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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第51話 俺は空を飛ぶ!

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 第51話 俺は空を飛ぶ!

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 王都の書店にいく。

 古代文明語の翻訳とかできたらいいなー、なんて思っている。


「やっぱりないかー」


 そんな都合のいい本はない。俺だってそれくらい分かっているさ。

 ここでも興味を惹いた20冊を10,000,000Gで購入。相変わらず本は高い。

 冒険者の風貌でまだ若い俺がこんな大金を使って本を買うのだ、酔狂なヤツだと思われたことだろう。


 大橋を渡り王都を出ると、人気のないほうへ向かう。

 誰もいないのを確認する。

 気球に乗ると思ったでしょ? 違うんだなー。

 昨夜ふと思ったんだ。空が飛びたいと。

 気球の籠に乗ってではなく、自由自在に鳥のように飛んでみたいのだ。

 で、思いついたのが、足の裏から魔力を勢いよく放出すれば飛べるんじゃないか、というものだった。


「さて、上手くいけばお慰み。いけっ!」


 ボフンッ。まるで弾丸のような急加速。


「ぐうぅぅおぉぉぉぉぉぉぉぉっ」


 一気に上昇していく俺。

 そこには俺の意志はなく、ただ勢いに任せた加速があった。

 胃の中のものが圧縮される。息が吸えない。やり過ぎた……。

 意識が朦朧とする。ヤバいと、素直に命の危機を感じる。

 ここで意識を手放せば、俺は上空から落下して挽肉になってしまう。飛び降り自殺どころの話ではない。地面に激突した衝撃で、原型さえ留めないだろう。

 歯を食いしばってがんばれ、俺!


 やがて加速は収まり、息ができるくらいに落ちついた。ただし、吸い込む空気は滅茶苦茶冷たい。普通に氷点下あるかもしれない。

 地面を見ると、遠くに見える。これはあれだ、地球は青かった、的なヤツだ。

 どうやら俺はこの星の衛星になるようだ。

 魔力結界を展開し、空気を確保。以前の魔力結界は展開すると動かせなかったが、今では自分の体に纏わせて一緒に動くことができる。もちろん、空間に固定することも可能だ。

 そんなことをしていると、速度がゆっくりになったので、魔力結界を空間に固定する。


「さて、これからが問題だ」


 地上ははるか下にある。どうやって着陸するか、それが問題だ。

 いや、やり方は分かっている。先ほどのように魔力を放出してちゃんと飛べばいいのだ。

 ただし、先程のような大容量の放出ではなく、ちゃんと調整しないといけない。そうじゃないとそのうちに本当に衛星になりかねないからな。


「これまでやってきたことをやればいいだけだ。今さら何を慌てることがあるのか」


 冷静になり、アイテムボックスからマントを出して羽織って、すーっ、ふーっと息を吸い吐く。


「よし、やるぞ!」


 今度はしっかり調整する。

 魔力結界を解除すると、自由落下が始まる。


「ファイエル!」


 おっと、このかけ声では本当に衛星いきだな。


「普通に放出! さっきの3分の1!」


 イメージはしっかり固めた。

 魔力の放出量、放出速度、放出の細さを繊細に調整している。


「うひょーっ!」


 気持ちいいが、息苦しい。

 進行方向に魔力結界を展開し、一定の距離を保つ。


「ふー、楽になった」


 それでも高度が高いおかげで酸素が薄いのは否めない。一気にここまで飛んできたけど、高山病にはなってない。魔力循環のおかげで体内の異変を押さえ込むことができているようだ。


 いい感じで空を飛ぶ。

 速度は時速500㎞くらいか? よく分からんが、とにかく速い。

 旋回する時は逆側に手の平を向けて魔力を放出する。


「いい感じだ!」


 さらに停止してからのホバリング。

 飛ぶのとは違ってホバリングは位置をキープするのが難しい。上下運動を繰り返し、なんとか維持することに成功した。

 結界を固定してその上に乗ればいいんだけど、それでは夢がないからね。


「やっほーっ!」


 ホバリングからの加速。今度は弾丸加速はせず、ちゃんと調整している。


「俺は鳥になった!」


 飛行魔法があるかは知らないが、俺は魔法を使わず空を飛んだのだ!


「やっほーい」


 空中で宙返り。

 そして急加速。弾丸のように飛んだ俺の体、よく持ち堪えたな。身体強化していてよかったと思う。


 どういう動きができ、どういった動きはできないのか、それを調べていると、いつの間にか夕方になっていた。

 地上に着陸するのも、ホバリングの応用で安全にできた。


「俺、天才かも」


 まあ、そんなわけないことは、俺自身が知っているけどね。俺は凡夫で努力の人なのだ。


「今日はお祝いだ。ブラックワイバーンのテール肉のステーキにしよう」


 適度に脂が乗った最高の食材だ。

 闇を照らす焚火を見つめながら、これまでのことを振り返る。

 クライド君が亡くなり、俺がこの世界に転生したことに、どんな意味があるのか? それを教えてくれる人はいないだろうが、俺は俺として好きなように生きると決めた。クライド君の家族はムカつくが、安易に殺す選択はない。そんなことをクライド君は望んでいない気がするからだ。


「ま、俺はあの家とは関係なく好きに生きていく。まったり冒険者だな」



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