***真夜中の二人の思い***
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真夜中目を覚ました。どうやら一度夕方少し寝てしまったのが原因らしい。もう一度寝ようとしてみたんだけど眠気が飛んでいて寝付けない。
「仕方ないから帰る方法をもう一度考えてみようかな」
ベッドに座り思考をめぐらせる。その横――というより下では戸山がぐっすり眠っている。どこからどう見ても無防備な状態。
今なら確実に殺れる。
――なーんて言ってみたりするものの、そんな度胸もないし、第一、契約が永久的に果たせなくなっちゃう。私の住む世界(会社)は甘くない。理由がどうあれ契約未遂行のままだとこの部屋の地縛霊になるのが決定という最悪の事態になる。でも――。
…………。
良い方法がさっぱり思いつかない。
「単純に上からの許しがあればいいのよねー。手っ取り早い方法が契約を完了させることなんだけど。そのためにはまず戸山の願いを変えなきゃ。でもこいつ全然欲がないみたいだし……」
ふと過去を思い出す。今まで聞いて教わった人間というのは、お金が欲しい、恨みを晴らしたい、仕返しをしたいなどの欲望があった。そしてなにより欲の裏側には必ず友達、家族などの『他の誰か』が関係していた。なのに――。
「まさかこんな変なやつがいるなんてね。欲はないし、唯一の願いにしたってほとんど自分だけのことじゃない」
ため息が出る。
新しい願いに変更させるということがこんなに難しいとは夢にも思わなかった。
欲望の引き出しの開け方がわからない。知識もまったくない。
「いや、これも一種の社会勉強! 人間の欲望というものをもっと知ればいいのよ! ……いやだなー。」
勉強なんて嫌いだし、やってこなかったし……。
ゴロっと横になる。今日はこの辺にして、また明日考えようかな――なんて思ってたら目の前には寝る直前まで読んでいた漫画が置いてあった。
……そういえばこの漫画の中で、主人公の仲間が悪魔に心を売ってた場面があった覚えが……。結局その仲間はすぐに身を滅ぼすことになってたのよね。絵に描いたような没落人生(実際、絵になってるのだけれど)でおもしろかったな。でもなんで自分の身まで捧げたのかしら? 確かその前の場面で……。
記憶を引っ張り出す。
……。
…………これよっ!
良い案が頭に浮かんだ! これなら戸山も願いの変更を請うことになるはず!
心のつっかえは取れたみたいだし、今日はゆっくり寝れそう。
ちょうど良い感じに眠気も……。
私は布団をかぶりもう一度眠りについた。
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――同時刻。
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思い悩んでいたらこんな夜遅くになってしまった。
広告チラシにまぎれていた一枚の妙な紙。そこに書いていたことをすがる思いで実行する。
…………えっ!
私の前に見慣れぬ人? が現れた。
いや、人に見えるけど雰囲気が明らかに違うと感じさせられている。
直感だけどたぶん、これが悪魔というものなんだろう。
――でもそれでいい。
私にはどうしてもあの人にやらなきゃいけないことがあるのだから……。
「…………」
私は目の前の悪魔に願いを告げた。
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一章終了という感じです。
全四十話位になる……はず。あくまで予定ということで。




