別にやること無くてもいいんじゃないか?長い休暇と思ったら?」

「何が楽しくて戸山に付き合わされないといけないのよ。それに暇でつまらないのは嫌。私たちはね、いろんな奴を困らせ、不幸を見るのが生きがいなわけ。平穏な日常なんて……そうね、職人が職を失う、ゲーマーがゲームを禁止される、腐女子がBLを禁止されるようなものよ」

「…………なんか一つ変なのが混じらなかったか?」

「そう? まあ確かにゲーム禁止はちょっと辛さ具合が薄いかもね」

「それじゃねえよ! 腐女子がどうやら――ってやつだよ!」

「何を言ってるの!? 彼女たちの執念がどれほどのものかを知らないわけ!? この前もある女子学生から『このままじゃ母親にBL小説を没収されるから何とかしてくれ』って願われたんだけど、彼女の切迫した表情や思いは戸山の比じゃないわよ。気迫も凄かったんだから!」

 ……お、おう。どう反応したらいいのかわからない。周りに腐女子の友達なんていないからなー。……大学からの友達なんてほとんどいないんだけど。

 そもそもいたとしてもBL趣味なら隠してるだろうから普通気付かないか。


 ルナが話を続ける。

「まあその願いは一人暮らしの友達に小説……確かゲームもあったかしら、BL関連の物を預かってもらうことで解決したわ。預けるときに分かったんだけど、どうやら友達も腐女子だったみたいね」

「その友達にBL趣味なかったら危なかったんじゃないか? 事情を話せば断わりはしないと思うけど友達関係に亀裂が入りかねないぞ」

「それはそれでおもしろそうだからいいじゃない。願いの内容は叶うわけだし問題ないでしょ」

 あっ、そういう考え方なんだ。

「それでね、契約完了したから報酬に預けた本の半分をいただいちゃった。あの子泣いてたっけ。でも契約だしー、ふふふっ、いい顔を見れたわ」

「ひでぇ! 悪魔だ!」

 いやまあ悪魔そのものなんだけど。

「あれ? じゃあ俺からの報酬って何に……?」

 叶えた後ってことは呼び出したときに持って行かれたジーンズじゃないってことになるよな。

「え? もちろんp……あっ、規定で言ったらダメなんだったっけ」

 報酬の内容が聞けそうだったけど会社規定なら仕方ない。深くは追求しないでおこう。

「それにしても、ちゃんと叶えてた願いもあるんだな」

「だからいままで失敗したことないって言ったじゃない」

 あきれたように言われた。

 でも、そんなこと言われたって信じられるかって。出会ってから数日、その場限りの嘘をつき過ぎなんだよ。


「ふーん、初めての失敗ね……他にはどんな願いがあったんだ?」

 ちょっと――いやかなり気になる。俺の願いは変って言われたし、ルナ――悪魔の基準が少し分かるかもしれない。

「えっと……」


 ルナが口ごもる。一分ほどしてようやく口を開いた。

「……他は……ない」

 途中からそんな気はしてたけど、記憶を辿ってたわけではなかったか。

「つまりルナはまだ新米――新人って感じか」

「まあそうなるわ。――で、そろそろ帰る方法は思いついた?」

「すっかり忘れてた」

「ちょっとしっかりしてよー」

 そんなこと言われてもなぁ。そもそも俺が考える必要なくないか? ……暇だし別にいいけど。

 

 ……うーん、そうだ!

「そういや願いって確か『進級させてくれ』だったよな。他の願いじゃだめなのか?」

「あっそうか、その手があったじゃない!」

 ルナの顔が急にパアッと明るくなる。


 これくらいのことなら自分で気づいてほしい。


「なになに、何か他に願いがあるの? それなら早く言いなさいよー」

「いやないけど」

 俺は即答する。


「もう、こんなときに意地悪しなくていいわよ。何かあるから変更なんて提案したんでしょ? お金が欲しいの?」

「別に困ってない」


「じゃあ彼女?」

「今は独りが気楽だ」


「それなら仕返し? あんたも結構黒いじゃない」

「いや仕返しをしようと思うほど深い人間関係が成り立ってない」


「……本当にないの?」

「だからそう言ってるだろ」

 ここまで言って少しの静寂が訪れた。ルナの口元はひくひくと動いているが、なかなか言葉が出てこないようだ。


 さて、この間に少し考えごとでもするか。

 なんか大事なこと確認し忘れている気がするんだよなー。何だっけ?


 しばらく思案する。ルナも何か考えているようでしゃべる気配はない。


 …………そうだ、ルナの泊まる場所!


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