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共同生活初日の朝

 ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ――。


 ん……もうそんな時間か。

 目覚ましを止めようと手を伸ばす。

「確か枕(座椅子)元に置いたはず……」

 

 フワッ。


 柔らかいものに触れる。目を開けてみるとすぐ横にルナがいた。

 触っていたのは残念(?)ながら胸ではなく髪だった。そりゃそうか、胸なら柔らかいと思えるほどもなさそうだし。

 でも、もしも胸なんか実際触っちゃったら、こちらがすごく申し訳ない気になるんだろうな……。

 とりあえず目覚ましを止める。ついでに熟睡していて起きる気配がないルナの頭をもう一度なでる。

 

 ……うーん、髪ってこんなにふわふわしてるものだっけ。いい匂いもするし。寝ていて静かだとかなりかわいいいんだよなー。

 

 …………。


 いかん。いまさらになってルナが女の子であることを意識してしまった。なんかやってることも変態っぽく思えてきたぞ。そろそろちゃんと起こすか。

「ルナ、起きなくていいのか? 別に寝てるのは構わないけど、俺はバイトに向かうからなー」

 肩をゆするとようやく目を覚ましてくれた。

「うーんもう少し……後五分……ん? えっ!? 何であんたが隣に寝てるのよ! な、何もしてないでしょうね!?」

 朝から非常に元気である。

「別にやましいことはしてない」

 断言。

 

 ――もちろん嘘になるけど。髪を触るのに少しはやましい気もでき……始めてた。でも最初は無意識だったんだよ。手を伸ばした先に頭があったんだから仕方ない。

「あっ、そうなの」

 非常に信じやすい性格で助かる。

「でもじゃあなんで隣にいるのよ?」

「いやいやルナが寂しいから横に来てくれたんじゃないのか?」

「はあ? 何気持ち悪いこと言ってるの? そんなことあるわけないじゃない!」

 わかっているけどさ。冗談だよ、冗談。

 布団をくるっと体に巻き、頭だけ出している姿を見る限り、ベッドから転がって落ちてきたんだろうと容易に想像できる。その姿のせいで怒っていても全然怖くない。

 ルナの寝相が悪いということを直接言わないようにしただけなんだけどなー――うまくいかないものだ。

「自分の格好を見てよく考えてくれ。まあ俺としてはその姿がかわいく見えるから、しばらくそのままでいてくれてもいいけど」

「……あっ……」

 ルナは顔を赤らめ、すぐに布団から出ようとした――が、どっちに巻いているか分からず半身をくねくねさせ、抜け出そうと奮闘することになった。


 ようやく本題に戻る。

「さて、俺はこれからバイトに向かうわけだけど、ルナはどうするつもりだ?」

 ルナはようやく巻いていた布団を剥いで、ベッドに放り投げた。

「よいしょっと。え? ここで待っているつもりよ。会社へメールで報告しなくちゃいけないし、なによりここで生活するとなったからには、いろいろ送ってもらわないと。……それに昨日良い案が浮かんだから、具体的に練りたいのよ」

 メールって向こうの世界とも通じているのか?

 ――という疑問も浮かんだけど、そもそもルナを呼び出したきっかけがパソコン上のサイトだったこと思い出す。

「ふーん、じゃあ俺は出かける用意でもするかな」

 朝食に食パンだけ食べる。

 「食パン一枚だけとか貧乏くさくない?」とかルナから言われたけど気にしない。

 パンの耳じゃないんだから全然いいだろ。


「あっそうだ、腹減ったらあるもの適当に食べていいから」

「はいはーい」

 適当な返事が返ってきた。

「じゃ、いってきまーす」

 玄関の扉を開け、バイト先に向かう。


 当然のように「いってらっしゃい」の一言はなかった。――少し残念。


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