第56話 単純なプリママ
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第56話 単純なプリママ
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ジュブレールレックスはジュブレール大森林のみに生息している恐竜型Sランクモンスターで、かなりの迫力がある。剥製にするには、ナイスチョイスだと思う。
ジュブレールレックスを探していると、他のモンスターが寄ってくる。そういったモンスターを狩りつつジュブレール大森林を進む。
広大なジュブレール大森林だから、目的のモンスターを探して何日も彷徨うことがある。
「さて、今回は何日で出遭えるかな」
遺跡で野営をする。いつものように岩風呂で体を清め食事を摂り、ベッドに横になりながら本を読みつつ魔力訓練だ。
考えたら、このジュブレール大森林には多くの薬草が生えているんだったな。ジュブレールレックスを探しつつ、発見した薬草を採取してもいいだろう。
指輪型アイテムボックスをつけてからもうすぐで2カ月が経過するが、今のところ時間経過はない。
今どきの職人が作ったマジックバッグでも100日くらいは時間経過を止めるので、そのくらいは確認しないとね。
ジュブレールレックスを探して5日、やっと見つけた。
さっそく魔力触手で絡め取り、魔力にアクセスしてチューチュー吸う。
この魔力を吸うという行為のおかげで、俺の魔力が増えている。元々多かった魔力だが、それが増えているので魔力切れを起こしそうにない。
「まあ、増えたからといって何が変わるかということはないんだけどさ」
そもそも俺は魔力切れになったことがないのだ。
魔力触手や魔力結界など多くの魔力を使っているけど、魔力が不足したことはない。そもそも、魔力触手は全部体内に戻せるし、魔力結界には大して魔力を使っていない。魔力フィールドもあまり魔力を消費しないタイプのものだから、俺は魔力を持て余しているのだ。
それに、魔法を使ってもドンドン消費率は下がっていく。今では1%にも満たない消費量になった。
ただ、魔法はどんなにショボイ魔法でも、大魔法でも消費量は同じだ。不思議なものだな。
俺にとって、唯一消費が多いといったら飛行だろう。飛行は他の魔力操作に比べ、圧倒的に魔力消費が激しい。それでも俺の保有魔力量からしたら、大したことはないのだけどね。およそ3時間高速で飛んでも、総魔力量の1割減るかどうかだからね。
それなのに魔力が増えているので、魔力余り感が半端ないな。
魔力をそのまま使っているので、魔法に比べ圧倒的に魔力効率がいいのもあるんだろうなー。
ホルトンの町に帰えり、門を通る。
「お疲れ様です!」
門を守る兵士さんが敬礼しつつ挨拶してくれる。
「皆様もご苦労様です。通ります」
兵士さんが挨拶してくるのはSランク冒険者というのもあるけど、絶対プリママの影響だと思う。だって、Sランクになって初めてこの門を通る時は、ここまで背筋を伸ばして挨拶してもらってないもん。
冒険者ギルドに入ると、メリンダさんと目が合った。俺を待っていてくれる綺麗な女性がいるというのは、いいものだ。それが依頼関係でも。
「指名依頼の納品はどうすればいいかな?」
「さすがはクライドさんです。早いですね!」
ジュブレールレックスを探すのに5日もかけてしまったけどね。
「解体所に持っていってもらえますか。依頼書を一緒に出していただければ、対応してもらえますので」
「了解です」
ジョルゴスさんに声をかけ、依頼書を見せる。
「こっちへこい」
作業場に入って、出せと言われる。相変わらずだな、と思いつつジュブレールレックスを出す。
「ふむふむ……傷はないな。相変わらずいい腕だ。どうやって倒しているのか、さっぱり分からんぞ」
「それは企業秘密ですから」
「詳しくは聞くまい。ほれ、サインしたぞ」
依頼書にジョルゴスさんのサインをもらい、受付のメリンダさんのところへいき、冒険者証と一緒に出す。
「預入でお願いします」
「はい。……処理が終了しました。ありがとうございました」
その時、背筋に悪寒を感じた。と同時に横からのタックルを受けた。
「くっ!?」
「クライドーーーッ! やっと帰ってきた! 今すぐ家に帰るぞ!」
我が養母であった。
「ママ、痛いんですけど?」
「あたしを置いて5日も放浪しているからだ!」
「いや、指名依頼《仕事》ですけど?」
「そんなものより、あたしの風呂だ!」
このバカプリママ……。俺を本当に家政婦か何かと思っていないか。
「てか、ギルマスなんですから、俺が指名依頼をするのに文句言わないでくださいよ」
「だったらあたしもいく!」
「ウザ」
「なんでっ!?」
「依頼に保護者同伴とか、ありえないでしょう」
「そんなことないぞ! あたしがいたら、クライドを守ってやれる!」
「ママがいなくても十分に安全ですから」
「ジュブレール大森林にはドラゴンだっているんだ、危険だぞ!」
まだドラゴンには出遭っていないが、危険だったらすぐに逃げるから大丈夫だよ。
「てか、いい加減離れてくださいよ」
その硬い胸では抱きつかれていても嬉しくない。
「痛っ!? 痛痛痛痛痛痛痛痛! あばらが折れる!?」
この人、ベアハッグしているよ!
あばらが折れる!
「今失礼なこと考えただろ?」
「そ、そんなことないです! 止めて、お母さん!」
パッと手を離すプリママ。
「お母さんだなんて、ウフフフ」
「………」
困った時の魔法の言葉だ。これを言っておけば何とかなるのだから、この人は単純だ。




