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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第50話 顔合わせ

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 第50話 顔合わせ

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 俺が王都本部を出て宿にチェックインしてる頃、ギルドの使者は王城で宰相府の役人に定形文で作られた書状を手渡していた。

 Sランク昇格は、ある意味国の重要イベントだ。Sランクに昇格した冒険者は宰相に面会し、その身分が保証されることになる。よって、その書状はすぐに宰相の元に届けられた。


「ほう、Sランク昇格の推薦か。……15歳のソロだと? ……あのアアメンターが推薦者だと?」


 宰相のゴルバー侯爵は、珍しいことが書かれている書状に、やや驚いた。それというのも、この国の貴族の間ではアアメンターは超有名人なのだ。

 最近は大人しいが、数十年前は3人の侯爵と2人の伯爵、そして多くの子爵や男爵がアアメンター1人によって殺され、家を潰された。

 当時の国王がアアメンターと和解したことで、それ以降は問題が起きることはなかったのだが、それは表向きの話である。実際には国王が頭を下げて許しを請うたのだ。

 そういったことから、アアメンターを怒らせることは今でもタブーとされている。

 そのアアメンターが推薦した者など、過去の履歴を探してもいないと思われる。その推薦があったのだ、このクライドという若者がそれほどの存在であると宰相は思い至るのだった。


「メッサーラ君、このクライドという冒険者のことを聞いたこがあるかね?」


 宰相から書状を渡され、目を通した宰相府の役人メッサーラは、視線を宰相に向ける。


「Aランクの冒険者はそれほど多くないはずで、それなりの噂を聞くはずですが、この者の名には覚えはありません」

「ふむ、無名のAランクか」

「ただ……」

「何かね?」

「以前、ロイメス男爵の五男を殺害した容疑でプレンサス伯爵領アルガードで取り調べを受けた冒険者が、たしかクライドという者でした」

「なんだと? そのクライドはどうなったのだ?」

「無罪放免です。嘘を見抜くマジックアイテムを使っての取り調べということで、無実が判明しております」

「そのクライドが今回のクライドなのか?」

「違うと思われます。取り調べを受けたクライドはDランクだったはずです。あれからまだ何カ月もたっておりませんので」

「なるほど……。メッサーラ君、Sランク昇格試験で納品させるモンスターは何がいいかね」


 宰相は興味を失い、話を戻した。


「前例では、Sランクモンスターのランページバッファローでしょう」

「このクライドという者は、ソロだそうだ。それでもランページバッファローが狩れるだろうか?」

「ランページバッファローはSランクの中では、下位のモンスターです。これを狩れなければ、Sランク冒険者としては力量不足でしょう」

「そうか。ならば、前例に従って指示を出してくれたまえ。それと、このクライドなる冒険者のことを調べてくれるかね」

「承知いたしました」


 宰相の懐刀であるメッサーラ子爵は、すぐに冒険者ギルドからの使者に前例に沿った指示を行った。

 そして宰相府が抱える情報部隊を使い、クライドのことを調査するのだった。




 翌日、俺が王都本部にいくと、昨日とは違う会議室に通された。どうやらあの会議室は財宝の確認を行うために、ギルド員でも一部の人しか入れないようだ。


 会議室では、【雷鳴】の4人と引き合わされた。ただ、【雷鳴】のリーダーは俺を見て鼻で笑ったよ。


「本当にこんな子供がSランクに昇格するというのか?」


【雷鳴】のリーダーで剣士のレイドー・ボロトフが、編成部長のダグムさんに確認している。


「そうです。貴方たち【雷鳴】には、彼がSランクモンスターのランページバッファローを狩るのを監視する職員の護衛をしてくれればいいのです」

「そいつが死んでも知らんぞ」

「彼の護衛依頼ではないので、彼が死んでも【雷鳴】にペナルティはありませんよ。ただし、同行するギルド職員の護衛はしっかりしてください」

「ギルド職員だけ守ればいいってことだな。まあ、これで貢献度が貯まるっていうんだ、しっかり護衛はするさ。なあ、ドドナイム」

「………」


 ドドナイム・タバスはリザードマンの自然神官ドルイドらしい。そのドドナイムさんは、先程から俺を見つめているのだけど、何?


「おい、ドドナイム? どうした?」

「……いや、なんでもない」

「そうか? 顔色が悪いぞ」


 リザードマンの顔色が分かるとは、さすがは仲間だな。俺には鱗に覆われた彼の顔色はまったく分からん。


【雷鳴】のメンバーは他にエルフで魔法使いのフェプコンダ・クロダン、巨人族系で斧士のゴーズ・ゴルグがいる。

 フェプコンダさんはホルトンのギルマスの名を聞いた瞬間、顔を引きつらせていた。どうやら、昔何かあったようだ。

 で、ゴーズさんはずっと目を閉じている。寝ているんじゃないか、この人?


「さて、クライド君。国からは15日以内にランページバッファローを狩り、それを納品するように、とのことです。よろしいですね」

「はい。ランページバッファローの狩場の指定はありますか?」

「いいえ、ありません。どこで狩っても、どのような狩り方でも構いませんが、クライド君が狩ることが大前提です」

「分かりました。それならフラー山地辺りで狩りたいと思います」

「フラー山地なら王都から自動車で4日の場所ですね。いい選択です。移動用の自動車はこちらで用意できますが、どうしますか?」

「フラー山地まで監視役の職員さんと【雷鳴】の皆さんと一緒に行動する必要はありますか?」

「一応、ランページバッファローを狩るところを監視していればいいので、そこまでは一緒に行動する必要はありません」

「でしたら、俺はフラー山地まで別行動ということでお願いします。自動車も要りません」

「分かりました。それでは落ち合う場所を決めておきましょう」

「フラー山地のそばにゾーグという町があります。5日後の朝9時にゾーグの南門前で待ち合わせということで、どうでしょうか?」

「俺たちは構わねぇぞ」

「では、そのように。【雷鳴】の出発は明日の朝でよろしいですね」

「ああ、それでいい。俺たちは自前の自動車でいくぜ」

「同行する職員も乗せていただけますか?」

「いいぞ」


 王都からゾーグの町なら、自動車で3日もあればいける。明日出発するなら、待ち合わせの前日には到着するだろう。


「彼が同行する職員のキース君です」


 30代の男性職員だ。顔にあまり特徴がない人だね。


【雷鳴】の人たちとの顔合わせが終わったら、今度は外商部長のマダムと会う。


「Sランク昇格試験が終ったら、あの財宝の詳細を提示するわ。全部販売でいいのよね?」

「はい。全部売ってください」

「任せてちょうだい! 貴族たちに高値で売りつけてやるわ!」


 頼もしいマダムである。


「よろしくお願いします」



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