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記念日は休日に

 店長にこってりとしぼられた後、夕食だけ帰り道にあるスーパーで買い、アパート前に戻った。

 いやー、なかなかに濃い一日だった。というよりルナが来てからイベント多いよなー……まあ、それを楽しんでる自分がいるんだけど。

 退屈するよりはずっといい。

 でも、もう家に用いたし今からはゆっくりでき……るかはわからないか。ルナがいるし。

 不安が残りつつ、鍵を開け玄関の扉を開く。

「ただい……ま?」

 玄関に待ち構えていたのは、なぜかびりびりに破れたTシャツとスカートを着て、廊下に座っているルナの姿。かなり服がはだけている。


 ――バタン。

 扉を閉め直す。

 あー、やっぱりちょっと疲れてるんだな、俺。幻覚を見るとは……。うすい肌色が視界に入りすぎてドキッとしたわ。

 まあこんな幻覚なら何回見てもいいよな。

 もう一度扉を開く。

 やっぱり同じ光景だ――幻覚じゃない。うれしい反面、ちょっと目のやり場に困る。

「何してるんだ?」

「何って言われても……それよりどう? 何か思わない?」

 こちらをじっと見てくるルナ。よくよく見てみると――いや、ちらちらと見ていたら、服は確かにはだけているけど、大事な部分はしっかりと布で隠されている。

「なんというか、びっくりしたとしか。ドッキリ?」

「ち、違うわよ! ……それよりほら、もっと感じるところはないの? こんなかわいい子ほっとけないとか、女性の体に興味出てきたとか」

 自分でかわいいというのはどうかと思うけど……。

「別に女性には前から興味あるし、その格好というより振る舞いではなぁ。色気がちょっと」

「具体的に何が足りないって言うのよ!?」

 うーむ、いろいろあるんだよなー。はだけながらも隠せ過ぎているところとか(下着も見せパン、見せブラ程度にしか見えない)、恥らっている様子がなくて心にグッと来ないとか、いきなり「どう?」とか聞くとか。少しは何か演技しろよ、と思う。

 それとそうそう――

「――一言で言うなら胸だな」


 ドンッ。(外まで突き飛ばされる)

 バタンッ。(玄関の扉を閉められる)

 カチャッ。(鍵を掛けられる)


「おい、ちょっと待て! まだ言いたいことが――」

「うっさい! まだひどいこと言うつもり!? しばらく黙ってなさいよ!」

 着てたびりびりのTシャツとか、こんなことした理由とか聞きたかったんだけど……。

 まあいいか。鍵は持ってるんだし、中で話せば……ってあれ!?

 鍵が回らない! さてはあいつ押さえてるな! くそっ、力が入れにくい。

「開けろー!」

「絶対嫌! 反省しなさい!」

「何を!?」

「そこから!? あーもう、そんなの自分の心に聞きなさいよ!」

 奮闘すること五分。ルナはまだ粘っている。


 ……ちょっと待てよ? 今の姿を誰かに見られたら、絶対空き巣を疑われて通報されるよな……。それはまずい。別に自分の家だし、何も悪いことしていないから問題なんだけれど、「なぜあんなことしてたんだ?」とか聞かれたら、うまく言い訳できる自信がない。そもそも警察にあまり厄介になりたくないよな、なぜかはわからないけど心理的に。

 うーん仕方ない。ここはいったん退いて、怒りが収まるのを待とう。それまで運動がてら、適当に散歩でもするか。


 せっかくなのであまり普段通らない南の方へ。おいしそうな定食屋とかラーメン店とか見つかればいいかなと思いながらゆっくり歩く。

 もう辺りは薄暗くなっている。でもだからこそ、店なら光る看板などが目立ち、見つけやすいけど――。

「見事に住宅街なんだよなー」

 入学当初、周囲を散策したときのまま、こっちの方はアパートや一軒家が建ち並び、定食屋一つ見つからない。もしかしたら何か新しいものもできてるかもと思ったけど、新築マンションくらいだった。


 何もないなー。もうかれこれ三十分位経つし、そろそろ帰るか。

 ――と、そう思った矢先、目の前に不審な人影を見つけた。

 築五十年はあるだろう古いアパートの前で、独り言をつぶやいている小さな人影。いったい何をしているんだろうか?

「昨日の強盗犯に続いて今日は不審者かよ。もう事件に巻き込まれるのは勘弁してくれよなー」

 まあ距離はあるし、向かってきたら即逃げる覚悟はできているから大丈夫だろう。

 うーん、警察に通報すべきだろうか。しかし明らかに悪いことをしているわけではないし、電話するのも迷惑……いや面倒だ。独り言くらい俺も言うし(実際さっきも)、別に大丈夫だろ。

 ――なんて自己解決をしている間に不審者はどこかに行ってしまったみたいだ。

 最近この辺り事件多いような気がする。また起こるかも……。

 まあそんな連続して身の危険が及ぶことなんてないか。人生のどんだけ低い確率引き当てるって言うんだよ。大丈夫、気にするだけ無駄、無駄。

 自分に言い聞かせて、そのままさっさと家に帰った。


 さすがにずっと玄関に張り付いていたわけがなかったので、家の中に入ることはできた。しかしルナの機嫌は悪く、よく分からないまま謝ることになった。

 結局、俺のTシャツを勝手に破ったことと、怒らせるようなことを言ったことが相殺することになったけど……あまり納得がいかない。

 思い出してみると、なんだかんだでで朝、昼、晩と今日は謝り続けたことに……。

 今日を謝罪記念日にしてやろうと自分の中だけで決めた。

 来年のこの日は怒られないよう、誰とも会わないことにしようかな。


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