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清酒を波々と
そして一人暮らしの薄暗く汚く、人の臭いのする部屋で、カバンを放り投げた仕草は、倦怠感に包まれていた。玄関先で明かりを付け、今は抑鬱の気分を多少は認めて、肩を落としてテーブルについた。雪が気づくと頭に積もっていた。その雪を皮肉に笑って払い、戸棚に隠していた清酒を手に取った。テーブルにコップを置き、飲み過ぎて控えていた清酒を、今日は溢れるほど波々と注いだ。
鯵の干物を齧り清酒を軽く煽れば、寒さに凍えた身体が温まってきた。清酒と鯵の干物。いつも食事はその程度で、あとはサプリメントに頼った生活をしていた。テレビを退屈凌ぎに付けてみるも、面白さを微塵も感じることは出来ず、これは―、寂しさを紛らわすだけの音声にしか過ぎない。と皮肉を想い布団を被った。