悪魔の願い
「ここも入ってない、ここにも制服だけ……。あっ、あるじゃない♪」
誰のとか関係なくロッカーをあさっているルナ。いつもより生き生きしているように見える。
「おーい、なにやってんだー?」
そっと近づいて耳元で呼びかける。
「ふぇっ、戸山!? な、なんであんたがここにいるのよ!」
ルナはすごく驚き、慌てふためく。
「単にバイトが終わったから、着替えに来ただけなんだけど……その手に持っているのは?」
「えっ、ああこれ? あ、あの……あんたへのプレゼント!」
なにこの急なデレは? 異性からのプレゼントなんて初めてだ。なんでだろう、ドキドキしてきたぞ。それに汗も出てきた。でもなんか冷たい汗なのは気のせい……?。
「なんだ、早く見せてくれよ」
ルナは出し渋りながらも、プレゼントやらを渡してくる。これは……財布か?
細長い革製のもので、機能性を重視しているのか、カード収納スペースが多い。色は茶色でシンプルなデザインだ。
「これは良い財布だな……副店長の……」
中には当然現金、カードが入っている。これがプレゼントなわけない。
まあ分かってたけどさ。ルナが急にプレゼントなんておかしいって――でもちょっと期待した。もしかしたらとか考えてた!
「えっ、そ、そうなの? いやー落ちてたからあげようかなって思ってたんだけど……」
「嘘つくなよ。ルナがいるの副店長のロッカーの前じゃん」
「あの、えっと、それは……」
「何でロッカーを荒らしたんだ? なんで財布を盗もうとした?」
俺はルナを問い詰める。
「うっ……」
そのまま黙ってしまった。時間がかかりそうだ。あまり遅いと副店長が見に来る恐れがある。財布だけ元の位置に返しておこう。
「とりあえず帰るか。話はまた家で、な」
俺たちは店を後にした。ルナは渋々、嫌々といった表情で付いてきた。
「で、今日はいったい何しにバイト先まで来たんだよ」
家に帰り、机をはさんでさっきの話の続きを行う。
しばらく沈黙していたが、この空気に耐えられなくなったのか、ようやく理由を話し始めた。
「……戸山が店の人に迷惑をかけて、バイトをやめさせることができたら、お金に困るだろうなーって思って。そうしたらちょっとぐらいは物欲が生まれるんじゃないかと……」
バイト中の妨害もそれが理由か……。
確かにバイトをやめさせられたら困る。生活資金だからな。しかしいろいろと大事なことを忘れてないんだろうか?
「お金がないと困るのは確かだ。でもバイトなんて他にいくらでもあるんだぞ。それにバイトが決まらず生活に困ったら、家賃が払えなり、引っ越すことになる。それはルナにとって大丈夫なことのか?」
「あっ」
ルナは自分の考えに穴があったことにいまさら気付いたようだった。
「うぅ……部屋がなくなれば私はずっと戸山に付きっ切り……それは嫌!」
わかってもらえたようでなにより。ただ「嫌!」と断言されたのがちょっとショック……。
「はー、それに最後の財布を盗むのは、やりすぎだろ。もう犯罪になってくるし最悪、留置所行きだぞ?」
「た、確かにあれはちょっと行動しすぎたなーとは思ってるけど……それくらいしないと……。捕まったら逃がしてあげるし!」
「そんなことできるのか!」
「あっ、いやできないけど……」
見栄を張っただけか。そもそもどこまで悪魔ができるのを聞いてないな。この際だからそれも聞いて――。
「戸山、お願い!」
急に頭を下げたルナに驚く。
「ど、どうしたんだよ、いきなり……」
「願いの変更をして! 早く契約を終わらせて、元の世界に戻りたいの! でも考えていた手は出尽くしちゃって……だからお願い! もうプライドなんてどうでもいいわ。戸山に頼むしか方法が残ってないのよ……」
考えた手、少なすぎるだろ――と思うけどここまで思い詰めちゃったんなら、俺も悪く思えてくる。ちょっと涙目になってるし、ここで頼みを聞かないのは男としてどうなのよって話だ。
「わかったよ。そこまで言われたら仕方ない……。できるだけ簡単、早い願いがいいよな?」
「ほ、ほんとに…… そうしてもらえると助かるわ」
「じゃあそうだな……新しいパソコンが欲しいかな」
「やっぱりしょぼい願いに変わりない……いいえ、そんなことより、ちょっと心がこもってなさすぎて変更できないんだけど」
「心のこもり具合そんなに重要!?」
「当たり前じゃない! 契約に関わってくる一番重要なことよ」
そんなの知るか! でも待てよ。なら――。
「心から思うほどの願いは一つもないんだけど……」
うん、これはあれだな。詰みってやつだな。……言えることは一つ。
契約内容の変更――現状無理!
「……終わったわ」
ルナが絶望ともいえる表情になる。そのままベッドに直行し、ご飯も食べずに不貞寝をしてしまった。
俺は……ちょっと調べ物でもしようかな。
ようやく申し訳程度のタイトル回収。なんかタイトル変えた方がいいかなぁ?




