第63話 ロイメス男爵家
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第63話 ロイメス男爵家
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「色々喋ってくれてありがとうございます」
「……いえ」
「それじゃあ、解放しますので、俺に攻撃はしないでくださいね」
「ほ、本当に逃がしてくれるのか?」
「貴方はちゃんと喋ってくれましたから、殺さずに見逃します」
「あ、ありがとう!」
「でも」
「っ!?」
「俺の誘拐に失敗し、他の3人は死んだのですから、闇ギルドに戻っても殺されますよ」
「あ……」
そんな絶望した顔をしないでよ。それくらい分かっていたんじゃないの?
「1,000,000Gあります」
アイテムボックスからお金を取り出して差し出す。
「それを差し上げますので、闇ギルドに見つからないようなところに逃げたほうがいいですよ」
「も、もらっていいのか?」
「ええ、差し上げます。情報の代金です」
彼は力なくお金を受け取り、ヨロヨロとジュブレール大森林の中に消えていった。
あんな足取りで、このジュブレール大森林を抜けられるかな? 浅いエリアとはいえ、魔境だからね。
今後彼を見た者はいない。それが上手く姿を隠した結果か、それとも……。
ま、俺にはどうでもいいことだ。
「さて、俺のほうも動きますかね」
俺は飛び上がった。向かうはアーヘンの町。
そして夜になるのを待って、ロイメス男爵邸に向かう。
魔力フィールドを展開し、どこに誰がいるかを確認。
以前俺を襲ったゴルガスが、肥え太ったカエル顔のオッサンと話をしている。
あのカエル顔のオッサンは、どこかで見たことがあるような?
「ああ、街道で襲われていたヤツだ」
俺が王都から旅立った時に、襲われていた自動車の中から偉そうに命令していたオッサンだな。あの顔は見間違えないよ。
「やっぱり悪者なんだ、あの人」
そして、カエル顔のこの人が、俺を誘拐しろと命じたのだと思われる。
魔力触手を伸ばして、2人の会話を聞いてみる。
「先ほど闇ギルドから連絡がありました。2日後にクライドを引き渡すとのことです」
「よし! これでアッパスの仇が討てるぞ! 殺してくれと懇願するように、むごたらしく殺してくれるわ!」
「私もあいつには煮え湯を飲まされましたので、2、3発殴らせてください」
「ハハハ! いくらでも殴れ! だが、簡単に殺すなよ」
「お任せください」
はい、真っ黒ですね。
ゴルガスは嘘発見器でちゃんと潔白を証明した場所にいたのに、まだ俺を狙っているのかよ。こいつの思考が理解できないよ。
もしかして俺が無実だと、男爵は知らないのか? ゴルガスが握り潰した、と考えることもできるのか。
とりあえず、俺も黙っているつもりはない。そっちがその気なら、こっちもやってやるよ。
魔力触手を窓の隙間から滑り込ませ、鍵をこっそり開錠。魔力結界でロイメス男爵の部屋を覆うが、窓の部分だけは開けておく。
そしてランプの火を魔力触手で消す。
「何だ!?」
「ランプが消えたようです。すぐに火をつけますので、お待ちください」
2人があたふたしている間に窓から部屋の中に侵入。ここで魔力結界は完全に閉じた。防音もしっかりしているから、外に音は漏れない。2人がどんなに騒いでも外には聞こえない。
「な、なんだ!?」
「か、体が!?」
ランプの火が点いた瞬間に魔力触手で2人を拘束したら、カーテンから姿を現す。
「「何者だ!?」」
「貴方たちが会いたがっていたクライドですよ」
「なんだと!?」
「なんで貴様が!?」
「御託はいいので、話をしましょう。俺は命を狙われる覚えはないのに、なんで俺を狙うのですかね?」
「お前がアッパス様を殺したんだ!?」
「それはプレンサス伯爵家の取り調べで、潔白が証明されましたよね、ゴルガスさん」
「あんなもの、嘘に決まっているだろ!」
「わざわざ嘘に反応するマジックアイテムを使い、証明されたことに文句を言うと、ロイメス男爵がプレンサス伯爵の顔に泥を塗ることになる。あの時、警備兵長のオルガノさんがそう言ってましたよね? つまり、ロイメス男爵はプレンサス伯爵家に喧嘩を売るということですね?」
「なんだ、どういうことだ!? なぜ儂がプレンサス伯爵に喧嘩を売るということになるんだ!?」
「知らないんですか? そこのゴルガスさんは、何も言わなかったのですか?」
「どういうことだ、ゴルガス!?」
「そ、それは……」
やっぱり言ってないのかよ。なかなかの忠誠心だな。
「俺はすでに無実が証明されています。プレンサス伯爵家の取り調べで。そこのゴルガスさんもその場にいましたよ。嘘を見破るマジックアイテムを使っての取り調べです。その裁定をひっくり返すということは、プレンサス伯爵の顔に泥を塗る行為になりますよ。なんでゴルガスさんが無実の俺に冤罪を被せようとしているか知りませんけど、このままではロイメス男爵はプレンサス伯爵に頭を下げるだけでは済まないということですね」
「本当か、ゴルガス!?」
「そ、それは!?」
「たしかロイメス男爵家や冒険者ギルドにその旨が通知されているはずです。男爵はそれを見てないのですか?」
「知らんぞ、そんなものは!?」
「なら、ゴルガスさんが握り潰したようですね。そうか、ロイメス男爵家を潰したいのか、ゴルガスさんは!?」
俺は閃いたとばかりに手を打った。
どうもロイメス男爵は本当にプレサンス伯爵家のことを知らないようだし、ちょうっと方向性を修正だな。
「なっ!?」
「ゴルガス、貴様!?」
「ち、違います! 某はそんなこと考えたことありません!」
「だったら、なんでプレンサス伯爵家の裁定を無視するのですか? しかも闇ギルドまで使って俺を攫おうだなんて、男爵家を潰したいとしか思えませんけど?」
「なななななんで闇ギルドのことを!?」
「俺を攫おうとした人を捕まえて尋問したら、教えてくれましたよ。おかげでロイメス男爵の名前が出てきたわけです」
本当は町の名前だけどね。
「あいつら!?」
「ロイメス男爵家が闇ギルドと繋がりがあるというのがバレると、マズいですよね」
「知らん! 儂は知らんぞ!」
「では、ゴルガスさんが勝手にやったことですかね?」
「そうだ、ゴルガスが勝手にやったことだ!」
「だ、男爵様!? あれは男爵様が!?」
「ええい、黙れ! この疫病神め!」
2人とも必死だな。
「だったら、ゴルガスさんを捕縛したほうがいいですよ。そのうち、国に知られることになりますから」
「そ、そうだな!」
「男爵様! 某を捕縛するよりもこいつを捕縛したらいいのです!」
「む?」
おっと、ゴルガス君は必死で生き残りの目を考えたようだね。でも、それはねー。
そろそろいいな。この部屋を覆っていた魔力結界を解除する。
「ああ、それは悪手ですね。俺が何も対策せずここにきたと思うのですか?」
「「何!?」」
「俺が帰らなかった場合、闇ギルドのことも伯爵家の裁定を無視したことも公になります。ですから、ゴルガスを捕えて罰っするしか男爵家が生き残る術はないのです。ああ、今後俺に何かあった時も、このことは公になりますので」
嘘ぴょーん。
さて、魔力結界を解除しますか。
「う、うむ! 誰かある! 誰か!」
ダンッとドアが開き、兵士たちが入ってきた。兵士たちは俺を見て剣を抜いて飛びかかろうとしたが、それをロイメス男爵の言葉が遮った。
「ゴルガスを捕縛せよ!」
「「「え?」」」
侵入者の俺じゃなく、ゴルガスを捕えろと言うのだから、兵士たちは混乱するわな。
「何をしておるか! ゴルガスを、この反逆者を捕らえるのだ!」
「「「は、はい!」」」
兵士がゴルガスを取り囲む。




