表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しすぎる少年は“黒い癒し”で世界を救う 〜追放され、裏切られ、それでも優しさを貫いたら最強になってた〜  作者: 風谷 華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/38

第22話

 小さな町だった。

 それでも、森を越えて三日かけて辿り着いたこの場所には、穏やかな風と、温かい人の気配があった。


 俺と葵は、町の入口で一度立ち止まり、互いに目を合わせた。

 もう逃げない。

 もう隠れない。

 そんな覚悟が、無言のままに共有された。


 町に入ると、数人の住人たちが、こちらをちらりと見た。

 どこか警戒した目だったが、俺は気にせず、ゆっくりと歩を進めた。


 そしてそのとき、広場の片隅で倒れていた老婆を見つけた。


「葵、待ってて」


 声をかけてから、俺は駆け寄った。

 息が浅く、顔色も悪い。

 すぐに俺は膝をつき、手をかざした。


 黒い光が、ふわりと広がる。


 周囲が息を呑んだのがわかった。

 けれど、俺はそれを無視した。


 ──やがて、老婆がゆっくりと目を開いた。


「……あら……体が、軽い……?」


 安堵の吐息とともに、俺は静かに立ち上がった。

 そのとき、後ろから子供の声が飛んだ。


「あの人! 前にも僕のお母さんを治してくれた人だよ!」


 その声に、町の空気が揺らいだ。


「ああ、思い出した……黒い光の癒し……でも、母さん、本当に元気になったよな……」


「怪我も、病気も、治って……それ以来、倒れることもなくなったんだ」


「見た目は、怖いかもしれないけど……」

「……でも、助けてくれたのは、あの人だった……」


 次第に、声が重なり合っていく。


 老婆が、俺の手をそっと握った。


「ありがとう……本当に、ありがとうね。あなたの目を見て、わかるのよ。あなたは、優しい人だって」


 その言葉に、胸の奥がじんと熱くなった。


 誰かが、俺を信じてくれている。

 黒い光がどう見えようとも、それでもなお、俺の行動や心を見てくれている人がいる。


 葵の手が、そっと俺の袖を握った。

 振り返ると、彼女は涙ぐんでいた。


「えいとくん……よかった……」


 その声には、どこか誇らしげな響きと、安堵があった。


 俺は小さく笑った。

 涙が零れそうになるのを、こらえながら。


 優しさを信じる人たちがいる。

 俺の手を取ってくれる人がいる。

 その優しさが、俺を救ってくれた。


 この町で、もう一度、歩き出せる気がした。

 そして──今度は、自分のためじゃなく。

 信じてくれる人たちのために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ