第15話 昇格できるぞ
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第15話 昇格できるぞ
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朝早く宿を出る。
昨日は宿まで誰かがつけてきたが、今朝はいない。なんだったのかな?
まあいい。いざとなったら、他の町へ逃げればいいんだ。今日もしっかり稼ぎましょう!
宿から海岸に向かっていると、ある場所からまたつけられた。昨日の冒険者たちだ。俺の釣りについて調べようとしているのかな?
ま、いっか。
海岸は冒険者で溢れかえっていた。
俺はそんな冒険者の中を縫って歩く。俺をつけてきた冒険者は、冒険者に紛れた俺を見失ったようだ。
今の内に奥へと向かう。よし、冒険者たちを完全にまいた。
今日は片道1時間半。往復3時間の道のりだ。ここまで時間をかけてやってきたのだから、数匹を確保していこう。
魔力フィールドは歩きながら展開しているので、すでに魚の姿は捉えている。
ただ、30㎏オーバーと思われる超大物はいないようだ。
「ま、絶対に納品しなければいけないわけじゃないからいいか」
俺は魔力結界でリフィナンテスを捕獲すると、魔力触手で陸揚げした。
ささっと血抜きと内臓処理をし、アイテムボックスに放り込む。
「次にいきますか」
今日はリフィナンテスを5匹捕獲して、冒険者ギルドへ向かった。帰る際はあの冒険者たちに見つからないようにこっそりと……。
冒険者ギルドの解体場では、8組もの冒険者たちが並んでいた。過去一の列だ。
列の最後尾に並んでいると、5分もしないうちに冒険者が解体場に入ってきた。
その冒険者が俺に手を伸ばしてくるので、魔力触手でパチンッと弾いた。
「痛っ!?」
鞭のようにしなった魔力触手に弾かれた冒険者の手の甲に赤い線がついた。
「てめぇ、何しやがる!?」
「え、俺? 何もしてませんけど?」
「これを見ろ! てめぇがやったんだろ!」
赤くなった手の甲を見せてくる。
「酷い言いがかりですね。そもそも貴方は、俺の後ろにいましたよね? それなのに、なんで俺が貴方に何かするのですか?」
「うるせんだよ!」
冒険者が拳を振り上げた。
「うるせーのはてめぇだ!」
バドランドの怒鳴り声が解体場に響き渡った。
「いい度胸だ。ここがどこか知っているんだろうな、ああんっ!?」
「いや、俺は……」
「てめぇのような雑魚が粋がるんじゃねぇよ!」
「す、すみません……」
「誰に謝っているんだ? おめぇが謝るのはそこの坊主だろうが!」
「は、はい! す、すまなかった! 勘弁してくれ!」
いったいバドランドは何者なんだろうか? そこらの冒険者よりも迫力があるんですけど?
「分かりました。謝罪は受け入れます」
俺がそう言うと、冒険者はホッとした表情をした。マジで怖かったみたいだ。
「おい、坊主。今日からリフィナンテスを買取強化しているのは知っているな」
「はい。ボードに貼られている依頼書を見ました」
「で、今日はどれだけ持ってきた?」
「5匹です。ちょっと多いので、カウンターの上には置ききれません」
小さいリフィナンテスだったら5匹でも置ききれるが、20㎏以上あるのが5匹だからね。
「おう、奥へこい」
「え? でも、皆さん並んでいますけど?」
「どうせこいつらはこんまいのをちまちま持ってきているんだ。構わん」
「ええ、それでいいのですか……」
「いいんだよ!」
いいらしい。
権力者の考えだな。
「出せ」
連れていかれた場所は血の臭い漂う作業場だった。
カツアゲのような言葉を受け、俺は大きな作業台の上に5匹を並べた。
「どれもいい状態だが、30㎏オーバーはないか」
「30㎏オーバーは運ですよ」
「ふん。20㎏オーバーでもかなり運に左右されるがな」
たしかに小さいのはたくさんいるけど、20㎏クラスはそこそこいる。マジで30㎏オーバーは珍しいんですよね。
「22,000g、26,000g、27,000g、21,000g、23,000g、合計で119,000gだな。買取強化中だから全部で1,701,700Gだ」
「ありがとうございます」
受付窓口もそこそこ稼働しているが、受付オッサンのところは空いていた。俺は躊躇なく受付オッサンのところに査定表と冒険者証を出した。
「今日は5匹か。30㎏オーバーはいないか」
「30㎏オーバーは運次第ですよ」
「20㎏オーバーをコンスタントに納品するヤツはお前だけだ。期待しているんだぞ」
「そうやって働かせようとしても、駄目ですよ」
「ちっ」
舌打ちしたよ、この受付オッサン。
「20万Gは現金でもらいます。あとはギルドに預けますので」
「分かった」
処理が終わり立ち去ろうとすると、また呼び止められた。
「なんですか?」
「お前、Cランクに昇格できるだけの貢献度が貯まったぞ」
「まだ冒険者登録して何日もたってないのに、もう昇格できるのですか?」
「通常では滅多に出ない大物(20㎏オーバー)を毎日納品しているんだ、それだけの貢献度が貯まるってものだ」
「そうなんですね」
たしかCランクになると、指名依頼があるかもしれないという話だったかな。
「ただ、お前はまだ人を殺したことないだろ。それさえクリアすれば、すぐにCランクだ」
「え、人を殺さないとCランクになれないのですか?」
「Cランクからは護衛依頼もあるからな。戦闘中に相手を殺すのを躊躇するヤツでは護衛される側が安心できないだろ」
「それはそうかもしれませんね……」
人殺しか……。
毎日魚を処理しているけど、魚だもんなー。今度人型のモンスターを殺せるか試してみようかな。それに回復魔法についても、できるか試しておかないとな。
ベルデナーグ伯爵やゴッガイルなら躊躇なく殺せるかもしれないけど。
「今度処刑があったら、お前に依頼を回してやろうか」
「処刑ですか?」
「盗賊などの悪党を処刑することがあるんだよ」
「なるほど……でも、要りません。俺はDランクで満足してますので」
魚を納品するだけで、こんなにお金を稼ぐことができるのだ。無理に昇格する必要はない。それに指名依頼されても鬱陶しそうだからな。
とはいえ、こんな法があってないような世界では、どうしても殺さないといけない場合もあるだろう。モンスターで試すのは、早めにしておこう。
「向上心がないヤツだ」
「そこそこ稼いでいますので」
「確かにDランクの稼ぎじゃないな」
お互いに苦笑し、話は終わった。




