最終話
戦いの後、王宮に呼ばれた瑛人は、正装のまま玉座の間へと足を踏み入れた。
重々しい空気の中、玉座に座る国王が立ち上がる。
その瞳は真っ直ぐに、瑛人を見据えていた。
「神崎瑛人殿。そなたに、この国の未来を託したい。
次代の王として──この王国を導いてはくれぬか」
その言葉に、玉座の間が静まり返る。
瑛人は驚き、そして戸惑った。
「……俺が、王に?」
王になるつもりなんてなかった。
自分はただ、誰かを助けたかっただけで。
だが──
「君の癒しが、人の心を動かした」
そう言ったのは、第三王子リデルだった。
王も深く頷く。
「優しさで治める国こそが、真に豊かな王国となるだろう」
そして、瑛人は決意する。
「分かりました。俺にできることがあるなら……この国を、笑顔で満たすために──」
◇
それから数年後。
王都セランは、以前とは見違えるほど穏やかで明るい国となっていた。
新王・神崎瑛人と王妃・葵は、民と共に笑い、苦しみに寄り添いながら善政を敷いた。
癒しの力は、瑛人だけのものではなかった。
ささやかながらも、人を想い、寄り添う優しさを持つ者には、わずかながら同じ癒しの力が宿ることが判明したのだ。
それはかつて、瑛人が気づいた“優しさの正体”──
「癒しって、誰かを想う気持ちそのものなんだな」
今では各地に“癒しの家”と呼ばれる施設ができ、人々は互いを支え合いながら暮らしている。
◇
王宮のバルコニーから街を見下ろす瑛人の隣に、葵が寄り添う。
「今日もみんな、笑ってるね」
「うん。君がいたから、ここまで来られた」
「瑛人がいたから、私は笑っていられる」
そんな他愛のない言葉が、ただ嬉しくて、温かい。
──君がいて、僕がいる。
この世界に、優しさの光が満ちていく。
王宮ではもう一人、瑛人の側近として働くフィーネの姿もあった。
かつてはツンとした態度を見せていたが、今では王政を支える頼もしい補佐官である。
そして第三王子リデルとフィーネは、いつしか惹かれ合い、静かに結ばれていた。
獣人と人間という違いを越えて、二人の絆もまた、国を一つにする象徴となった。
この世界に、優しさの光が満ちていく。
この幸せな世界はこれからも続いていくのだ。




