第6話 もう食べられない
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第6話 もう食べられない
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ボードに貼り出されている依頼を見ると、Gランクは町中の仕事や野草採取、Fランクは野草採取とゴブリン退治、Eランクからはモンスター退治やモンスターの肉などの部位納品系が多くなっていく。
そして俺のDランク依頼はと……レッドボア肉の納品、リフィナンテスという魚型のモンスターの納品、同じく魚型のトーリルーンの納品、他にもいくつか納品依頼があり、結構常時依頼がある。ただ、基本的には討伐か納品依頼ばかりなので、モンスターと戦闘をすることになる。俺は武器を持ってないので、モンスターの退治や討伐、納品の依頼は無理だ。
だから薬草採取にしよう。GランクやFランクだけど、構わないだろう。お金が要るんだよ、俺には。
「よし、これだ」
振り返ると、壁があった。
なぜ壁? と思ったら、グランベルさんだった。
「おう、さっきは悪かったな。詫びに酒でも奢るぞ」
「酒を奢ってくれるなら、宿と夕食をお願いします」
「……それくらいなら奢るぜ」
「やったー! これで今日は野宿しなくていいぞ!」
「お前、そんなに金に困っているのかよ?」
「はい、困っているのです!」
「そんなに自信満々に言うことか?」
「隠しても仕方ないですからね」
胸張って言う。
「宿も飯も奢ってやるから、酒も飲んでいけ」
「そこまでしてもらうのは、悪いですよ」
「いいんだよ、俺は稼いでいるからな!」
「おお、気前がいいですね! よ、太っ腹!」
「調子がいいヤツだな、お前」
ギルド内にある飲食スペースに連れていかれると、先程のミルキーさんがいた。
「先ほどはありがとうございました」
「こちらこそ、この脳筋がごめんなさいね」
「そいつが期待の新人か?」
150cmほどのミルキーさんと違い、180cmほどの大柄な女性が木のジョッキ(大)をドンッと豪快にテーブルに置いた。
「初めまして、俺はクライドといいます。今日冒険者になりました」
「おう、あたいはミリアだ。【雷神の鉄槌】でタンクをしているぜ」
タンクというと、防御を担当する人ってことか。女性でもそういった役目をこなす人もいるんだな。
「儂はドゴゴンだ。【雷神の鉄槌】で前衛アタッカーをしておるぞ」
ドゴゴンさんは背の低い恰幅のよい男性だ。おそらくドワーフという種族なんだと思う。
「わたくしはリンリーリン。【雷神の鉄槌】で斥候をしていて、魔法も使うわ」
リンリーリンさんはすごく美人だ。耳が尖っていることから、エルフだと思う。
「今日の詫びに、こいつの宿と飯代を俺が持つことになった」
「そんなことで許していいの? 腕を折られたのよ」
「こうして治してもらいましたので、それで十分ですよ、ミルキーさん」
「クライド君がそれでいいと言うなら、もう言わないわ。その代わり、たくさん飲み食いしなさいね」
「はい。そうさせてもらいます」
俺の中身年齢は42歳でミルキーさんより年上だけど、この世界では15歳の子供だから親切にしてもらえるんだろうな。
あと、クライド君はイケメンだ。これだけで得しているよな。
「ここはオークのステーキが美味いぞ。酒はエールでいいか?」
「はい。お任せします」
「マスター。オークのステーキ特大とエールだ!」
グランベルさんの勧めを受け入れたが、オークのステーキは特大とは言っていない。特大ってどのくらいなのかな?
とりあえずエールがきた。俺の顔くらいありそうな木の大ジョッキだ。
「エールを飲め! 飲んで飲んで飲みまくれ!」
「……いただきます」
エールはややうす味でアルコール度もそこまでないだろう。せいぜい3%といったところか。(実際は1%ちょい)
悪くはないが、日本酒が飲みたい。俺はビールではなく、日本酒派なのだ。
そしてドーンッ。
「………」
出てきたオークのステーキは、1㎏はありそうなデカさだった。さすがにこんなに食えない気がする……。
「さー食え! 食って食って食いまくれ!」
大男のグランベルさんと細身(痩せすぎ)の俺では食事の量は明らかに違うと思うんだよ……。
「そんなに食べられないわよね。まったくこの脳筋には困ったものね」
ミルキーさんは大きなため息を吐き、首を左右に振った。
「がんばります」
食事なのにがんばるとは、これいかに?
俺はフードファイターではないので、がんばらないといけないのだ。
「あ、美味しい」
オークのステーキは、なかなか美味しい。この世界でクライド君が食べていたものとは比べるべくもないくらい美味しい。なんか泣けてくるよ。
「何泣いているんだ、クライド」
ミリアさんが俺の首に腕を回してきた。筋肉質でしなやかな腕にロックされると、身動きができない。なんて力だ。でも美味しくてつい涙が出てくる。
「こんなに美味しいものを食べたのは初めてなので、なんか感動してしまいました」
「おう、そうか! ならまた食わせてもらえ、グランベルに!」
ミリアさんが奢ってくれるのではないのだね。
「おう、こんなものなら、いくらでも食わせてやるぜ!」
「それでこそあたいら【雷神の鉄槌】のリーダーだ! アハハハ!」
陽気な人たちだ。こんな楽しい食事は前世も含めていつ以来かな……。
ただ、オークのステーキを食べ進めると、3分の1で腹がいっぱいになった。
これまで腐りかけのパンを1個と塩水くらいしか食べてこなかった欠食児のクライド君には、この量は殺人的なものだった。
それでも残しては悪いと思い、オークのステーキをエールで胃に流し込む。
「うっぷ……」
ヤバい、限界だ……。
「ガハハハ。無理に食わんでもいいぞ。残ったらグランベルが食うわい」
「おい、ドゴゴン! 俺は残飯漁りかよ!」
「すみません。さすがにもう食べられません」
「そんな小食じゃ、強くなれねーぞ!」
その後も楽しく食事をし、依頼のことも聞いた。そしたら魚型モンスターは陸の上では何もできないと教えてくれた。
しかも以前グランベルさんたちが使っていた釣り道具をもらえた。
「ちーと古いが、使えんことはないだろ。持っていけ」
釣り道具だけじゃない。背負い袋、短剣、剣などももらえた。いい人たちばかりだ。
その日は空腹に悩まされることなく、ギルドの近くにある宿でゆっくり休むことができた。




