第12話 考えておきます
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第12話 考えておきます
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今日も朝から釣りをする。
昨夜考えたのだけど、魔力フィールドで防御ができないだろうか、と。
魔力触手に指向性を持たせられたのだから、魔力フィールドで結界のようなものができないかと思ったわけですよ。
魔力フィールドとは別物になってもいいんだけど、ようは魔力で防御できればいいのだ。そう、名づけるなら、魔力結界か。
今日は風が昨日よりも強いので、その魔力結界で風を防ぐことができれば成功だ。
魔力フィールドに風を防ぐ指向性を持たせ、半径3mほどで展開する。
俺の魔力よ、風を防げ!
「おっ!? 風がなくなったぞ!」
少し離れたところに生えている草は激しく揺れているので、魔力結界は風を完全にシャットアウトしたようだ。
あとはこれを発展させて、ありとあらゆる攻撃を防ぐ結界にすればいい。そこはおいおい……そうか。この魔力結界で魚を包んでしまえばいいのか。
魚が暴れても壊れなければ、それだけの強度があるということだ。
問題は離れた場所に魔力結界を展開できるか……うん、できちゃったな。
ただし、展開した魔力結界は動かすことが出来なかった。これを動かさないと、魚を閉じ込めても回収できないんですよ。
「いや待とうか。何も魔力結界自体を動かさなくてもいいんじゃないか」
俺は魔力触手を動かして魔力結界に接続した。それで魔力触手を動かして……できたよ。
「俺って天才じゃん!」
自分でもびっくりだ。
「よし、魚を探そう」
今日はいい型のリフィナンテスがいたので、そいつを魔力結界で囲む。
魔力結界に覆われたリフィナンテスは暴れまくった。俺は魔力結界の強度維持に意識を注ぐ。
破壊されない強度を維持していると、なんか慣れてきた。面白いと思うことは、飲み込みも早いんだよね。
「魔力触手、いけ!」
魔力結界に接続した魔力触手により、海水ごとリフィナンテスを海面の1m上に持ち上げ、移動する。
地面の上で魔力結界を解除すると、リフィナンテスがピチピチする。この辺りは可愛らしい魚の動きだ。
リフィナンテスを魔力触手で拘束し、鰓に短剣を差し込む。血抜きと内臓処理をし、麻袋に入れ、さらにその麻袋を背負い袋にいれる。
そこで考えたのだけど、この背負い袋を背負った際に、魔力触手で補助したらどうなるのだろうか?
思ったら吉日。魔力触手を伸ばして背負い袋を下から押し上げる。
「お、軽くなったぞ!」
いいじゃんいいじゃん。なんだ、もっと早く気づけよな、と過去の俺に毒づく。
今日は軽々と冒険者ギルドに到着し、解体場でリフィナンテスをカウンターの上に置く。
「今日も大物だな」
解体所主任のバドランドさんが、手ぐすねを引いて待っていた。
そんなに俺に会いたかったのか。でも、俺は女性が好きだから諦めてくれ。などとバカなことを考える。
「27,500gだから321,750Gだな」
「ありがとうございます」
リフィナンテスは本当にいい金額になる。ありがたや、ありがたや。
受付オッサンの窓口で査定表と冒険者証を出す。
「全部預けます」
預けた金額が130万Gを超えた。1-1のアイテムボックスが購入できるだけの金額だ。ついでに靴の後金も支払い可能だよ。
ルンルンで革物店に向かった。今日もエルフ店主はぶっきらぼうだ。
「靴を受け取りにきましたー」
「できているぞ」
受け取り、サンダルから履き替える。その際にちゃんと靴下を履いている。
店内を歩いて歩き心地を確認したけど、いい感じだ。
「問題ありません。残りの半金は冒険者証で支払いをします」
「あいよ」
「それでですね、1-1のアイテムボックスがほしいのですけど」
「アイテムボックスは注文販売だ。3日待ってもらうことになる」
「それで結構です。こちらも半金を先払いですか?」
「ああ、そうだ」
「それも冒険者証で支払います」
「合わせて550,000Gだ」
俺は冒険者証を提示し、支払いをする。
「アイテムボックスは肩掛けタイプとウエストポーチタイプがある。どっちにする?」
「それじゃあ、ウエストポーチで」
「分かった。3日後にとりにこい」
「はい」
やっぱり靴を履くと、足元が引き締まるな。俺は足取り軽く宿屋へと入った。
夕食時まで魔力の併用を行い、食堂へと向かう。
「お! 今日はリフィナンテスがあるのか!?」
プラス5,000Gだが、これは食べないと!
限定10皿というのも高額食材感を出している。
「Bセットをリフィナンテスの香草焼きにチェンジでー」
リフィナンテスの香草焼きはまるで肉のような甘味と弾力があり、そして香りがいい。香草が何かは分からないけど、これのおかげで魚臭さがまったくないよ。
「リフィナンテスの香草焼き、美味かったー」
明日も頑張ろうと思う美味しさだったよ。
次の日の朝も海へ。
おっと、今日は先客がいたよ。
冒険者っぽい恰好の一団が海に餌を投げ入れていた。
彼らは腕力に任せて肉がついた針を投げている。おかげでそこまで遠くに飛んでいない。
ああいうのは、腕力よりもフォームなんだよね。野球選手のピッチャーようなフォームで投げたほうが遠くに投げ入れられると思う。
彼らの邪魔にならないように、俺は港側に戻ってちょっとした崖の上に陣取った。
魔力フィールドで魚を探し、発見したら魔力結界で捕獲し、魔力触手で陸揚げする。ここまでわずか5分。
過去一の大きさのリフィナンテスの血抜きと内臓処理をし、うんしょっと背負う。ずっしりとした重みが両肩にのしかかるが、魔力触手で補助すると軽い。
冒険者ギルドの解体場に入ると、珍しく冒険者がいた。彼らの後ろに並び、順番がきたのでカウンターの上にドーンッと置く。
「これはまた大物じゃないか。ガハハハ」
バドランドさんが笑う。俺も笑っておこう。ハハハ。
「苦労しました」
本当は全然苦労してないけどね。
「36,800gだから、430,560Gだ」
「ありがとうございます」
「お前、もっと釣ってこれないのか」
「無理言わないでくださいよ。そんなの2匹も運べませんって」
「アイテムボックスくらい買えるだろ、お前の稼ぎなら」
「1-1ですけど、注文してます」
「アイテムボックスを手に入れたら、もっと釣ってこい。最近、いい型があがるようになったから、金持ちどもがうるさいのと、これから釣りシーズンになるからな」
「釣りシーズン?」
「そろそろ依頼が出るはずだ。よく見ておくんだな」
「依頼ですか? 分かりました」
あまり釣っても価格が暴落しても嫌だしなー、と思っていたんだけど、これから依頼がでるようだ。
「小まめに確認しておきます」
今日もお金はギルドに預け、俺は宿に帰るのだった。




