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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第10話 初めての魔法

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 第10話 初めての魔法

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 今日も朝から魚釣りに出かける。

 ああ、そうそう。昨夜の訓練で魔力フィールドと魔力触手の併用をなんとか成功させたよ。

 併用はまだぎこちないけど、前進していると思うとやり甲斐になる。


 今日は27㎏のトーリルーンを釣り上げ、245,700Gを手に入れたので、全部預けた。

 今日はこのまま帰らず冒険者ギルドの訓練所を覗いてみる。魔法使いが訓練していたら見てみたかったのだが、どうやらいないようだ。

 せっかくなので訓練所の隅で魔力フィールドと魔力触手の併用訓練をする。

 単発だと、魔力フィールドはおよそ100m、魔力触手は300mくらい展開が可能だが、併用だと精々3分の1くらいになる。

 併用範囲が伸びれば、単発の範囲も伸びるので、とにかく併用の訓練だ。

 訓練所の隅で訓練していると、冒険者ギルド内で働く人たちの動きが分かる。

 受付オヤジの窓口には、相変わらず冒険者はいない。他の窓口には冒険者がいくのに、受付オヤジのところは閑古鳥が鳴いている。この光景を見ていると、俺って希少種なんだなと思うよ。


 訓練開始から1時間ほどか、1人の女性冒険者が訓練所に入ってきた。25歳くらいの彼女は、体内にある魔力量が他の人に比べて多いことから、魔法使いではないかと思われる。

 訓練所のベンチに座って目を閉じている俺のことをチラリと見た彼女は、訓練を始めた。

 彼女が詠唱をすると、体内の魔力が動き、手に持つ杖を通じて魔力が放出される。そして魔力が変換されて竜巻になる。

 魔法発動までおよそ30秒。これが長いのか短いのか、俺には分からない。

 彼女は何度か風の魔法を発動させると、魔力量が2割を切り、大粒の汗を額に浮かべはじめた。


「そうか、杖か」


 魔法使いは杖を持っているものだ。俺も杖を持てば、魔法が発動できるかもしれないな。

 今は藁をも掴みたい気持ちだから、杖もいいかと思った。


 女性冒険者が訓練場を出ていくのと同時に、全員10代と思われる男ばかりで5人組の冒険者が入ってきた。

 5人のうち4人は思い思いに剣や槍、弓などの訓練を始めた。

 そして1人は魔法使いのようで、魔法を発動させている。さきほどの女性冒険者よりも若いと思うが、彼は杖なしで火の球を1分で2発発動させた。詠唱時間がどうしても長くなるようだ。


 しかし、杖を持っていても持っていなくても魔法は発動できるのか。しかも年齢的には熟練と思われる女性冒険者のほうが、明らかに練度が低い。

 よく分からなくなったぞー。


 俺は魔力触手を動かして、魔法使いに近づけた。

 彼が魔法を発動させる際に、その魔力に触れたら何か分かるかもしれないと思ったのだ。


「ファイアボール」


 彼がそう言うと、指先から魔力が放出され、それが魔法に変換される。俺はそのタイミングを見計らい、変換される魔力に魔力触手で触れてみた。


「っ!?」


 おっと、マズい。

 魔法使いの魔法が発動直前でキャンセルされ、彼は驚いた表情を浮かべた。

 首を傾げていることから、俺が魔力触手で変換魔力に触れたとは思っていないようだ。

 俺はついニヤリとしてしまう。今の魔力変換で俺は魔力の質が変わったのを体感したのだ。


 もう一度魔法に変換される魔力に触れてみる。また魔法がキャンセルされた彼は、すごく戸惑った表情で首を傾げているが、俺は今の2回で変換の何かを掴んだような気がした。


「今日は調子が悪い。俺は帰る」

「おい、今きたばかりだろ!」

「ちょ、おい!」


 魔法使いは調子が悪いと言って訓練場を出ていってしまった。調子が悪い時こそ訓練をするべきじゃないのか。邪魔をした俺が言うのもあれだけどさー。

 仲間の冒険者も魔法使いを追いかけるように出ていったので、また俺1人になってしまった。


 そこで俺はベンチから立ち上がって魔法の訓練をすることにした。

 魔力を変換する際に、あの魔法使いの思念みたいなものを感じた。

 イメージを描くのは当然なのだが、そのイメージを魔力に溶け込ませることが必要なんだ。

 俺はイメージを固め、そのイメージを魔力に溶け込ませるようにしてみた。その魔力を指の先から放出させ、魔法に変換する。


「ウオーター」


 ジョロジョロと水が出た。


「やったぞ!」


 初めて魔法を使った瞬間だ。感激で足が震える。

 やっとだ。やっと魔法が使えたんだ。クライド君、俺たちはやったんだぞ!

 しばらく感慨にふけっていた俺は、いつの間にか泣いていた。

 そして、気づいた。今のチョロチョロウオーターでものすごい魔力を消費したことに。およそ2割の魔力が、あのチョロチョロ水に奪われたのだ。


 魔力消費は練習することで削減できるかもしれない。ただ、削減できたとしても2割をどこまで低減できるか……。


「マジで魔法の才能がないのかな、クライド君は?」


 あのチョロチョロ水5回で、魔力がすっからかんになる。ヤベーくらいに絶望的だよ。


「とりま、他の魔法も試してみるか」


 物質魔法の水を具現化できたので、次は現象魔法を使ってみることにした。

 指先から魔力を放出し、変換する。


「ファイア」


 指先に火が灯る。

 蝋燭の火のような小さなものだが、魔力はやはり2割ほど減った。

 さっきのウオーターと合わせて4割だ。消費量が多すぎるだろ!


「お、クライドじゃねーか」

「っ!?」


 その声に驚いて火が消えた。振り返ると、グランベルさんが立っていた。


「グランベルさん。こんにちはです」


【雷神の鉄槌】のリーダーをしているSSランク冒険者のグランベルさんだった。相変わらず大きい。


「今日はお1人ですか?」

「あいつらはフードコートにいるぞ。明日から依頼で遠出するから、俺はちょっと体を動かしておこうと思ってな」


 高ランク冒険者でも訓練を欠かさないのか。その姿勢は見習わないとな。


「クライドも訓練だろ? 見てやるぞ」

「え?」

「剣を持って構えろ」

「あ、いや、俺は……」


 魔法の訓練をしたかったのだけど、善意で言っているのが分かるだけに断りきれないな。

 俺は腰の剣を抜いて構えた。


「振ってみろ」

「はい」


 昔中学の授業で齧った剣道を思いだして剣を振る。


「いい感じじゃないか。よし、打ち込んでこい」

「えー」

「なんだよ?」

「また腕を折られるんじゃないかと、心配なんです」

「うっ……あれはたまたまだ! 今日は最初から本気でやるから大丈夫だ」

「いやいやいや、本気でやらないでくださいよ。俺、死んじゃいますから」

「いいからかかってこい!」


 ひえーっ。こうなったらやるしかないか。

 俺は魔力循環をさせ、身体強化を行う。


「いきます!」

「おう!」



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