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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第7話 スズキさんスゲー

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 第7話 スズキさんスゲー

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 クライド君が柔らかく清潔なベッドの上で目覚めたのは、いつ以来だろうか。

 清々しい目覚めなのに、クライド君の過去を思うと、怒りが沸々と湧いてくる。


「いかんな、元家族あいつらのことを考えるのは、よそう」


 俺はグランベルさんたち【雷神の鉄槌】からもらった背負い袋を背負い、宿の階段を降りていく。

 この宿は夕食と朝食が出るので、食堂でいただく。ここでも美味しい食事をいただいて、俺は宿を出た。

 この宿、一泊するのに最低でも2万G(ギース)が必要らしい。

 クライド君の知識では、この国の通貨がギースで、安宿であれば3,000Gもあれば泊まれるらしい。つまり、結構なお値段の宿である。

 いつか自分のお金でこういった宿に泊まりたいものだ。

 ただ、高給宿なのに風呂がなかったのは、マイナス要素だ。まあ、ベルデナーグ伯爵の屋敷にも風呂はなかったけどね。


 大通りを進む。腰にはもらった剣を吊り下げている。なんか落ちつかないな、これ。歩いていると、斜めに進んでいく気がする。

 冒険者ギルドに入ると、昨日と違って冒険者で溢れかえっていた。皆がよい依頼を受けようと競って取り合っている。


「無理だな……」


 俺はすぐにギルドを出て、昨日聞いておいた釣り場に向かう。

 王都は海に面した都市で、港が併設されている。その港からそれほど離れてない海岸に到着した。

 背負い袋からロープを取り出す。その先にはワイヤーがついていて、さらにゴツい針がある。これで魚型モンスターを釣ろうというのだ。

 餌は昨日のオークステーキの残りです! それを適度な大きさに切り、海に向かって投げるのだが、ここで俺は考えた。

 リンリーリンさんはとにかく遠くに投げるために、風の魔法を使っていたと言っていた。では俺に風の魔法が使えるか? 今のところ無理だ。あくまでも今のところだ。

 グランベルさんとミリアさんは"そんなもん、気合で投げればいいんだよ"と言っていたが、それこそ俺には無理だ。

 じゃあどうする? ここで俺は魔力触手を使ってみることにした。指先から1㎝くらいの太さの魔力を伸ばしていくあれだ。

 魔力触手でオーク肉を動かしてみると、意外と簡単に動いた。


「これなら……」


 オーク肉をドンドン沖へと運ぶ。ロープがもう少しでなくなる場所まで運べた。ラッキー。


「………」


 オーク肉を海に落として30分。まったく反応なし。

 本当に魚型モンスターはいるのだろうか?


「そうか、魔力フィールドで海の中を確認すればいいんだ!」


 魔力フィールドを広げていく。必要なのは海の中の情報なので、陸側に伸ばす必要はない。


「おっ、いるじゃん。でも、オーク肉の回りにはいないんだ」


 ちょっと引き寄せて魚がいる場所の近くにオーク肉を移動させる。

 それが目標の魚型モンスターかは分からないが、話しに聞いているとリフィナンテスは鯛のような魚で、トーリルーンはスズキのような魚らしい。あくまでも聞いた話からの想像なので、合っているかは分からないけど。


「とりあえず、数種類の魚を釣ってギルドに提出すれば、判断は向こうでしてくれるさ」


 魚がオーク肉に食いついた。グランベルさんは焦って引くな、魚がしっかりかかるまで待てと言っていたので、待つ。

 5秒か10秒ほどで、魚が暴れ出した。針が口に引っかかったと思い、俺はロープを引いた。


「ぐぬぬぬ、重い……」


 ちょっと大きな魚を狙いすぎたか?

 後悔は後だ。今は魚を引き上げるんだ!


「せいっ、せいっ、せいっ、せいっ」


 綱引きのように体を後方に傾け、ロープを引く。


「はぁはぁはぁ……」


 引きが強い。こちらの息があがる。

 魚と格闘すること30分、やっと魚が上ってきた。

 砂浜に上がった魚はスズキのような姿なので、これがトーリルーンだと思う。体長は1mほどだ。

 最初ピチピチ跳ねていたトーリルーンだけど、すぐに大人しくなった。俺は魔力触手でトーリルーンを押さえ込んで、えらに短剣を差し込んだ。血抜きはしっかりしておかないと単価が下がるらしいので、聞いていたように血抜きをする。

 さらに腹を開いて内臓を取り出す。"そこまで難しくないのでやっておけ"とドゴゴンさんに言われている。


「ふー、これでよし……」


 本当はリフィナンテスも狙いたかったのだけど、このトーリルーンだけでも20㎏はありそうだ。スッゲー太っているんだよ、このスズキさん。

 つまり、こいつ1匹を持って帰るのも大変ということだ。

 砂がついたので、海の水で洗って麻袋に入れ、それを背負い袋に入れて背負う。うん、重い。

 肩紐が肩にめり込むほどズシリと重い。


 ヒーヒー言いながら冒険者ギルドに到着した。

 魔物の納品は解体所のほうで対応してくれるようなので、受付を通り過ぎて奥へと向かう。なんでも裏からアクセスできるらしいが、俺は裏が分からないので正面からだ。

 俺が朝一で立ち寄ってから3時間も経過してないため、まだ午前中だ。

 冒険者たちは依頼に出かけたようで、冒険者ギルドの中は閑散としている。


「すみません、買い取りをお願いします」

「何を持ってきた?」


 ややスマートなドワーフのようなオッサンがドラ声を発した。ドゴゴンさんほどではないが、なかなかの迫力だ。

 ドゴゴンさんもそうだが、ドワーフ系は年齢が分からん。だって、顔のほとんどが髭で隠れているんだもん。


 俺はトーリルーン(仮)をカウンターの上に置いた。


「ほう、トーリルーンか。いい大きさだ」


 トーリルーンで正解だったようだ。ヒーヒー言いながら持ってきた甲斐があったよ。


「しっかり血抜きと内臓の処理がしてあるな。重量は……23500gか、213,850Gだな」

「そ、そんなにするんですか!?」

「魚型のモンスターはあまり納品がないし、血抜きと内臓処理もちゃんとしてある。それに、これだけの大きさは滅多に納品されんからな、色をつけておいたぞ」


 スズキさんいい値段だなー。

 それに解体所のオッサンもいい人だー。


「ほれ、査定表だ。受付に持っていけ」

「はい。ありがとうございます」

「儂はバドランドだ。解体所の主任をしておる。魚系は不足しておるから、ドンドン持ってこい」

「がんばります」


 最初の依頼で21万Gも稼いでしまった。今日もあの宿に泊まれるぜ。



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