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悪魔の能力

「分からないって顔ね……いいわ、説明してあげる。私たちの凄さを! 理解できたらもっと扱いよくしてもいいんだからね! 新作ゲームとか希望するわ」

 さりげに自分の欲望をさらけ出すルナ。悪魔なのに思った以上に庶民派、インドア派、そしてお前の願いもしょぼい!

「まあ内容次第で考えるわ」

 九割九分考えるだけだけど。ゲームはたけえ。

「よしっ! 説明の前に……というより説明の一部としてまず聞きたいことがあるんだけど、戸山は店のものを万引きしようと思わないのはなんで?」

「そりゃ盗む気なんてないから」

「じゃあなんでその気が起きないの?」

「ええと、店に迷惑かけたら悪いし、そもそも犯罪なんだから捕まるかもと思うだろ。……その辺りかな」

「それよ!! ――むぐっ」

 慌ててルナの口を塞ぐ。

「声が大きい! 尾行してるのばれるだろ! しーずーかーにー」

 自分の話に夢中で忘れてたなこいつ。

 赤穂さんは……よかった、気付かれてないようだ。一度引き返されてから、街灯に照らされる姿でかろうじて確認できるくらい離れているので、少々の声ならまず大丈夫。チキンプレイ上等。

 赤穂さんが右に曲がって行ったのを確認。

 えーと、次のT字路を右っと。よし覚えたぞ。

「で、なんだって?」

「……こほん。あーだからその悪いと思う『罪悪心』、捕まるかもしれないという『恐怖心』。これらの心をを一時的に取り除くことができるの。どんな気弱な人もどれだけ正義感が強くても、願いを叶えた意をいう思いさえあれば悪事や仕返しだってできるようになるわ」

 ……なるほど。ルナの言っていることが本当なら確かに望みを叶える上で重要な能力だ。心の除去、言い換えれば理性をはずすってことにもつながる。

「へへん」

 そんなドヤ顔されてもなぁ。ルナの話が本当か分からないんだけど。

 ただルナは嘘を吐くのめちゃくちゃ苦手だよな。本当のことと決め付けてもいいかもしれない。

 ……『力』を明かされた今思うと、ルナが俺の前に叶えたという女の子。その子も『力』を借りた可能性が高い気がする。友達に腐女子であることを明かすなんてそうできるものじゃないだろう。『恐怖心』、『羞恥心』を取り除いたと考えられないか?

 赤穂さんは本当に大丈夫だろうか? 家と真逆の方向。カレン付き添い。大通りからわき道へ、暗く人通りの少ない道へ。

 街灯が少なくなり、後ろ姿を確認しにくくなってきたので必然的に距離は近づいている。


 右に曲がってからしばらく歩いたところで赤穂さんが左の路地に入っていくのが見えた。

 俺も続いて路地に…………いない!?

 赤穂さんの姿は見渡す限りどこにも見当たらない。

 すでにここは住宅街。小さなわき道なんかは多いけどなんで急に!? 進む足でも速めたのか? なんで?

 先ほどのルナの話で焦りを感じた俺は、足音があまり立たないくらいの駆け足で辺りを探す。


 …………。

 ……あそこの人影……は? 赤穂さんか?


 古い木造アパートの前。その姿はあった。

 ――既視感。確か二日前にもこんなことがあったような……。

 違うのは人物の隣に悪魔の姿もあるということだ。そしてもう一つ。アパートの部屋の窓、カーテンの隙間から明かりが漏れている。

 その光が目の前の人影の手に持つものをほのかに照らす。


 …………あれは……ナイフ!?


「待つんだ!」

 思わず、何も考えないまま相手を制止する言葉を放ってしまう。当然のように人影はこちらを向き、刃物の切っ先を俺に向ける。

 悪魔は宙に浮き、離れて高みの見物でもするようだ。


 さて、俺は丸腰。恐怖もやばい! どうしよう!?


 ルナも「何やってんのよ!」と焦った顔でこちらを見ていた。


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