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雑用係だと思っていた俺の貢献値が、なぜか学園最高記録だった件  作者: 空城ライド


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第7話 教師会議

 教師会議は、いつもより静かに始まった。


 普段なら、資料をめくる音や雑談が混じる。

 だがこの日は、全員が最初から同じ一点を意識している。


「……先日の演習についてだ」


 白髪交じりの教師が、口火を切った。


「調整科の関与がなかった件ですね」


「はい」


 短い応答。

 誰も、誤魔化そうとはしなかった。


 机の中央に、二つの資料が置かれる。


 ひとつは、成功した演習の記録。

 もうひとつは、失敗した演習の報告書。


「見ての通りだ」


 成功例では、事故なし。

 失敗例では、被弾・混乱・中断。


「編成、難度、参加生徒。

 条件は、ほぼ同じです」


「違うのは一つだけですね」


 誰かが、そう言った。


 調整が入ったか、入らなかったか。


「……つまり」


 別の教師が、言葉を選ぶように続ける。


「我々は、

 “誰か一人の判断”に、

 学園全体を支えられていた可能性がある」


 空気が、少しだけ重くなる。


「一人、ですか?」


「ええ」


 白髪交じりの教師は、ゆっくりと頷いた。


「調整科全体の成果では説明がつかない。

 突出した何かがある」


 視線が、自然と一つの席に集まりかけ――

 だが、誰も名前を口にしない。


「問題は、どう扱うかだ」


 ここからが、本題だった。


「表に出せば、注目される。

 注目されれば、摩擦が生じる」


「実技科との軋轢は、すでに芽が出ています」


「本人は?」


「……自覚がない」


 その一言で、全員が納得したように頷いた。


「なら、尚更だ」


 白髪交じりの教師が、静かに言う。


「自覚のない者を、

 無理に前に出すのは危険だ」


「ですが、放置もできません」


「もちろん」


 彼は、資料を一枚めくった。


「そこで提案だ。

 次の大規模試験――

 正式に“調整役”として関与させる」


 室内が、ざわめく。


「表向きの肩書きは?」


「変えない」


「え?」


「調整科の一員。

 あくまで裏方のままだ」


 それは、極めて異例の判断だった。


「責任だけが増えませんか?」


「彼は、責任を“責任だと思わない”」


 その言葉に、数人が苦笑する。


「……確かに」


「だからこそ、任せられる」


 会議は、結論に向かっていた。



 一方、その頃。


 俺は調整科の部屋で、いつも通り書類をまとめていた。


「次の試験、規模でかいな……」


 参加人数、会場数、動線。

 一目見ただけで、面倒な案件だと分かる。


 だが、誰かがやらなければならない。


「……仕方ないか」


 俺は、自然とペンを取っていた。



 夕方、教師に呼び止められる。


「少し、相談がある」


「はい」


「次の試験だが……

 君の意見を、最初から聞きたい」


 一瞬だけ、迷った。


 だが――断る理由もない。


「分かりました」


 それだけ答える。


 教師は、内心で息を吐いた。


(やはり、だ)


 引き受けると思っていた。



 夜、管理棟。


「次で、はっきりするな」


「ええ」


 《貢献値》の線は、

 すでに学園の想定範囲を超えている。


「それでも、本人は――」


「まだ、名乗らせない」


 判断は、揺らがない。


「名を出すのは、

 彼自身が“責任を負う覚悟”を持った時だ」



 その頃、俺は自室で、試験の配置図を眺めていた。


「……ここ、詰まるな」


 赤ペンで、小さく印を付ける。


 誰かに評価されたいわけじゃない。

 名前を知られたいわけでもない。


 ただ――

 失敗が起きない形を、作りたいだけだ。


 それが、俺の仕事だと思っていた。


 だが次の試験は、

 否応なく“個”を浮かび上がらせる。


 そのことを、

 まだ俺は、知らない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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